異世界冒険譚~神様の依頼で異世界人を助けにいきます~
まさひろ
序章
第1話 出会い
「お疲れ様、カンパーイ!」
季節は4月上旬、会社近くの居酒屋で俺の所属している部署の歓送迎会が開かれた。
部署の人数は全部で10名程しかいないささやかな飲み会だが、3月末の追い込みから解放された部署の面々の顔は笑顔で溢れていた。
俺の名前は
中堅の商社に勤める25歳のサラリーマンの男だ。
まあ、自分で言うのもなんだが顔は平凡で体形も特に特徴ある部分のない何処にでもいる一般人だ。
そんな一般人の俺は大学を出てこの会社に就職した。
特に大きな会社ではないが特技の一つもない俺を採用してくれた会社には少しだが恩を感じ3年が過ぎた。
俺が入社した時も今のように部署の皆が集まり入社祝いをしてくれた。
そして今はその逆で俺は新しく入って来た仲間を祝い、部署から去っていく仲間に暖かい言葉を掛けた。
皆でワイワイと騒ぐ時間はあっという間に過ぎ歓送迎会は2時間程で解散となった。
当然仲間からは二次会への誘いを受けたが俺はそれを丁寧に断った。
断った理由はあまり酒が好きではない事と、今日は金曜日であり深夜に好きなアニメが放送される為早く家に帰りたかったからだ。とは言え体に入った酒を少し覚ます為、俺は自宅近くの最寄駅から真っすぐに一人暮らしのアパートへ帰らずに、少し大回りをして大きな公園へと足を運んだ。
この公園は周りをランニング出来るように歩道がしっかり整備されて、公園の周りには公園を覆うように樹木が植えられていて、中央には小さな池や子供が遊ぶ遊具そして多数のベンチが設置してある所だ。大げさに言ったが何処にでも平凡な公園の一つだ。
俺はほろ酔い気分でその公園の入り口へと入った。
公園のあちこちで街頭が公園を照らしていて怖いと言う印象はあまりない公園だ。
俺は夜の公園の歩道を一応自宅方向へとまったりとした夜風に当たりながらゆっくりと歩みを進めた。
時刻は夜の9時付近だったが会社帰りなのかスーツで歩く人や、上下ランニングウエアに身を包んで走る老夫婦とすれ違った。
あまりこの時間にこの公園には来ないがまあまあ人がいるなと、俺はすれ違う人を見ながらゆったりとした歩調で歩いていた。
そして公園に入り5分程あるいた所で俺の目の前に異様な光景が目に飛び込んできた。
見た感じ小柄な白髪のおじいさんが右手におじいさんの身長程の杖を持ち、服装は白一色のようなふわりとした服を纏って立っていた。そしてその立っているおじいさんを空・・いや、天からの光がまるでスポットライトのように照らしてる光景だった。
そんな光景が目の前に広がっているにも関わらずその横をまるでそこに誰も居ないが如く、夜の散歩をしているだろう夫婦やカジュアルな服装を着た男性がその横を通り過ぎて行くのだ。
俺は酔った勢いと興味本位でおじさんに駆け寄ろうかと思ったが寸前の所で足を止めた。
ほろ酔い気分だった頭は段々と冴えわたって行ってこれが夢なのか現実なのか分からなくなったからだ。
俺は気分を落ち着ける為に少し目を閉じて大きく深呼吸をした。
そして目を開けると、そう、今数メートル先にいた
俺は目を大きく開き声を失った。
まあこれは当然の驚きだ。いきなり人が目の前に現れれば人は言葉を失うのだから。
だが、俺の心臓の激しい鼓動はすぐさま平常心に戻った。
なんだかすぅーと体の中に溶け込んで来る何かが俺に平常心を戻させた。
そして俺がおじさんと目を合わせた瞬間に俺はおじいさんと同様に光に包まれた。
光はまるで俺とおじいさんを包むカーテンの様に周りを取り囲むような感じでフワフワと取り囲んでいた。
「驚かせてしまってわるかった」
その言葉はそう目の前にいるおじいさんから発せられた。
その声は老人特有のしゃがれた声ではなく、とても耳障りのいい音色のような澄んだ透明感のある声だった。
俺は咄嗟に話された声に反応しようとしたが思いつく言葉が直ぐに出てこなくただおじいさんを見つめるだけだった。
「今この空間には二人だけにさせてもらった、少しお主と話がしたいがいいか?」
俺はその言葉に言葉ではなく頷くだけしか出来なかった。
いきなり空間とか二人だけとか言われればそうするしかないからだ。
俺が頷いたのを確認するとおじいさんは話を続けた。
「まず初めに私はこの星を管理、いや監視している神だ。神だからと言ってお主に危害を加えたりしない事は最初に約束しよう」
俺は瞬きもしないほど目を大きく開いて神と名乗ったおじいさんを凝視していた。
かっ神って、それはおとぎ話の中だけの話だと俺は思っていたが現実に居たのかと。
おじいさん、いや神と名乗った人?は言葉の感覚をゆっくりと空け言葉を続けた。
「詳しい話をする前にお主はこことは異なる世界には興味があるか?」
はぁ?異なる世界って・・・これはよくあるファンタジー小説で出て来る世界の事か?
それは興味がないと言えば嘘になるが、あの世界が自分の現実となるとそれは少し話しが違ってくる。
俺はそう考えゆっくりと口を開いた。
「興味がないと言えば嘘になるけど、そんなに甘くないですよねこことは異なる世界ってのは」
「うむ、お主の言う通り。はっきり言えばこの世界よりある意味で厳しい世界だ」
うわぁ~俺の想像通りの答えが返ってきたよ。
俺は内心でそう思いながら神からの話の続きを待った。
「私の同類である神が管理する星では森には魔物と呼ばれる獣が徘徊し、多種多様な種族はそれに怯えながら暮らし、さらに国通しでの争いが絶えない星だ。そしてそこに住まう力なき人々は
俺は神の話を聞きやっぱり俺が呼んでいるファンタジーはあくまでも作り話で現実は甘くないと思った。
「そこでだ、お主に頼みたい事がある」
俺はその言葉を聞いて何となく先の展開が見えてしまった。
だがここから逃げ出す事も出来ないので神の顔をそのまま見つめた。
「異なる世界の人々を出来る範囲で助けてもらえないだろうか」
まさに俺の想像通りの展開となったので俺は返答の前にいろいろ質問する事にした。
「あの、少し質問してもいいですか?」
神は返事ではなく頷いて返事を返したので俺は言葉を続けた。
「この話を断ったら俺は何かされるのですか?」
これはもっとも重要な質問だ。
この答えで俺の人生が決まると言っていいからだ。
「最初に言った通りお主に危害を加えたりしない。断った時点で話は終わりで私は直ぐにこの場から消える」
「きっ記憶を消されるとかいろいろされるのですか?」
「何度も言う様だがお主に危害を加えたりしない」
「俺があなたの事を話すかもしれませんよ?」
「構わぬ。お主が私の事をこの星の民に話したとして信用するとは思えないし、たとえ信じたとしても私はお主の前には二度と姿を現す事がないからだ」
なる程言われて見れば当然だよな。
俺が神と会ったなんて言ったら間違いなく病院を紹介されそうだ。
俺はここまでの会話で少し胸のつっかえがなくなり突っ込んだ質問をしようと心に決めた。
「それでは何故俺なんですか?」
「心優しく若き青年を選んだ」
まあ、最悪俺でなくてもいいってことか・・って言うか、適当じゃないの?。
ここで愚痴ってもしょうがないので次の質問をする事にした。
「異なる世界、いや、異世界に行ったら帰ってこれないのですか?」
「帰れるが少し時間を必要とするが行き来は出来る」
時間か・・・。
「その時間と言うのはどの位の時間なんですか?」
「異なる世界とこの世界を繋ぐには力が必要になってくる。こちらから行くには特に問題はないが、あちらから帰って来るには力を貯めなくてはならない。簡単に言えば1~2日程度滞在すればその力は溜まる」
あれ?俺が考えていた条件とは違いかなり簡単だな。
俺はてっきり誰かを助けないとかと、魔物と倒さないと思っていたけど結構簡単だな・・・って、最初は断るつもりが段々と話に釣られている自分がいたがもう少しだけ俺は質問を続けた。
「人々を助けると言っていたけど具体的にどうゆう事をするんですか?俺は見た通り普通の男ですし、まっ魔王とか倒せませんよ」
俺が言葉を発した瞬間に神が笑い出した。
その笑いは10秒程つづいて止み神は言葉を発した。
「いやいやすまん。お主が魔王とか言い出したから思わず笑ってしまった。許してくれ」
俺は自分の頬が少しばかり赤くなるのが分かる程
「正直に言おう。適当に選んだお主にはそこまでの期待はしていない。お主が異なる世界に行きお主が出来る範囲の事をすればいいと言う話だ。さらに付け加えるなら魔王なんて者は存在しないぞ」
神はそう言うと口角をニヤリと上げた。
あ~俺はこの年になって寄りにもよって神に魔王なんて言葉を言ってしまった事を海よりも深く後悔した。
しかし、発した言葉は戻らないので俺は重要な質問を最後にした。
「人々を助ける為の力は貰えるのですか?」
そう、俺あファンタジー小説でよくみられるチート能力の存在を確認した。
「
行き来できる力のみって・・・ん?今私からと言ったような気がしたので俺は直ぐに聞き返した。
「それでは異世界の神からは力が貰えるのですか?」
「うむ、ある。しかしその話の続きはお主が了承してからになる」
やっぱりあるのかでもなぁ~詳細が分からないと、と俺が思案してると言葉が掛かった。
「そろそろ答えを聞かせてもらってもいいか?」
神からの最終の問いが来てしまった。
俺は悩んで今ある人生の現状を考えた。
両親は健在、兄弟はなし、この公園より最寄のアパートに一人暮らし、残念ながら彼女なし、平凡な会社員で趣味はアニメや映画を見る事と、たまに小説を読んだりする位か・・・。
例えどうにかなっても問題ないのか・・。
俺の人生って・・・いや、ここからだ!今、俺が生まれた意味が分かったような気がした。
俺は両眼を大きく開け正面に神を
「わかりました。行きましょう異世界へ」
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