第61話 追加でアレが必要となるらしい。

 ハテナさんとの「仲良し」を終え、本日3度目の賢者タイム。

 まくら元の目覚まし時計を見ると、午後1時30分を示していた。


 お昼までの時間つぶしのはずが、なぜこんな時間になってしまったのか。

 それは、お互いが満足するまで「仲良し」を十分に楽しんだ結果である。


「ハテナさん、この後、どうする? 昼食の時間は、もう過ぎちゃったけど」

「私は、お昼抜きでも平気ですけど、お兄さんは、おなかすきましたよね?」

「お昼も一緒に食べようよ。売店で、パンでも買って来ようか?」


「お兄さんが売店へ行くなら、私も一緒に行きます。でも、その前にシャワーを浴びてからにしませんか?」


「いいね。シャワーを浴びてから、行きましょう」


 相談の結果、シャワーを浴びてから売店へ行く事になった。

 2人とも全裸のまま、脱いだ服と着替えを持って脱衣所へ。




 浴室に入り、妹の大きなお尻を観察しながら、隣でシャワーを浴びる。

 まだ精力は残っているので、賢者タイムは、すぐに終わってしまった。


「お兄さん、まだ出し足りないんですか?」

「これはオトコの本能だからね。ハテナさんが魅力的な女性である証拠だよ」


「続きは、お昼を食べてからですよ!」

「あははは、了解しました」


 お昼を食べたら、また続きをさせてもらえるらしい。

 かわいい妹が相手なら、お兄さんは、いくらでも頑張れますよ。




 シャワーを浴び、体をいた後、体操着の上にジャージを着て、準備完了。

 ハテナさんは体操着だけで、ジャージは着ないらしい。


 女の子は、脚を出しているほうが美しいですよね。

 オトコである僕は、脚を出しても見苦しいだけですが。




 209号室から廊下に出ると、ハテナさんは無言で僕の手を握る。

 拒む理由などないので握り返し、2人で仲良く廊下を歩く。


 女の子同士で手を繋いで歩く事は、この学園では珍しい事ではない。

 僕はオトコなので目立ってしまうが、それ以外は、男女同権である。


「ハテナさんは、ユウくんとも、こんなふうに手を繋いで歩くの?」

「はい。小学校の3年生までは、手を繋いで、学校へ行ってました」


「前に聞いた通り、当時は優しいお兄ちゃんだったんだね」


 小学6年生の男子が、小学3年生の女子と手を繋いで、仲良く登校。

 実にうらやま……いや、微笑ましい光景だ。


「でも、ユウくんは、私を置いて、先に卒業してしまったんです」


「ハテナさんが4年生の時、ユウくんは、もう中学生だもんね」

「はい。それでも、家が近かったので、時々、会えたんですけど……」


「会うたびに、体を求められるようになった……と」

「そうなんですよ。私、まだ小学生だったのに……」


 中学生の男子が、小学生のカノジョに体を求める。

 実に羨ま……いや、それは犯罪です。


「もう大丈夫ですよ。今のハテナさんは、13歳ですから」

「はい。今の私は、もうオトナです。お兄さんのお陰です」


 そして、高校2年生の僕が、中学2年生になったハテナさんと……。

 これは、とてもラッキーでしたね。


 たまたま、いいタイミングで一緒にいただけなのに。

 僕にはクマさんという、素敵なカノジョもいるのに。


 ハテナさん、僕を練習相手に選んでくれて、ありがとう。

 クリさん、ハテナさんに僕を薦めてくれて、ありがとう。


 クマさん、ハテナさんとの練習を許可してくれて、ありがとう。

 お会いした事はないけれど、ユウくんも、ありがとう。




「私、これにします!」


 売店のパン売り場で、ハテナさんが選んだパンは、粗挽あらびきフランクロール。

 太くて黒くて硬そうなフランクフルトが挟まったパンだ。


「じゃあ、僕は、これで。飲み物も、好きなのを選んでね」


 僕が選んだのは、大きなコロッケパン。

 文字通り、大きなコロッケの入ったパンである。


「お兄さんは、何を飲みます?」

「僕は、これがいいかな」


 飲み物は、微糖のストレートティー。

 ミルクティーのほうが売れているようだが、僕はストレートのほうが好きだ。


「じゃあ、私も、それで」


 売り場からストレートティーを2本取って、無人のセルフレジへ。


 ……ピッ、……ピッ、……ピッ、……ピッ。…………チリーン。


 パン2個と紅茶2本、商品のバーコードをスキャンし、ジョーカで支払う。

 ジョーカ【JOCA】とは、当学園の学内専用電子マネーだ。 




「どこで食べようか? 教室か中庭がいいかな? ハテナさんは、どこがいい?」

「私は、あそこがいいです。私達、もう『関係者』ですよね?」


 ハテナさんが指差したのは、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたプレートがられているドア――管理部の部室――だった。


 ハテナさんは、僕と関係を結んだから「関係者」の仲間入りという事か。

 いや、いや、それだと、カンナさん達が部室に入れないじゃないですか。


「あははは、『関係者』の意味が、ちょっと違う気がするけどね」


 この場合の「関係者」とは、管理部の部員、及び、売店の関係者。

 ハテナさんは管理部の副部長である僕の妹なのだから、無関係ではないはずだ。

 それに、この時間なら、きっと部室には誰もいないだろう。




「どうぞ。座って、座って」


 案の定、部室には誰もいなかったので、ハテナさんを招き入れる。


 僕は、いつも自分が使っている奥側の席に座り、ハテナさんには、普段リーネさんが使っている、僕の正面の席に座ってもらった。


「管理部のお仕事って、お兄さんは、何をしているんですか?」

「レジはセルフレジのみだから、主に商品の補充と発注かな。後は、お掃除とか」


「商品って、いつ来てるんですか?」

 

「早朝と夕方だよ。パンや紙パックの飲料は毎朝6時前に来るし、お菓子や雑貨は週に2回、月曜日と木曜日の夕方、大量に入荷するよ」


「そうだったんですね。でも、お兄さん、朝は、いつも部屋にいますよね?」


「そう。朝の検品は、管理部の協力者である升田ますだ先輩と浅田あさださんに任せてあるから、何か問題が発生しない限り、僕は店に行かなくても大丈夫だよ」


 ハテナさんはパンを食べながら、疑問に思った事を僕に質問してくる。


 知らない事を知ろうとする姿勢は、とても大事だと思う。

 僕も見習わなくては。 




「――あっ! お兄さん、ココロ先生が来ましたよ。何か探してるみたいです」


 ハテナさんの声を聞いて、背後にある防犯カメラの画像を確認すると、生徒と同じジャージを着た小柄な女性が、キョロキョロと店内を探し回っている。


 2年生の担任であり、保健体育の先生であり、昨日は佐藤さとう先生の部屋にこっそりと忍び込み、クマさんと僕の営みを温かく見守ってくれていた、長内おさない心炉こころ先生だ。


「あー、ホントだ。ちょっと挨拶あいさつして来るね」


 長内先生がご来店されたのなら、店長として挨拶くらいはしておかなければ。

 そう思って、売り場へ出ると、先生は僕を、すぐに見付けてくれたようだ。


「長内先生、いらっしゃいませ」

「甘井さん! 良かった、ここに居たんだ」


「もしかして、僕を探してくれていたのですか?」

「うん。そろそろ『アレ』を、また注文しようと思って」


「『アレ』とおっしゃいますと、もしかして『アレ』ですか?」

「そう。『アレ』よ『アレ』。甘井さんは、昨日クマちゃんと使ったでしょう?」


 そうですね。

 昨日はクマさんと使って、今日はハテナさんと使いましたね。


天狗てんぐの鼻にかぶせる『アレ』の事ですよね?」

「そう。その『アレ』よ。1年生にも、そろそろ教えてあげないといけないから」

「1年生でも、誕生日が早い子は、もう13歳ですからね」


 日本の法律で「性交同意年齢は13歳」と定められているそうだ。

 つまり13歳になれば「仲良し」しても「合法」という事である。


「それに、前に配った『アレ』も、もう使っちゃった子もいるでしょう?」

「そうですね。けっこう使いますので、また配ってもらえると助かります」


 長内先生が生徒にコンドームを配る理由。

 それは、生娘寮に男子生徒が住んでいるからだ。


 寮生の「望まない妊娠」を防ぐ為。

 これは、僕1人の為に配ってくれていると言っても過言ではないだろう。


「甘井さんは、くれぐれも寮の女の子を妊娠させないようにね!」

「もちろんです。相手の子を妊娠させない。これは『オトコの責任』ですから」


「じゃあ、また近いうちに10箱くらい買いに来るから、よろしくね!」

「コンドーム10個入りを10箱ですね。ご注文、承りました!」


 昨年度の「避妊説明会」は、1年生から5年生までの5学年で行われたが、今年度からは、1年生のみ――という事らしい。


 当学園の1年生から5年生までの生徒数は、5×18名 = 90名。

 10箱のうち、9箱が配布用で、1箱が説明用という事か。


 なぜ、6年生には不要なのか。


 その理由は、6年生は夏休み以降「妊活解禁」になるからだ。

 夏休み以降に仕込めば、出産は卒業後という事になる。


 つまり、子供を作る事が目的なので、避妊をする必要がないのである。

 6年生の先輩方が、お子様を授かる為に……旦那だんな様が羨ましいですね。




「お兄さん、何をしているんですか?」


「これは発注用の端末で、発注数を入力しているところだよ。もうすぐ終わるから、ちょっと待っててね」


 部室に来たついでに、管理部の仕事を終わらせる。

 ハテナさんを少し待たせてしまったが、この後も、ずっと一緒だ。






 寮の部屋に戻り、ハテナさんとの「仲良し」午後の部。


 例によって、オトナの事情で詳しくお伝え出来ませんが、2時半頃から、まったりと4回目を始めて、5回目が終わったのが4時半頃だった。


 1日に5回は、さすがに疲れた。

 しかも、寝る前に1回、寝ている間にも1回出しているので、実質7回である。


「お兄さん、今日は、ありがとうございました!」


「あははは、こちらこそ、ありがとう。ハテナさんは、元気一杯だね」

「はい。お兄さんは、お疲れのようなので、明日は、また実家に帰る事にします」


「練習は、もういいって事?」

「はい。明日は、私のほうから、ユウくんを誘ってみます」


「そうか……頑張ってね。あー、僕と練習した事は、ユウくんにはナイショだよ」

「分かってます。お兄さんもクマちゃんとお幸せに!」


「うん。お互いに頑張ろうね」




 そうですよね。

 僕も分かっていましたよ。


 僕は、ユウくんからハテナさんを寝取ってしまったような気がしていましたけど、実際に寝取られてしまうのは、僕のほうですよね。


 初めての相手よりも、将来有望な相手のほうが大事に決まっています。


 ハテナさん、明日は上手うまくいくといいですね。

 ユウくん、どうかハテナさんを幸せにしてあげて下さい。

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