俺は世界のバランスを崩すって言われたんですけどタダの人間ですから丁寧に扱ってほしいです
寿司升
1話~異世界ファーストコンタクトからの戦場までが秒速だった件について
それは、俺が近所のドラッグストアに閉店時間ギリギリでジュースを買いに行った日の帰りだった
スーパーとかコンビニよりもお手頃価格でお菓子とかジュースが買えるドラッグストアマジ助かる
閉店ギリだったのは少し申し訳なかったけど仕方ない。炭酸飲料が飲みたかったんだ。許してくれレジのおばちゃん
唯一冷えてたヤツを右手にドアをくぐった瞬間
「王女様!成功いたしました!」
「あぁ!勇者様!どうか…どうか御力をお貸しください!」
誰だお前は……
「勇者様!困惑されるのも無理はございません!ですが、今は火急の時なのです!どうか私に御力をお貸しください!」
「いやいやいやいや!誰ですかアナタ!ってかなに!?」
「お願いします勇者様!どうか私に御ちkぅはぁぁ…!?」
いきなり現れていきなり駆け寄って来た巨乳美人の金髪お姉さんが訳分らんことを言い始めて俺の手を握ったかと思うといきなり喘いだ
いやもう情報の洪水で俺の頭は水没してます
その90%は美人さんが俺の手を握ってることにより引き起こされてるのは言うまでもない
「いやちょ…!手!なに手握ってんですかちょっと!誰ですかアナタ!いきなり手を握ってくるとかおかしいんじゃないですか!?」
そう言いつつも振りほどこうとも出来ない…いや、しないのは男の性か…ちくしょう。健全な男子はどんな時でも男子だというのか
「ぁあ……これが…勇者様の御力…」
顔を紅潮させて目を潤ますのやめてもらえますかね
顔が熱くなって止まらないんですけど
「これだけのパワーがあれば…悪魔達を一掃できるかもしれません!勇者様こちらに!」
「ちょ…!」
「いきなりで申し訳ありません!しかし先ほども申しました通り今は一分一秒が惜しいのです!さぁ!」
「走るの速いって!ってかホントどこここ!石造りの建物になんていた覚えないんだけど!?ってかなんか暗いしそれに悪魔ってなに!?ってか手放して!」
「全部後で説明いたします!今はとにかく走ってくださいませ!城門前は既に戦場です!御心の準備を!」
「待て待て待て!戦場ってなに!?なんか騒がしいし動物の叫び声みたいなのも聞こえるし状況がおかしいって!絶対おかしいって!」
事ここに至ってようやく自分が何かしらおかしい状況に置かれていることに気づき始めた俺の心中は穏やかではなかった
ドラッグストアに行っていたはずの俺は今、よくわからない石造りの大きな建物の中を美女に手を握られながら走らされ、よく見たらこの美人さんもどことなく既視感のあるちょっと派手めな鎧らしきものを纏い、何かがぶつかる音と動物の…いや、よくわからないぎゃあぎゃあとしか表現できない鳴き声のする方にどんどん進んでいる
ある種の期待と、それに倍するくらいの嫌な予感と、未だ握られている手の感触を認識しながら城門…だろう。あれは。それに近づいていく
「今から勇者様と城外に出ます!門を開けなさい!」
走りながら叫ぶ王女様。だと言われていた人
それになんの疑いも持たずに城門を開ける兵士の人
飛び出した先には阿鼻叫喚が待っていた
「王女様!?限界が近づいてきています!結界が決壊しそうです!城内に御戻りを!」
なんかよくわからない光のバリアーみたいなヤツを発生させてるであろう…僧侶?っぽい人が出てきた俺達、否、王女様に向かって叫ぶ
くだらないダジャレと共に言いやがったのは触れないでおいてやる
「ってか悪魔じゃん!まごう事なき悪魔じゃん!何この数!悪魔ってこんなでてくんの!?初期の敵多過ぎん!?」
「敵は四魔将が一人、カマセールの率いる大群です。カマセール一人の力も相当なものですが、私には及びません。
ですが、奴はあろうことか自身の軍すべてをこの戦いに投入して消耗戦を強いてきたのです。自分の部下を使い捨てにして、私一人を殺す為だけに!」
「おや?帰ってきたのかい、王女様?城ん中でガタガタ震えてた方が長生きできたんじゃないかい?アタシとしては出てきてくれた方が手間が省けていいけどね!」
「お黙りなさい!部下の命を使い捨てにする外道!すぐにアナタを消し去って差し上げます!」
「あはーっ!尻尾巻いて逃げたくせに啖呵切ってんじゃないよ!悪魔相手に外道も何もあったもんかい!さぁ!結界もそろそろもたないだろ!死ぬ前にお得意の御祈りでも済ませておきな!」
トドメを刺そうとカマセールと悪魔達の攻撃が激化する
その攻撃にあからさまに軋み始める結界は、いつ決壊してもおかしくない様にしか見えない
「お、おい!王女様!?結界やばいんじゃないの!?絶対やばいって!今にも割れそうじゃんかさ!なんとかならないのか!?」
焦りまくる俺の横では先ほどまでとは打って変わって落ち着き、笑顔を携えた王女様がこちらを見つめている。手は相変わらず握ったままだ
王女様が自由な右手を掲げると今にも割れそうだった結界が微動だにしなくなり、悪魔達の攻撃を押し退けて広がっていく
「なん……そんな馬鹿な!もう結界の魔力は削り切ったハズだ!王女の魔力も物量で使わせまくった!もうアタシ達の攻撃を防げる力なんて残ってないはず!」
「ええ…私もそう思ってました。先ほどまでは。」
「なにを…言ってる!?」
「一か八かの賭けでしたが、私は間違いなく賭けに勝ちました。それと共に大きな罪を背負ってしまいましたが…どのような形でも、償っていきましょう。たとえ許されることがなくとも……。」
そんな泣きそうな、申し訳なさそうな顔をされてしまえば、この先の俺の運命を悟ってしまうじゃないか王女様。現代オタク舐めたらだめだぞ
「勇者様。私、今なら誰であろうと負ける気がしません。例え四魔将が相手でも、例えその配下全員が相手でも…」
王女様が右手を振りかざすと空中に無数の光の剣が出現した
それはおびただしい数の悪魔をさらに上回るほどの数で、正に埋め尽くす。という表現がピッタリだ
その光の剣は王女様の力強い叫びと共に悪魔に振り下ろされる
「例え…魔王が相手であろうとも!!」
「ぎ……!」
振り降ろされた右手に導かれて射出される光の剣、その奔流は悪魔の軍団を飲み込み、瞬く間に消滅させていく
四魔将とかいうボスも断末魔さえまともに上げることなく飲み込まれてしまった
最期の瞬間をこうもあっけなく迎えてしまうのは少々気の毒ではある
「これが、勇者様の御力なのですね…。」
これが俺の異世界とのファーストコンタクトで、いきなりの戦場だった
いきなり血みどろの戦場に一般人を引きずりだすのはどうかと思うよ、俺は
異世界ファーストコンタクトからの戦場までが秒速だった件について苦情を申し立てたい
俺の右手にはジュースではなくて美女の左手が握られていました
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