第24話 剣神との訓練
「ふふふ、君は転移神ちゃんにからかわれてばかりだな。彼女も相当に君のことが好きなんだろう」
からかわれてむしゃくしゃしたソラは、転移門を潜って、街の外にやってきた。その時、魔物を狩って戻ってきていた剣神に遭遇したのだ。
ソラから話を聞いた剣神は、笑っているが木の根元に腰掛けたソラはムスッとしている。
空に浮かんでいる神の城に向かって文句を言いたい気分だ。
「あれは、ただの嫌がらせでしょ。腹黒いですし」
「彼女なりの気遣いだよ。ほら、クラスメイト?とやらのこともそこまで考えることはなかっただろう?」
「まぁ確かに……」
彼女は、もしかするとソラの気を逸らそうとしたのかもしれない。多少の悪ふざけもあるだろうが、非道なことはしていない。
「熱神がキレた時はソラ君を守るために前にも出てたろう?何があっても転移神ちゃんのことだけは信頼してあげて」
「まあ善処しますよ」
ソラが目を逸らして、剣神が狩ってきたという魔物をみる。とりあえず、デカイ。熊よりもデカイ。
なんで剣神は持ち上げられるんだ?疑問を持つが、どうせ神だからというものだろう。
「この魔物、なんて言うんですか?」
「ああ、ギガントベアーだ。肉がなかなか美味いと人間の間で有名だな。ある程度の冒険者なら倒せる魔物だ。ソラ君も、その内戦ってみると良い!」
「怖いんで、パスしようかな」
襲われればフィーナ辺りに助けて貰えば良い。彼女にどれだけの実力があるかは分からないが、属神でもあるので健闘を期待しよう。
「そうだ、君に訓練をつける約束だったね。早速やろうじゃないか!」
と言いながらファイテングポーズを取ってくる。
「いやいや!そんないきなり無理ですよ!」
剣神相手に、拳であっても勝てる気がしない。だが、剣神は来るように手をヒラヒラと動かす。
「まずは、どこまで動けるかだ。さあ!」
「こうなりゃヤケだ!」
全国の高校生の平均より、やや遅いソラの走りで剣神に向かって拳を握りしめて向かう。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「気合はよし。だが、力がないな」
ソラの拳は剣神の人差し指によって止められていた。しかもぶつけた直後から手が痛い。
「予想してたけど、マジで指一本で止めてきますか。力の差がありすぎ!」
ソラは、タイム!と言って一旦元の位置に戻る。元より勝つつもりはないが(無理だもの)、一矢報いたい気持ちがある。
「《スキルジーニアス》、こうなったらスキルを作るまでだ」
「さっきとどこまで変わるか、楽しみだよ!」
気長に剣神は待ってくれている。
「さて、一矢報いてやる」
ソラの手に出現した3枚のスキルカードが出現して、直後に粒子になって身体に入り込む。
「おっ、楽しみだねぇ〜」
余裕な様子で、剣神は待つ。そこにソラは突っ込んだ。
「いくぞ《身体強化》!うぉっ!」
走りながらスキルを発動したソラのスピードは大幅に上昇する。自分でもその速度には驚いた。あっという間に、剣神の後ろに回り込むことが出来た。
「お、比べ物にならない速さだね」
「喰らえ、《拳闘術》」
拳を剣神に向かって突き出す。今の勢いならば岩すら砕けそうな気がする。
だが、そんな攻撃も剣神は人差し指で弾いてくる。両手で、がむしゃらに攻撃を放つが止められてしまう。
「さて、使ったスキルは2つか、後一つは何かな?」
「さて、どうでしょうね?手刀!」
握り拳を開いて、手刀にする。鉄などもスパッと切れてしまうような力があるが、それすらも指で止める。
「威力上がってるね、《剣術》スキルを面白い使い方をするじゃないか!だけど、まだまだだ」
「せめて、両手を使って欲しいですね。意地でも使わせますから!」
拳を握りしめて、腕を引き力を貯める。
「来い!」
「《無敵》」
拳に《無敵》のスキルを乗せ、拳が輝く。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
ソラが声を上げて、剣神に拳を放つ。
「そういう使い方か!」
流石の剣神も拳を握り、ソラの拳を迎撃しようとしてくる。2つの拳がぶつかり合った瞬間に、
バチンッ!
とと激しい音を立てる。剣神の強力な拳でも《無敵》であれば劣らない。
「だけど、君が1番わかってるだろう?そのスキルは、5秒が限界って」
直後に、ソラの拳の光が消えた。だが、ソラはそのまま拳を突き出す。
「さて、終わりかな。《無敵》には驚いたよ!」
「どうかな?もう1
拳を剣神にぶつける直前に、スキルを発動する。発動するはずがないと思っていたそれには、剣神は驚きを隠せないのだった。
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