急な訪問者

ある日の事だった。


見たこともないような鉄の立派な鎧と服を着た男衆が訪ねてきた。


男は、

「申し申し。」

と良く分からない言葉を喋っている。


どうやらここが村だと気付いたらしい。


村の誰もが男の言葉がわからないのだろう。


家から出ていく者は誰もいない。


金はありそうだが、野盗かもしれない。


なんせここには頼りになる若い男衆などいないのだ。


男がよくわからぬ言葉を吐いている間、村の衆は息を殺して隠れている。


それを聞くと婆様がすっと囲炉裏の近くから立ち上がり、外に向かって歩き出ようとしている。


咄嗟におミツは婆様の腕を掴んだが、婆様は大丈夫とでも言うように首を振ると戸をくぐって外に出た。


おミツには静かな声で、

「お前さは若いけ。ここに隠れてんしゃい。」

と言って男の方へと歩き出す。


婆様は男の前へと進み出ると一度平伏してから、男に立てといわれたようで、同じ目線で話をしている。


おミツは、いつ男が婆様を殺して村を襲うかと気が気ではなかった。


しかし耳を澄ましていると、おミツにはよくわからない言葉だが、

なんとなく男がこの村の衆に頼み事をしに来たのだとわかった。

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