「僕と靴紐女 人生ハードモードなんていうが僕のそれに比べたら虚構に過ぎない」

R.M.ヒロ

〜プロローグ〜 この日僕は死んだ

不意に僕の手が彼女を突き飛ばしていた。


彼女は公園の芝生の上に倒れ込み、うずくまった。

目の前にある死体。うずくまる彼女。

そして、それを見下ろす僕。


側からは、2人を傷つけたように見える僕は凶悪犯に映っているに違いない。

だからなのか、周囲にはスマホを構えた人がちらほらいる。


しかし、弁解させて欲しい。


これは、彼女の責任だ。


この件を境に、僕は社会から害悪とのレッテルを、

社会不適合者であり不要とのレッテルを貼られることになる。

たとえ、SNSでこの場面が切り取られ拡散されようとも、

どれだけ中傷の言葉を浴びせられようとも、僕が無実なことには変わりない。


しかし、社会は無慈悲で、一度貼られてしまったレッテルは綺麗には剥がれない。

無実だと証明されてもこの事件の関係者としていつまでも見られることになるだろう。


倒れ込んだ原因が彼女自身にあることは彼女も承知しているのだが、

世間は知らない。

経緯を唯一の理解している者がその彼女のみであるというのは皮肉なものだ。


彼女に憤慨しているわけではないし、嫌悪もしていない。

身が引き裂かれる思いで告白しよう。

不本意ながら僕は、彼女のことを心底信頼している。


ただ、彼女は言動が常軌を逸しており、自身の望まない形で周りに多大なる被害をもたらすだけなのだ。

そんな彼女との出会いは思い出すのもおぞましい、背筋の凍るものだった。


数ヶ月前のあの日から、僕の人生は狂い始めたのかもしれない。

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