思うこと
バブみ道日丿宮組
お題:小説家の黒板 制限時間:15分
思うこと
人にはそれぞれ名刺のようなものがある。
それらは名前とするものや、職業とするものもある。
つまりは人によって違うということ。
私の場合、小説家という職業が名刺。
小説家としていろんな人に会い、小説がたくさんの人に読まれ、翻訳本が知らない土地に飛んだ。
電車の中で、名前が出るだけで心がぽかぽかといつも温まった。
そんな私は大学の臨時講師として講義を受け持つことになり、今それが始まった。
学生にいったい何を伝えればいいだろうか。
あの作品の作者が私みたいなひ弱な人間と知って、幻滅されないだろうか、読むのをやめてしまうだろうか。いろんなことが頭を巡る。
でも、不快じゃない。綺羅びやかな優しい光が巡った。
「はじめまして」
最初はそう、挨拶だ。挨拶は基本中の基本。
どんな有名小説家さんであっても、挨拶だけは皆同じ共通言語。
「日常を非日常にすること」
黒板に大きく文字を書いた。
ざわざわと教室内が騒がしくなる。
当然だ。
私が書いてる作品には非日常ものなんてない。どれもが日常を描いた作品。それなのに、日常を非日常にするとはいったいどういうことなのか。
「生きるということは、非日常です。みなさんが生きてる限りそれはもはやファンタジーです。例えば、トイレでトイレットペーパーがなくなった時、いろんな知恵を使って変わりになるものを探したり、あるいは外から回収することを考えたりします」
笑い声があがる。
「すなわち冒険です。トイレットペーパーを探す旅にみなさんは出るのです。ティッシュペーパーというチートアイテムを持ってる人は一瞬で解決することができるでしょうし、拭かないという勇者もびっくりな解答を出す冒険者も出てくるでしょう」
けれど、
「やってることは同じです。みんな同じ冒険をするのです。非日常は案外近くに存在してるものなのです」
小説家はそれを文字にできる能力者。磨けば、誰にでもできる名刺力。
「今はネット社会です。色々なものを武器屋、道具屋のように、誰にでも提供できるようになりました。いらないという人はいなくなったのです」
もちろん、無名となれば、人が近寄ることは少ないかもしれない。
「誰だって最初は無名の冒険者です。色々なダンジョン、クエストをクリアして、名前をあげてくのです」
だから、非日常。
「みなさんも冒険に出ましょう」
思うこと バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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