第11話 ファン
ファンからの電話、手紙。たった数回のライブでRevolutionの人気は地元の中学高校で一気に広がった。女の子達が勇気をだして私の家に電話してくる。一人ではかけてこない。数人が集まり電話する。「友達になってもらえませんか。」だいたいは一度きりの電話。
理沙からの電話は違っていた。
「またかけていいですか?来週のこの時間に。」数日後、私のライブの写真と、彼女の写真が入った封筒が届いた。セーラー服に可愛い笑顔。彼女は私とは少し離れた市の進学高に通っていた。同じ学年。彼女は古文が得意で県で3位の成績だった。
数回の電話だったが、私は彼女に興味を持ち始めていた。
「バレンタインデーにチョコレートを渡したいの。」学校から帰った私は父に事情を話し、彼女が住む街に車で連れて行ってもらった。小柄な子。彼女は私にチョコレートケーキが入った箱を手渡した。その後の数回の電話で理沙の本気の気持ちは伝わった。あの時会わなければ、ファンの一人というだけで終わってたかもしれなかった。
初めての理沙の家。理沙の母親はお昼ご飯にステーキをご馳走してくれた。「お魚も買ってたんだけど、レジに忘れてきちゃった。」明るい人。
友達の写真を見せてくれたり、学校のこと、ライブでの印象など理沙は色んなことを話してくれた。
彼女の友達が撮ったライブの写真には、サングラスをかけてステージに立つ私がいた。
彼女がファンになったという1月のライブだ。ライブ最後に出演したバンド全員でRCサクセションの雨上がりの夜空にを演奏した。私はこの時ギターにプラグがささってなかったことを彼女に話した。笑顔の彼女。可愛かった。
「今週末泊まりにこない?」高校2年も終わりに近い3月。純粋な17才の私はタツヤを誘って彼女の家に泊まりに行った。その日は親が外出してるとのことだった。
理沙と彼女の友達。私とタツヤ。高校生の私達は大人が期待するような出来事もなく、ちょっとした話で盛り上がり、大笑いし、そして朝を迎えた。
理沙はまだ寝ている私に馬乗りになり起こしにきた。「まだ寝てるの?」またの上に感じる重みと髪の毛の香り。我慢出来なかった。私は彼女を抱きしめ、そして上になりキスをした。
抱きしめてどれくらい時間が経っただろう。「暑い。」ゴメン。そっと抱きしめる腕を解いた。17才。初めてのキス。柔らかい唇。そして女性の体の温もりを初めて感じた。彼女は照れくさそうにベッドから出て、隣の部屋に行った。
付き合って間もない高校生カップルにとって、初めての遠距離恋愛は難しかった。理沙と恋人でいられた時間は、まるで線香花火のように静かに輝き、そして消えた。
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