依頼

婆様は村の者達の居場所を教えるのを嫌ったらしい。


そのまま何かを了承すると、男が帰るまでその場を動こうとしなかった。


男の姿が見えなくなると婆様の手を引きに、おミツは転げるように婆様の元まで走っていった。


「おら気が気じゃなかった。一人にしねえでけろ。」


半泣きで婆様の手を引くと婆様はくすくすと笑ってお蜜の頭を撫でた。


「心配することじゃねえさぁ臆病な子だねえ。

もしこの村を襲うならあの侍はこんなちんけな村の家々、とっとと壊しちまったにちげえねえよ。」


おミツは安心してため息を吐きながら婆様に尋ねた。


「んならあん男衆は何しに来ただ?婆様と話したらすぐに帰っちまった。」


「ここらで良い家のお侍様が病にかかったもんで養生に使える隠里を探してんだってさ。

その代わりに食い物や着物をくれるそうだよ。

どうかね、こないだ人が出てった家があるからお前さ世話をしてみたらどうだい?

あそこはちょっと直しゃまぁまぁ良い家だよ。」


おミツは少し考えたがやはり得体の知れない男は怖い。


いやだいやだと言って婆様の袖を引きながら家に入った。


それでも婆様はおミツにここらの上の人々が使う言葉や接する時の作法を教えていった

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