組織の上

バブみ道日丿宮組

お題:傷だらけの弔い 制限時間:15分

組織の上

 仲間が倒れた時、僕は側にいなかった。

 もし、僕が側にいれば彼女は死ななかった。そう団長に意見すると、僕は殴られて部屋に軟禁されることになった。

「……」

 団長いわく『疲れが溜まってるからそんなことがいえる』とのことだ。そして『女性らしさも少しは持て』とも言われた。

 そういうこともあってか、用意された部屋には女物の服しかなかった。

「……こんなのきれるわけないじゃないか」

 と、文句をいったところで着れる服はないので着るしかない。

 おそらく肌着なのだろうけど……透けてる。向こうの景色まで見えるのは服としていらないんじゃないか? 着てみてもなんか感触が悪い。

 普段着てる数百円しかしない肌着のがまだ安心できる。

 誰かに見せるようなのかと少し考えてみたけど、話せる相手もいないのでスルーして次を着込む。

「……」

 これは団長の趣味なのだろうかと、クローゼットの中を疑いながらベッドの上へ一つ一つ出してくと、一種のコスプレ収集家のような状態になった。

 巫女服、チャイナ服、ブルマ、女子制服、スチュワーデス服、ナース服、女医服などなど、よくもこれだけのものを用意したものだとある種感心したところで……。

「肌着が心もとないし」

 ブルマの上に制服を着ることにした。

 これなら普段着てる組織の服に近い。違うとすれば、スカートなのと胸を強調したデザインなくらい。

「はぁ……」

 服が散らかるベッドの上に倒れて自分がいったことを再確認してみても……間違いはない。僕がいれば助かったのは間違いない。事実は変えようがないけれど、僕を遠方に配置した団長の腕に違和感がある。

 僕が向かわされたのは警備する必要もない平和な土地。彼女がいたのは毎日のようにテロ行為が起こり、傷が増える都市だ。

 組織の中でトップ10に入る実力のある僕がそこにいないで、トップ100にも入れない彼女がそこにいる。これはもう殺戮してくださいと敵に要求してるようなものだ。だが彼らも自分たちの権利が剥奪されたから行動してるだけで完全な悪ではない。

 組織の上にいる見えない人間がすべての悪である。

 それを倒すために潜り込んだというのに……。仲間はもう誰も残ってない。最後まで生き残ってた彼女もいってしまった。

 そんな世界に僕一人生き残ってなんだっていうんだ。

 いったい誰のために悪を倒すというのだろう。

「……はぁ」

 ベッドの上でごろりと動くと、嫌な空気がふとももを触った。

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組織の上 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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