第23話 膝枕貯金!?

ドラゴンをテイムできたことはゲーマーとして考えると嬉しいことだ。しかし、相手がドラ美ちゃんで人化スキルできるリディアだと考えると微妙である。


前世だと妹はもう少ししっかりしていたと思うんだけどなぁ~。


くだらないことを考えながら、ドラ美ちゃんを見ると。すでに怯えるような表情はなく、ドラゴンだがシルに近い視線を感じた。


尻尾を振りそうだが、ドラゴンの姿でそれは止めてくれよ!


『あらあら、やってくれたわねぇ~。これでリディアは身も心もテンマに捧げることになるのねぇ~』


ハル衛門は呆れたような感じで不穏な事を言い出した。しかし、他のみんなは何が起こっているのかよく分かっていないようだ。


それよりも、俺はドラ美ちゃんの後ろで燃え盛る森の方が気になる。先程から続々とホーンラビットが森から逃げてくるのだ。


いつの間にこんなにホーンラビットが増えたんだ!


驚いている暇はない、ジジやアンナも心配して『どこでも自宅』から出てきて、燃え盛る森とドラ美ちゃんの姿に驚いている。


俺はフライで飛び上がると、森の上空から水魔法で雨のように水を撒いていく。火勢の強いところは多めに水を撒いていく。結局1時間以上も消火活動に掛かってしまった。


戻ってくるとピョン吉がホーンラビットを川の反対の森に誘導している。たぶんここにいるホーンラビットのボスはピョン吉なんだろう。


それより気になったのが、リディアに戻ったドラ美ちゃんが毛布を体に巻き付けているのだけど、毛布の下に見える足が生足なことだ。


くっ、ドラゴンに欲情するのはさすがに……。


「ご主人さまぁーーー!」


何故かリディアが嬉しそうに俺をご主人様呼びする。


えっ、おおっ、くぅ~!


リディアが俺をご主人様呼びしながら、跳び上がって手を振った拍子に毛布がずり落ちた。しかし、驚く速さでアンナが間に入り込み、毛布を持ち上げてしまった。


も、毛布の下は裸! なんでぇ!?


僅かに見えた肩とか裸に見えた。残念ながらアンナにラッキースケベは阻まれてしまったが、間違いないと思う。


鈴形のチョーカーだけは無事のようだ。あれはサイズ調整が上手く機能したようだ。


「リディアお姉ちゃん、人の姿に戻ったら裸だったんだよぉ」


ピピが話してくれた。


おうふ、俺が必死に消火活動している間に、そんなおいしい場面を見逃すとは……!


「テンマ様、今後の為にも変身機能を鈴につけてください。それに服や装備の作製もお願いします。取り敢えず私の下着と服を彼女には着せておきます」


アンナがテキパキと指示して、リディアを『どこでも自宅』に連れていってしまった。


ア、アンナの下着を……。


思わずイケない想像をしそうになったが、ピピがジッと俺の顔を見ていたので、誤魔化すように片付けをして、俺も『どこでも自宅』に帰るのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



今日はもう移動するのは止めることにした。色々なことがあり過ぎて疲れたのと、考えを整理したかったのだ。


「本当にリディアさんはドラゴンだったんですね。私はドラゴンを初めてみましたが、あれを剣で殴り倒すテンマ様は、やはりとんでもありませんなぁ」


俺はシルモフしながらバルドーさんの呟きを聞いていない振りをする。


しかし、リディアの変わりようには驚いた。食べ物がらみで多少は俺を認めている雰囲気はあったが、好かれるとか懐くとかの雰囲気は全くなかったと思う。それがテイムしてからは、まるっきり俺への態度が変わった感じだ。


テイムすると感情まで変化するのか?


俺は特に変わった感じはしないが、テイムされた側は変わるのかなぁ。


ピョン子はピピに懐いているのは間違いないが、ピョン吉はドロテアさんには懐いてはいなかったと思う。アンナの従魔になってからはよく知らない。


それにアンナは眷属になったけど、最初は嫌われていたからなぁ。眷属と従魔では違いがあるのだろうか?


「テンマ様、リディアの着替えが終わりました」


アンナがリディアを連れて応接室に入ってきた。リディアは恥ずかしそうにモジモジしながら、俺を見ている。


おおっ、悪くない! いや、凄くいい!


リディアは前に俺の作ったメイド服をアンナに着せられたようだ。スタイルは良いと思っていたが、想像以上だった。俺っのイメージが強く、元々がドラゴンだからそれほど気にしていなかったせいだろう。


ア、アンナの上をいくなぁ。


テンマ的バストチェックでは『ジジ(C)<アンナ(D)<リディア(E)<ドロテア(F)<マリア(X)』となる。マリアさんは規格外である。


「ご主人様、変じゃありませんか?」


俺っはどこへいったぁーーー!


やはり従魔になると性格まで変わるのか!?


「へ、変じゃないよ……」


精神年齢33歳の童貞男では、気の利いた言葉など掛けられるわけがない。俺はそう答えると誤魔化すようにシルモフする。


「ご主人様、お、俺もシルちゃんと同じ従魔だから、同じようにして欲しい……」


なんですとぉーーー!


俺っは残っていたが、シルと同じですとぉ!


それはドラポヨをすることになるのかぁーーー!


「それはダメです! あのような行為はモフモフのシルちゃんだから許されるのです。その姿なら膝枕しか許されていません!」


あのぉ、アンナさん、それは違うから……。


精神年齢33歳の童貞男としては、膝枕以上はラッキースケベでもないかぎり、できないだけですぅ。


心の中で叫びながら、血の涙が流れている気分になる。


「だ、だったら膝枕を!」


「ダメです! 膝枕をするには様々な試練があります。軽々しくテンマ様に要求してはなりません!」


いやいや、そんな試練はありませんよぉ。


アンナが変な膝枕を要求してくるから、条件をつけただけだからぁ。


「私も膝枕をしてみたいですなぁ」


バルドーさんまで参戦しないでぇーーー!



   ◇   ◇   ◇   ◇



あれから俺は生産工房に籠ってリディアの服や装備を作製した。途中でアンナが新たな下着のデザインを持ってきたので、それも作成する。


アンナにリディアの面倒を頼んだ。さすがにドラゴンに発情するのは抵抗があるし、色々と暴走されたら大変だからだ。


「お任せください。たかが2千歳程度の小娘ぐらい、テンマ様のご迷惑を掛けないように教育します!」


アンナから見ると2千歳は小娘なのね……。


最近はハル衛門のことで、ジジの負担が増えていたから、リディアのことはアンナに任せることにした。


翌日は朝から旅を再開する。


馬車に乗って移動を始めると、リディアが御者台に座ろうとしてアンナに叱られていた。


「あなたの役割は魔物を討伐する事です。頑張り次第で膝枕貯金の口座を開けるように私がテンマ様に頼んであげます。頑張ってきなさい!」


「はい!」


ひ、膝枕貯金なんて聞いてないぉ~!


それでもリディアは嬉しそうにシルと競うように魔物を討伐している。


「私の膝枕貯金はそろそろ利息の支払い時期が迫っていますよ」


アンナさんが耳元で呟いて馬車の中に入っていく。


貯金じゃなくてサラ金じゃないのぉ~!



   ◇   ◇   ◇   ◇



昼前には国境と言う名の川を渡る。特に検問や兵士もいなかった。


夕方になるまでに余裕でホレック公国側の国境の村に到着する。そして村の入口ではしっかりした検問があった。ここが実質的な国の検問になっているのだろう。


俺は商業ギルドのカードを出した。実は冒険者だけで旅をするよりも、商人として旅をした方が怪しくないとバルドーさんに言われて決めたことだ。


冒険者がジジやピピだけでなくアンナを連れているのは不自然だし、バルドーさんは有名すぎるので商人の執事としてホレック公国に入ることにしたのだ。


俺は大きな商会の3男で、商人として修行の旅だという設定にした。


検問では親の七光りだと思われたのか、馬鹿にされたような表情で笑われた。しかし、護衛にA級冒険者のリディアが居ると分かると驚かれてしまった。


う~ん、A級冒険者を専属護衛に雇うのは、普通ではないよねぇ。それもメイドも連れての旅となると猶更だ。


どんな修行の旅やねん!


それでも特に問題もなく村に入ることができた。こちらの国境の村も町規模の大きさはある。しかし、こちらも雰囲気は暗い感じがする。

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