噛ミ合わなイ、睦ツ言
目の前には親友だと思っていた彼女……ではなく、彼の蕩けるような笑顔。悪夢のような現実を直視するのが怖くて、ただひたすら私は耐えていた。
寒い、熱い、気持ち悪い、気だるい、頭が真っ白、何も考えたくない、何も……。
事が終わった今は全身の倦怠感と消化しきれない不快感に泣きそうになる。
信じていたのに。
私が男の人が怖いと相談して、理解を示してくれたその人が実は男の人で。今の私になった元凶で。
気がつけば、私は彼の家に連れ込まれて、抵抗も虚しく身体を暴かれた。何度も、何度も。
やめて、と叫んでも彼は私が喜んでるのだと勘違いして、より一層酷く犯してきた。
そうした毎日を繰り返される度に、心にヒビが入っていく。
柔らかなベッドの上でぼうっと天井を眺める。制服は床に放り投げられたまま。
起き上がる気力もない。けれど眠る気にもなれなかった。
「ふふ、どうしたの?」
不意に天井を遮るように視界に入ってきた彼の顔は女性的なのに、恍惚とした微笑みは下卑たものに見えた。
「……嫌い」
「そっか。でも僕は君が大好きだよ」
「嫌い、あんたなんて居なくなればいいのに」
「でも僕は君と二度と離れたくないなぁ」
「大嫌い、あんたに声なんかかけなければよかった」
「でも君はどうあっても僕を助けてくれたでしょ? 女顔だって虐められてた僕を君が庇ってくれて、凄く嬉しかった」
言葉の応酬。噛み合わない会話。一方的な罵倒と、一方的な告白。
気持ちが悪い。こっちは何も覚えてないのに、その些細なきっかけのせいで私は自分の人生を棒に振り、これからも悪夢を見続けるのだろうと思うと明日を迎えるのが怖かった。
「嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い大っ嫌い……っ」
精一杯の拒絶を口に出すも、彼は逆上することもなければ、悲しむ素振りすら見せなかった。
代わりに満面の笑みを浮かべて、
「僕は君が好き。大好き。大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好大好き大好きだイすき大好き大好キだいスキ大好き大好き螟ァ螂ス縺螟ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺阪□繧、縺吶″螟ァ螂ス縺榊、ァ螂ス繧ュ縺?縺?せ繧ュ螟ァ螂ス縺榊、ァ螂ス縺大好キ??????キ大好き大好?──大好きだよ」悍ましいほどの告白を返した。
絹のような長い黒髪を垂らし、真正面から向き合う形で滔々とうとうと。真逆の言葉を繰り返す。
まるで私の感情を塗り潰すように。
──ああ、この人には私の言葉はどう足掻いても届かないんだ、と絶望した。
題名無しの短篇集 Qkuri @Qkuri168
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