宇宙

バブみ道日丿宮組

お題:明日の宇宙 制限時間:15分

宇宙

 星を捨てる気分を表してくれと言われれば、『どうでもいい』と僕は答えるだろう。それは当然だ。暮らしてるのは星を感じさせない地下都市。自然というものは一切ない機械によって覆われたエリアだ。

 だからこそ、シャトル機の窓から見える大地は初めて見る自然だった。人工的に表現されておらず、ありのままの姿。それをみれば捨てる理由はわからなくもない。

 

 ーー星は赤かった。

 

 海と呼ばれる青色の水源はなく乾いた大地が続いてる。そして元々ある大地は赤い液体が蠢いてる。手渡された高倍率スコープの倍率を絞るとはっきりとその液体ーーマグマがみえた。

 これが僕らが星を捨てなきゃならない理由だ。

 人間が資源という資源を取り尽くし、地下資源までもを食らい付くした結果、星の生命を縮めた。

「……ひどいな」

 ぽつりと本音がもれた。

 その声は伝播するようにシャトル機の中で広がった。


 ーー人間はひどい、使うだけ使って捨てるならどうして生まれてきたんだ。


 泣き声までもが届くようになり、このシャトル機のリーダーがなだめ始める。

『私たちは生まれた時点でもう死んだ星と隣合わせだった。だから……私たちが直接悪いわけじゃない』

 そんな人任せな言い訳を口にするリーダーの横顔はとても悲しそうだった。シャトル機に乗ってるのは15歳未満の子ども。大人は上級エンジニアと呼ばれる存在が数人だけで他はいない。

 そう……他のものはまだこの荒れ果てた星の大地に足をつけてる。自らを犠牲にして僕らを宇宙へと送り届けてくれた。そして自分たちを贄として捧げたのだ。

『わたしたちのせいで星を破壊することになって申し訳ございません』と。

「……」

 勝手なことを勝手にいう。

 まさしく人間とは自由だ。だからこそ、星を大切にしない。

 新しく見つかった星ではこんなことにならないでほしい。いや……この星にまた戻ってくるかもわからない。

『見て』とリーダーが窓の外を指差す。そこにはシャトル機から発射された数多くのミサイルが星へと向かってくのが見えた。

 それが僕らと星の最後であった。

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宇宙 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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