嫉妬
相楽は相楽で、相も変わらずおミツのこと等見ていなかった。
もう戦に等は行けぬだろうに、また今日も鍛錬に出たらしい。
探しに行くと、鍛錬場にしていた滝壺から見える、崖の上の一本の八重桜を食い入るように見ていた。
その横顔は、このまま魂が飛んで行ってしまいそうだと心配に成る程、
儚く、切ない表情をしている。
相楽の表情に見入り、おミツもぽうっとしてしまった。
暫くすると相楽がポツリと一言呟いた。
「八重殿・・・。」
相楽が床に伏した時に呼んだ女子の名だ。
それを聞いて、一瞬おミツはびくりと肩を震わせ、息を呑んだ。
せっかく呼びに来たのに、相楽と今は顔を合わせたくなくて、
出来るだけ速足で家に向かって駆けだす。
こんな気持ちは知らない。
悶々としていても仕方がないので、
おミツは家事に集中することにした。
大丈夫だ。
今日は特別体調が悪そうではなかった。
ほっといても勝手に帰って来るに違いない。
暫く経つと、相楽が戻って来たので、
ほっとして膳を出したが、さっきのこともあって碌に相楽の顔が見れない。
それを相楽は何も気づかないようなのがまたおミツをもやりとさせた。
食事の際も心ここにあらずというような態度だ。
いつものように相楽は、
「馳走になった。」
と言うと、襖の向こうへ消えてしまった。
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