《スキルジーニアス》俺だけ、クラス異世界転移で神界に居残りさせられたのでのんびり生きていきたい。クラスメイト?別にどうでも良いですよ!

@Ritoha5680

第1話 神界に居残り確定

「残念ながらあなたのスキルでは異世界に旅立てません」


「えっ……」


 突然の宣告に固まる自分。そして、直後に巻き起こるクラスメイトの侮蔑の声。


「おいおい、どんだけ無様なスキルなんだよ」

「スキルなしでも異世界に行けるのに」

「あんなの忘れてさっさと行こうぜ」


 クラスメイトとは、特に仲が悪かった訳ではないが、これは余りにも酷い対応じゃないか?と思わずにいられない。


「それでは、皆さんには異世界に旅立って頂きます!世界をどうかお楽しみください」


 楽しそうなクラスメイト達の声を聞きながら、自分は気がつくと膝を地面についていた。


 周囲が静かになった後、自分に歩み寄る足音が聞こえた。


「あれ、どうしました?お腹でも痛いですか?落ち込んでらっしゃいますね」


「いや、この状況で落ち込まない方が無理あるでしょ……」


 目の前にいる美女、転移担当だと言う女神を見据えながら自分、才河天(さいがそら)は項垂れるのだった。







 そもそもどうしてこの様なことになったのかというと、ことの発端は修学旅行の帰りであった。


 修学旅行の終わりを残念に思いつつも、その楽しさを噛み締め、盛り上がるバスに天も乗っていた。


 初めて行く場所というのはとても楽しいものだ。心が躍る。


「もう帰り道って、早いね!まだまだ旅行してたいよ」


 と言ってきたのは、クラスメイトの那加島絵里(なかしまえり)だ。活発な子で、クラスでも目立つ人物である。


「そうだね……」


「早いよな!楽しい時間は」


 天が答えようとしたが、直後に他の男子の声でかき消される。折角の会話の機会を奪われて悲しくなる。


 絵里は、少し困って顔をしていたが、その男子に頷いていた。


 スマホでも見て時間を潰すか……と思いながら、バッグを漁っていると直後に浮遊感を覚えた。




 そして、気がつくとキラキラと光る空間にクラスメイト20人は立っていたというわけだった。


「ようこそ、神界へ。私は、皆様の転移を担当させて頂く女神です」


 テレビでみるアイドルなども比べ物にならない美女がいた。滑らかな金髪におっとりとした青い瞳には、クラスメイトの多くの男子が釘付けになっていた。


「あの、ここって……」


 恐る恐る女子が口を開いた。


「神界、神の世界です。地球で死にそうだった皆様をお連れしました」


 と言いながら説明を続ける。


 なんでも地球で自分達は、バスの事故により死んでしまう所だったらしい。それを神界へ連れてきて救ってくれたとのこと。


「家に、帰れるんですか?」


 という声が何人かから上がる。しかし、女神は首を横に振っていた。帰れないらしい。



 その結果を知って、周囲は落ち込んだ様子を見せたがその後に異世界に行けることを知って何やら盛り上がり始めた。


(やけに、みんなのテンションの変化が激しいな。何か女神がやってんじゃないよな……)


 やけにみんなの現状への受け入れが早い気がした。チラリと女神が自分を見た気がしたので、下を向く。


 天自身も、これが夢などではないか?と普段であれば疑問に思うであろうことを疑っていないことに気づけていないのだが……



「異世界に行くにあたって皆さんのスキルを調べてみましょう!無くても大丈夫です。向こうで充分に生活出来る様に取り計いますので!」


 安心感を与える微笑みを女神が浮かべ、疑問の声を出す者はいない。


 流れで、スキルを調べていく。手のひらに収まるくらいの天使と呼ばれる者が飛んできて鑑定してくれる様だ。周囲には、情報を漏らさないように女神に伝えてる様だ。


「はいはーい、鑑定しにきました。天使のフィニーで〜す」


「どうも、天です」


 赤い髪の毛の、つり目の天使が目の前にいた。こちらをじっと見つめているため鑑定中なのだろう。


「おお、これは!」


 とだけ呟いて、女神の元に向かって行った。てか、スキル教えてもらえなかった。


「ちょっと……」


「うぉぉぉぉぉ!俺、スキル3つあるんじゃん!もしかして、異世界で大活躍できる感じ?」


 天の声は、クラスメイトの大声にかき消された。クラスでも運動神経が良いグループで盛り上がっている。


「えー、凄い!」


「それ、勝ち組って奴?」


 などなど盛り上がっている。

 スキルが無い者も多く、羨んでいる声もある。



 自分のスキルを早く教えてもらわなければと女神の元に向かおうとしていると、女神が向こうからやって来ていた。どこか怪しげな笑顔を浮かべて……




 そして、冒頭に戻ったのだ。



「残念ながらあなたのスキルでは異世界に旅立てません」


「えっ……」


 優しい女神の表情が悪魔のように感じてしまったのは、自分だけの秘密である。

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