雪の日(ガールミーツガール1)
日向 諒
第1話
これは、寒い寒い北の街の話。
少女は、家の外に立っていました。雪の降る日だったので、その赤いセーターは、まるで雪の中に置かれたリンゴのように見えました。
少女の手も、むきだしの膝も、寒さで赤く赤くなっていました。
もちろん、少女の頬も赤かったのです。ただ、その赤さは寒さのせいだけではなくて、涙がなんども流れたせいだったかも知れません。
彼女は、薄い扉に耳を当てて、家のなかの物音に耳をすませます。しばらくしてそうしてから、彼女はそっと扉を離れました。二階建ての古くさびれたアパートの建つ草地を、大きすぎる靴を引きずりながら横切りました。その足跡は、後から後から降る雪が覆い隠していきます。
夕暮れも間近な雪が降る日に、小さな町の、それも町はずれには、誰も歩いていません。雪がどんどん降って、雪のヴェールが幾枚も幾枚も世界をおおっていくようでした。
その日、その少女の姿を見たものは誰もいませんでした。
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