第3話

「いやあふみたん怒らすと怖いねえ♪」


 三人は同じ高校同じ学年、顔見知りだしなんだかんだで縁があるので塾でも傍に座っているが、二三は左右輔と朔良のふたりに比べれば特別仲が良いというほどでもない。なので彼女は塾が終わるとひとり帰路に着き、逆に中学から付き合いのあるふたりはこうして連れ立って帰るのが常だった。


「あれは殺る目だったな。間違いねえよ」


「本人も言ってたしねえ♪」


「なんつーかさあ、生真面目ってレベルじゃないんだよなあ。肝が据わってるっつーの?やべえよなアイツ」


「キレ具合ハンパないよねえ♪黙ってれば可愛いのにね♪おっぱいもおっきいし♪」


 そう言って両手で自分のふくらみを制服の上から鷲掴みにして見せる。朔良は人並みかやや控えめといったところだが、二三は他の追随を許さない圧倒的ボリュームがある。

 そのため塾でもこの春季集中講座が始まった直後に一瞬注目を集めたが、しかし如何せん彼女の気性は周囲の好奇心を圧殺して余りあるものだったので今では誰もそこに触れようとしない。


「なんだ、チチの育成で悩んでんのか?」


「育成て♪うーんぶっちゃけそれほどでもないけど、ハイって言ったら揉んでくれるのかな♪」


 にんまり笑う朔良に両手を挙げて白けた顔で首を振る左右輔。


「ねえよ。でも気にしてんならトマト食うといいぞ」


「ほへえ、トマト?」


「トマトにリコピンって含まれてるの知ってるか?」


「名前だけは聞いたことがある♪かなっ♪」


「あれ老化の進行や染みシワ肌荒れを防いでスタイルを良くする効能があるんだ。つまりチチもデカくなる。たくさんじゃなくてもいいから毎日食うといいぞ。加熱や乾燥でも壊れないからドライトマトとかでもいいぜ」


「へえええ♪トマト好きなんだけどなんでちっさいのかな♪」


「トマト好きだから辛うじてそのサイズなんじゃねーか?」


「絶望感♪パないの♪♪♪♪♪」


 朔良はお腹を抱えて本当に絶望しているとは思えないテンションでひとしきりケタケタ笑ったあと、ぴたりと声を止めて左右輔を見た。


「さっすがに嘘でしょ♪」

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