青い自転車

早川 律

第1章 出会い

ep1. 初日の朝



 ついこの間まで背負っていた薄桃色のランドセルがまだ机の横にかけてある。ところどころ色あせて、革の部分が禿げていたりもする。このランドセル、もういらないのにここに置いてたら邪魔だなぁ。 そんなことを思いながら、新しい制服に腕を通した。


 私の名前は高橋たかはし日菜子ひなこ。今日から中学生になる。ありがちな物語の始まり方だと思うけど、私だって今日からどんなことが起こるのか分かっていない。学校に向かう途中で超絶イケメンに出会うかもしれないし、出会わないかもしれないし、変なヤンキーに絡まれてるところをかっこいいイケメンが助けてくれるかもしれないし、そもそもそんな分かりやすい展開なんて一切ない普通の朝になるかもしれないし。


ーーーえ?どっちみちイケメンに出会いたいだけじゃんって?


 そうだよ。私は中学生になったらイケメンくんとお友達になって、楽しい青春の日々を謳歌するって決めてるんだ。


そのために春休み中はメイクだって勉強したし…(まぁ校則でメイク禁止だけど)


なんてったって、もう子どもじゃないもんね。


 勉強ももちろん頑張るけど、まずは中学生活楽しめたらいいな。







「いってきますっ」


朝ごはんを食べて勢いよく玄関を飛び出した。ドアを開けた瞬間朝日が眩しくて一瞬顔をしかめたけど、暑くもなく寒くもない4月の風がふわっと私を包み込んだ。


めっちゃいい天気じゃん!!!!


わくわくしながら初めての通学路を歩く。



私は頭はそんなに良くないけど、何故か私立の学校に通うことになって、今まで一緒に過ごしてきた小学校の友達とは離れ離れになってしまった。


卒業式の日は泣いたなぁ。

みんなで卒業アルバムにメッセージ書きあって、いっぱい写真も撮った。

中学は知らない子がたくさんいるだろうけど、馴染めるといいな。



そんなことを考えながら、通学路を歩いたのだった。




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