ヒストリー14 つづき⑥
ベラ『最低でもいい。最悪でもいい。
グレース、あなたもわかってるんでしょ?
私達は、親に売られた人間。
捨てられた人間。
何の価値もない人間。その人間が
10歳の頃、1人たった、100万ブルクで
旦那様に買われたわ。
私達は、この邸宅で、この15年、使用人として
毎日働いてきた。邸宅の外へは
仕事以外じゃ出れなかったけど
食べる物があって、雨風もしのげて
着る服もある。何の不満もなかった。
それなのに、、』
嗤(わら)ってたベラの表情が変わり
唇を噛んだ表情になった。
ベラ『あの女が急に、この邸宅に来たのよ!
旦那様の妻として!
あの女は、、最下級身分の女よ!
私達捨てられた人間と同じ、最下級身分の!』
この世界は身分制度で、身分の区別がされている。
最下級身分
下級身分
中級身分
上級身分
特権身分だ。
最下級身分は、戸籍もなく名簿すらない。
最下級、下級共に、ラストネーム(苗字)
も禁止されている。
納税もできずに、お金に困り、
子供を売る、親も少なくなく
靴すらも履く事が許されていないのだ。
グレース『だからって、、なんで
そこまでするの?』
ベラ『ふふっ、なぜ、私達が、最下級身分の
女のお世話をしなくちゃいけないの?
今まで、どれだけ感情を押し殺して
お世話してきたと思ってるの?
旦那様の妻になってなければ、私達と同じ
親に売られて、捨てられていたかもしれないのに。』
グレース『でも、奥様は、私達になんでも
頼んでたわけじゃない!
自分の事は自分でやっていたし、
優しくもしてくれた。仕事でもないのに
外にも一緒に遊びに連れて行ってくれた事もあるじゃない!』
ベラ『・・それが気に入らないのよ。』
グレース『え?』
ベラ『全てが上からじゃない。
同じ身分のくせに、全てが上から。
最下級と下級身分は、
信仰すら許されない。教会に行って神に祈りを
捧げる事すらできないのに、
あの女には、それが許されている。
なぜ?旦那様の妻になったから?
旦那様の妻になったから、戸籍もつけれたの?
旦那様の妻になったから好きな物を買えるの?
・・それだったら私が旦那様の妻になれば
いいのよ。』
グレース(・・ベラが、そんな事を
思ってたなんて、、気付かなかった。
でも、このベラの考え方は違う。
すごく危険だ、、)
グレース『ベラ、旦那様はダウ教徒。
ひとりの人以外は愛してはいけない掟がある。
もし、〝不義〟をしてしまった事が
教団にバレてしまったら、旦那様は罰を
受ける事になってしまうのよ?』
ベラ『バレないわよ。
あの女も子供も、近いうちに
いなくなると思うから。』
グレース『どうゆう事?』
ベラ『〝死神の呪い〟にかかってしまった
子供、レオ。その子供を旦那様が
そのままにしておくわけがない。』
グレース『・・旦那様が、レオ様と
奥様を殺してしまうってこと?』
ベラ『さぁ。』
ベラの口元がまた嗤〔わら〕った。
ベラ『私と旦那様は一緒になるのよ。
そして、最下級身分を卒業して
上級身分になる。そうしたら
屈辱的な人生から逃れて
自分の思うような生き方ができるの。』
ベラが自分のお腹を撫でだした。
ベラ『ここには新しい命があるのよ。』
グレース『!?!?』
【パチン!】
部屋中に響く音。
グレース『はぁはぁ。』
ベラ『・・・』
グレースがベラの頬を叩いた音だ。
グレース『あなたは幸せにはなれない・・。』
ベラ『あら、そう。』
ベラはグレースの横を通り過ぎて、
扉の鍵を開けた。
【カチャ ギー】
ベラ『私が正式に旦那様の妻になったら
あなたをこの家から追い出してやる。』
【バタン】
部屋の中には、グレースひとり。
ただただ、部屋の中に立ちすくむしかなかった。
つづく。
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