僕は無能力者です (裏)

side〜学園長〜


「学園長!これはいったいどういうことですか!」


目の前で一人の教員が叫んでいる

まったく、騒がしい…


「どうもこうも…見ての通りですよ」


「無能力者を我が校に入れるなど正気ですか!」


「これはもう決まったことです、貴方がなにを言おうと関係はありません、下がりなさい」


「くっ…失礼しました、」


そう言い残して、彼女は学園長室から出ていく


「全く、能力は優秀なんだけどねぇ」


彼女は無能力者や低ランクの能力者に対して差別的な考えを持っている節がある

まぁ気持ちはわからなくはない、低ランク能力者どころか無能力者の異例の編入なのだから、不満が出るのは仕方ない


ふと、手元にある資料に目を向ける


「斎藤 武 無能力者ねぇ」


そこには、ついさっき話していた人物についての情報が載っていた

彼は、確実に自分の能力を隠している。どうやって検査を逃れたのかは不明だが、つい最近でもその力の片鱗を見せている


ほとんどの人に気づかれないようにひったくり犯を取り押さえたり、精鋭の暗殺者からの攻撃をいとも簡単に避ける…


少なくともBランク以上であることは確実だろう

力を隠しているとはいえ、バレるリスクを負いながらその力を人を助ける為に使っていることから、悪人ではないだろう


「母の件で恩もあるし…」


彼が倒したひったくり犯の被害者は私の母だったのだ


いくら衰えたとはいえ、彼が脚を使って転ばせたことに気付き、お礼を言ったのだが、彼はまるで本当になにもしていないかのように振る舞い、そのまま去っていったのだという


そこから監視を始めたのだが、彼はほとんど能力を使う気配を見せなかった

だが、彼が暗殺者になぜか狙われているということが分かった、彼は素知らぬ顔で避けているらしいが、保護はしなければならないだろう

そんなこともあって、私が彼を聖内学園に入れたのだ


彼の何らかの事情と能力を持っている証拠がないことから無能力者ということで処理したが…

やはり不満などは出てしまうだろう、彼が面倒ごとに巻き込まれなければ良いのだが


side〜暗殺者〜


あの、レッドアイが暗殺に失敗したらしい

そんな噂を聞きつけ、そのことについて調べてみたところ、レッドアイが狙っていたのは無能力者のただのガキだということが分かった


「レッドアイも堕ちたもんだな」


そんなことを言いながら、ターゲットに狙いを定める

あのレッドアイがやり逃した獲物を殺せば、俺にも箔が付くってもんだ


「だが、あいつは何があったにせよレッドアイが流した獲物だ、油断は出来ねぇな」


そう言った後、俺は全神経を集中させる


ドンッ!


弾が発射されあいつに当たるーー


と思った瞬間あいつは首を傾げ、いとも簡単に弾を避けた


そんなはずはない

そう思って何度も何度もあいつに向けて撃ったが、しゃがんだり、急に走り出したりと何回やっても当たらない

そのうちあいつは家にたどり着き、入っていった


「そういうことかよっ…!」


俺はそのままあいつをやることを諦めた

俺と同じような奴らがこぞってあいつを殺ろうとしたらしいが、誰一人として成功せず、諦めたという


そんなあいつのことはまたたくまに暗殺業界に広まり、噂に尾ひれがついたりとしたせいで、あいつの存在はタブーとなり、斎藤武お断りなんていうところも増えたらなんてこともして、暗殺業界の中で伝説となっていくのだが、それはまだ少し先のお話




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る