夜散歩

その日の夜の事だった。


何となく胸騒ぎがして、ぱっと目が覚めてしまった。


もう一度寝ようとするが、妙に落ち着かない。


おミツは溜息を吐き、少しばかり家の外で風にあたる事にした。


月明りで今日はそこそこには明るい。


外を少し歩くくらいは問題がなさそうだ。


いないだろう事はわかっているが、相楽が普段鍛錬に使っている滝壺をのんびりと眺めたくなった。



あそこは一人で考え事をするには良い場所だ。





暫くすると小さく滝が見えてきた。


しかし、何となく物音が聞こえる気がする。


獣や野盗がいるなら大変な事だ。


すぐに村の者達に伝えなければならない。


おミツは恐々風下に回り、滝壺にいる何者かの正体を探る事にした。


薄っすらと人の形が見える。しかし、あの背格好は見慣れた者だ。


村にあんな背の高い、しゃんとした立ち姿の男はいない。


相楽だ。こんな夜更けにも拘らず鍛錬に来ていたらしい。


今日は本物の刀を振っている。


刃の光が形を変え、優雅に煌くのを見ると、刀による舞を行っているようだ。


刃に乗る月明りの光が反射し、白く辺りを照らすのがとても美しい。





見惚れていると、舞が終わったのか、相楽が刃を鞘にしまった。

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