第13章 懐かしい旅路

第1話 みんなの予定

エクス群島にある屋敷のリビングに仲間が集まっている。今後の予定を話し合うために全員が揃っていた。


「今はローゼン帝国の一部になったダンジョン島に行く前に、ミーシャやジジ達を里帰りさせたいと思っている。ついでに他にも顔を出したいところもあるから、一ヶ月くらいの旅になると思う。他のみんなはどうする?」


みんなは少し戸惑った表情を見せた。突然里帰りと俺が言い出したので驚いているのだろう。


マリアさん尋ねてきた。


「ロンダに行くということでしょうか? 王都には行かないの?」


「う~ん……、最初はミーシャの生まれ育った開拓村に行って、それからロンダかなぁ。王都の様子も見てみたいから、王都には寄るつもりだよ。まあ、細かい日程や行く場所は適当にその時の状況で考えるつもりだよ」


そこまで予定は考えていない。土地神様フリージアさんを宥めるために思いついただけで、それほど深くは考えていなかったのだ。


マリアさんは少し考えてから話した。


「里帰りなら私達は王都に行こうと思います。私は王都に何度も戻っているのですが、いつもは用事で忙しくてゆっくり家族や友達にも会えていません。ミイ達も王都には戻っていないので、この機会に王都でゆっくりしたいと思いますわ」


そういえばマリアさんはレイモンドさんの依頼で、ドラ美ちゃんに乗って王都へは何度も行っていた。ほとんどが行って戻るだけで、ゆっくりと王都にいることはなかったのだろう。

王都には妹のメアリさんもいるはずだし、ミイやジュビロ達は戻っていないはずだ。


ミイとリリアは嬉しそうにしているが、ジュビロとタクトは微妙な表情をしている。ジュビロ達は黒耳長族の彼女のことが気になっているのだろう。


バルガスも懐かしそうにしながら話した。


「久しぶりに王都のダンジョンに行くのも楽しそうだな。王都の様子も気になるし王都行は賛成だ!」


「それなら私も王都に!」


ちょいちょい、ミーシャちゃんや。お前の里帰りを忘れるんじゃねぇー!


家族よりダンジョンかぁ。ミーシャはもう完全に脳筋冒険者になったようだ。サーシャさんや家族に申し訳ない……。


「ミーシャ、ロンダにもダンジョンがあるんだぞ。あそこはまだ入ってことがないだろ?」


俺がそう話すとミーシャは少し考えてから答える。


「……やっぱりロンダのダンジョンに行く!」


いやいや、ダンジョンに行くのが目的じゃないよ!


最近はミーシャの思考についていけない気がするぅ~。


「それならマリアさん達とは王都で合流しよう。リディアとハル衛門も一緒に王都に行ったらどうだ?」


マリアさん達をドラ美ちゃんに送ってもらうのでちょうど良いだろう。


決して暴走ドラゴン姉妹を押し付けようとしているのではない!


『私はそれで構わないわ!』


「俺はご主人様のそばを離れるのは……」


ハル衛門は即答で答えた。たぶんマリアのほうが甘やかしてくれるからだ。リディアは俺の従魔だから俺から離れるのに抵抗があるのだろう。


しかし、リディアは涎を流しながら考えを変えた。


「で、でも、王都でご主人様を待つことにする!」


たぶんハル衛門が念話でリディアに何かを話したのだろう。


ご主人様より食べ物を優先かぁ……。


まあ、ドラゴン姉妹をマリアさんに押し付け……ゲフン、お願いできるのは助かる。


今度はドロテアさんが話した。


「それなら私も久しぶりにロンダに帰えろう。ロンダの屋敷のことも気になっていたからちょうど良いのじゃ!」


ドロテアさんは予想通りだな。


「「「私達もついて行くのじゃ(わ)」」」


エアル三姉妹もついてくると言いだした。


「黒耳長族の族長が何度も村を離れるのはダメだよ!」


決して暴走エアル三姉妹が一緒だと面倒だと思ったのではない……。


よく考えてみると暴走する仲間が多すぎる!


エアルが考えてから話した。


「黒耳長族の族長はエリスに譲るのじゃ。本当なら数年前に私の寿命は終わって、エリスが族長になっていたはずだから、ちょうど良いのじゃ!」


エアルと初めて会ったとき、エアルは寿命で死にそうだった。その時に実質的な族長はエリスがしていたが、若返りポーションでエアルが復活したことで、エアルが族長を続けていた。


黒耳長族の族長といっても大したことはしていない。それに最近はバルドーさんが族長じゃないかと思うくらい仕切っている。


エアル三姉妹は暫く揉めていたが、最後はエアルの主張が通った。エリスが正式に族長になり、エリカが補佐することになった。そしてエアルだけが俺達と同行することになったのである。


「私は留守番をしております。特に里帰りする場所もありません!」


うん、バルドーさんは行くつもりはないようだ。


本当ならバルドーメンズ隊の勧誘のために、一緒に行きたいのではないかと思う。でもヴィンチザード王国に行けば母親フリージアさんに嫁捜しをされるだろうし、メンズ隊と行動することは不可能だろう。


バルドーさんが一緒のほうが心強いので、理由を付けて一緒に行こうと言おうとした。しかし、バルドーさんの縋るような目を見て諦める。


「わかった。バルドーさんには留守中のことは任せるよ!」


土地神様フリージアさんにバルドーさんを連れてこなかった理由を説明するのは大変そうだ。


今後の展開を考えて大きく息を吐いた。するとジジが遠慮しながら話してきた。


「私にお休みをいただけないでしょうか?」


えっ、どういうこと?


ジジが望むなら休みをとっても全然問題はない。というか俺としてはジジのことを雇っているつもりなどすでにない。給金という形でお金を渡しているだけである。


このタイミングで言い出した理由が分からない?


俺が不思議そうな顔をしたからかジジが更に理由を説明してくれた。


「あ、あの、テンマ様が開拓村に行っている間にロンダの知り合いに会ってこようかと……」


「でも、開拓村の後で俺達もロンダに行くから、その時に知り合いに会えばいいよね?」


「テンマ様がロンダにいる時は、テンマ様のお世話をしっかりやりたいので……」


くっ、ほんまにジジはええやぁ!


別にアンナもいるから、ジジも自由に行動して構わないと思うけど……。


やはり雇われているという意識が強いのだろうか……。


よく考えるとジジの存在は、そばにいるのがあまりにも自然で、いなくなると思うと不安にさえ思えてくる。


無意識のうちにジジを縛っていたのではないかと不安になる。


ジジのしたいことを我慢させていたのかなぁ。


そう考えてジジの好きにさせようと決めて話す。


「わかったよ。でも、ジジだけで大丈夫かな……?」


好きにさせようとしたのだが、今度はジジに何かあったらと不安になる。


「クククッ、テンマは何を心配しておるのじゃ。ジジのそばにはピピがいる。それにテンマの魔道具があればジジに傷をつけられる人も魔物もいるはずがないのじゃ。それほど正妻が心配なら、ロンダには私も一緒に行くから安心すれば良いのじゃ!」


ドロテアさんに言われて恥ずかしくなる。


これでは過保護な父親か彼氏みたいじゃないかぁ!


ジジも照れくさそうにしていた。


取り敢えずみんなも予定が決まったので、数日中にエクス群島を出発することにしたのだった。




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