65 危険指定害獣、接近!①
しかし、激しい雨音に大人たちの叫び声、一気に夜へ迷い込んだかのような薄暗さに、子どもたちは不安と恐怖に陥っていた。
いくら「だいじょうぶだから」と声をかけても届かない。テッサは母親たちに我が子の手を取って建物へ急ぐよう指示した。
その時頭上でまたバリバリと稲妻が走る。先ほど、近くに雷が落ちた衝撃が小さな足をすくませた。ついにひとりの女の子が泣き出す。まずい。恐怖は幼子に伝播しやすい。またひとり、ふたりと、正気を失ってうずくまる子どもたちに母親も戸惑う。
暗雲立ち込める空がますます鋭く瞬いた。あまりに強烈な閃光に、テッサも次にくる雷鳴に身構えたほどだった。しかし音は幕を隔てたかのように鈍い。雨音がやんでいる。泣き叫ぶ声が嘘のように止まった。
「みんな、光のトンネルだよ! ほら列車ごっこで建物まで行こう!」
ミグの声にテッサが目を開けると、青の壁が長い廊下のように伸びて一番近い店内まで繋がっていた。
テッサは安堵の息をついたのも束の間、苦く顔をしかめた。突然現れた〈
「お店についたらお菓子をごちそうするよ!」
ホッパーも子どもたちの恐怖をやわらげようと陽気な声を張った。甘いものの効果は抜群だ。チョコかな。クッキーかな。子どもたちの列はそわそわと動き出す。雷は絶えず鳴り響いていたが、ミグの魔法が包み守ってくれていた。
「これ、魔法……?」
「魔法だよ、にいちゃん! すごくきれいだね!」
テッサと手を繋いだクールとシャルは魔法に見とれていた。光の壁の美しさにはしゃぐシャルに反して、クールは半信半疑といった様子で恐る恐る手を伸ばした。指先が触れたところから光の波紋が広がって、淡く瞬く。手のひらに伝わる確かな感触をクールは握り締め、つぶやいた。
「この魔法を、あの弱い魔どーしが……?」
そうだ。ミグのすごいところは魔法の精度もさることながら、〈
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