ヒストリー13 つづき
使用人のグレース『薪〔まき〕は、古屋の裏に
持っていきます。』
アイリ『ありがとうグレース。
でも、無茶だけはしないで。私達なら
大丈夫だから。もし持ってきたのを
見つかってしまったら、グレースが
罰を受けるかもしれないわ。』
使用人のグレース『わかっています。
でも、私はお二人の事がとても心配で・・』
グレースがうつむいた。
使用人のグレース『旦那様は半年前に、
お屋敷のお部屋から
庭の小さな、古屋にお二人を移動させました。
なぜ、旦那様は、こんな事をするのでしょうか。
あの古屋は、元々、物置きに使っていた古屋です。
暖炉もとても小さいのです。』
アイリ『グレース、ほんとうにありがとう。
グレースはご飯を持って来てくれたり、
オモチャや、勉強道具も持ってきてくれた。
旦那に言われている必要最低限以上な物を
持って来てくれたじゃない。
それだけでも、私達は幸せ者よ。
古屋だって、充分に生活できるもの。』
アイリが微笑んだ。
使用人のグレース『奥様はいい人すぎます。』
アイリ『小さな古屋で、レオと一緒に
居られる。広い部屋じゃ、気付けなかった事も
いっぱい気付かされたのよ。
だから、今まで以上にみんなに感謝してるわ。』
アイリは噴水に目をやった。
太陽の日差しと、噴水の水飛沫が小さな虹を創った。
使用人のグレース『・・このままじゃ、
いつか、古屋からも追い出されると思います。
もしもそうなった場合は、』
アイリ『ネルソン邸宅にも居られなくなるわね。』
使用人のグレース『そんな、、
奥様がいなくなるなんて、、、。』
アイリ『それも神のご意志でしょう。
そして、それにも、きっと意味があるのよ。』
アイリは空を見上げた。
アイリ『私は、レオを守るの。どんなに
苦しい道が待ってたとしても
レオを守る事に変わりはないわ。
例え、神に背〔そむ〕いたとしても。』
使用人のグレース『奥様・・』
アイリはグレースに視線を戻した。
アイリ『グレースは何も心配しないで。
あなたはあなたの幸せを見つけるの。
それはきっと輝いて待ってるから。』
グレースは服の袖で涙を拭いた。
アイリ『あらあら、私の為に涙を流しては
だめよ。涙は本当に大切な時まで、
とっておくもの。』
アイリはポケットからハンカチを取り出して
グレースの涙を拭いた。
アイリ『さぁ、もう行きましょう。
あんまり遅くなると、邸宅の人が
探しに来てしまうわ。』
使用人のグレース『あ、あの旦那様の事で
奥様にお伝えしたい事が、、、』
アイリが自分の口元に人差し指を立てた。
アイリ『しっ、それを言ってしまえば
グレースが傷つくわ。後悔もする。
だから言わないでいいよ。』
使用人のグレース『・・』
アイリ『大丈夫。私はもう知ってるから。』
アイリはまた微笑み、歩きだした。
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ネルソン邸宅。
《ブラグ視点》
馬蹄が響き渡る。
馬車が止まり、ブラグが降りてきた。
つづく。
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