バブみ道日丿宮組

お題:昨日食べた瞳 制限時間:15分

 今まで食べたものを記憶するということは不可能である。普通に考えて物心がつく前に食べたものを思い出せというのは酷というものだ。

 まぁ……だからといって、記憶に無いものを料理として出されるのも困る。昔食べてたと言われてもこんなグロいものをほいほいと口に入れてたなんていう記憶を持ちたくない。いやないでほしい。

 だが、これは既に口にしてる。記憶に新しいものだ。

「ねぇ……これ本当に食べなきゃいけないの……?」

 哀願するように料理人に尋ねれば、

「昨日も食べてたよね?」

 にっこりスマイルを返された。

 料理人である彼女が言ってる意味はわかるし、正しい。昨日食べたものを今日出したとしてもおかしくはない。なんならお弁当におかずとして入れられることすらあるだろう。

 しかしーーただ、ただ……料理として出されてるものが問題だ。

 

 ーー瞳。


 それもよく見たことのある瞳を油であげたもの。

 黒目と白目に分かれてる動物は人間しかいない。人間は表情でコミュニケーションをとる動物であるためにそうなってる。

「大丈夫、スーパーで売ってたのだから問題ないよ」

 自信満々な彼女は自分の分の瞳を口に入れてく。

 凄く美味しそうな顔をされるとこれは美味しいものなんだと錯覚してしまう。

「……ん」

 彼女のジト目から逃げれるのはできず、それを箸でつかみ口へと運ぶ。なんてことない魚の目玉だって食べるんだ。人間かもしれない瞳も同じだ。

 彼女が料理して多少なりともそれらしさをなくしてくれてるはずだ。

「……ごちそうさまでした」


 そうして僕は朝を迎えた。

 これが僕が食べたものを記憶するのが不可能と考えた結果だ。彼女の作る料理を食べると、僕はベッドで朝を必ず迎える。その時、その場所で何が起こったのか断片的にしか残ってない。

「おはよ」

 隣には眠たそうにする彼女の横顔。

「おはよう」

「昨日は早かったね」

「そうかもね」

 寝たのか、あるいは食べた時間なのかはわからない。

 ただ僕は彼女を傷つける選択肢はしたくない。

 たとえ記憶に残らなくても、選択したという結果は残るから……。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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