Recollection-27 「神成作戦」
その異変に最初に気付いたのは、黒髪に黒い瞳の無口な男、オスクロ・ルークスだった。
北側の関所でもう1人と見張りをしていた時、東側から
再度、東側に神経を集中して耳を向ける。
再度音がした。
それは、重い物で水の入った物を殴る様な、、と同時に、金属同士が擦れたような、、。
明らかに普段耳にしない「異音」。
パン!
オスクロは隣でうつらうつらとしていた同僚の右肩を強く平手で殴打した。
「んん⁉︎なんだよオス、、!」
オスクロは彼の口に右手をあて、左手の人差し指だけ立てて自分の口に当てる。
次に彼は城の方を力強く指差した。
「、、、!、、何かあったんだな⁉︎ あるんだな⁉︎」
彼がそう言うと、オスクロは頷き、左腰に据えてある剣を抜いた。
「!、、わかった!直ぐに報告してくる。オスクロ、お前は強い。が、無茶はするなよ、皆が来るまで、、、死ぬなよ!」
オスクロは頷き男を走らせた。と同時に2本の松明の火を消し、足元にある
ガガァン! ガガァン! ガガァン!、、、
無口な男は、自分の声の替わりに鐘を鳴らし近隣の関所に「緊急事態」連絡をする。
その鐘が鳴り響くと、国境に建ててある関所の松明の明かりが消えていく。
(!!、、この鐘は!)
鐘が鳴り響いた時、城内の巡回をしていた翡翠色の髪に飴色の瞳で隻眼の男、フォエナ・ペカトム・エトナは直ぐに高台に行き、松明の灯りを確認。
オスクロの行動は、城の高さから見れば何処の関所の松明が消え、何処の松明が灯っているかで敵の侵入経路を知らせる為だった。
、、、北東の4箇所!
「敵襲だ! 直ちに装備を整えろ! 絶対に城内に敵を侵入させるな! 絶対にだ!」
地底から響く様な低い掠れた声を張り上げ、フォエナは戦闘準備に取り掛かる。
「んん、、何?、、どしたの?」
既に自室で眠っていたシーヤの元に数人が駆け寄る足音がする。
部屋の鍵を開けて入って来たのは四神であった。
「シーヤ様、落ち着いて聞いて下さい。只今此方に不届きなる者共が向かっております。どうか我らと共に安全な場所へ移動しましょう、ね?」
兜に虎の様な、否、「白虎」が彫られているエトナの民のサイが優しくシーヤに問いかける。
「!、、わかりました。準備して頂戴。」
普段はふざけるシーヤも、サイの優しいながら只ならぬ雰囲気を感じ取り、素直にサイの言う事を聞く。それは全幅の信頼を寄せているからだ。
兜に龍の様な、否、「青龍」が彫られているエトナの民のユウが、シーヤに羽織り物をかける。
「お風邪など召しませぬ様、夜は寒いので。」
「ありがとう。」
シーヤはそう言うと、自分の部屋の壁に掛けられていた短剣に手を伸ばす。
「シーヤ様、その様な物は必要ありませぬ。今は我々があなた様の矛であり盾であります。どうかご安心を。」
兜に蛇と亀の様な、否、「玄武」が彫られたエトナの民のゼンがシーヤの行動を優しく制した。
「そうね。では命令させて頂きます。私の父と私も含め、この国の民を護って頂戴、、。お願いします。」
王女様は12歳ながら、ありったけの知識を総動員し簡潔に四神に懇願した。
「承知いたしました。王様と王女様を安全な場所へお連れし次第、時をみて我々も出向かせて頂きます。」
兜に鷹の様な、否、「朱雀」が彫られているエトナの民のゴウがそう言うと、彼女を中心に前後左右に展開し安全な場所へ向かう。
それは城内中心部から「地下」へと降りた場所だった。
シニスタラム国側国境にて総指揮を執るヤクトは、高場から相手側の関所の松明が消えていくのを見ていた。
「、、、敵も対応が早かったね。ゴメス、このまま第一陣を送り込むよ。いいね?」
ヤクトは念の為、ゴメスに確認を取る。
「、、、この『
(我々、、、ね。)
「ゴメス、その言質、
ヤクトはそう言うと、手に持っていた松明をに火を灯し、片目で数秒間睨みつけた後、それを空に向かって投げた。
と同時に、凡そ400の愚集がコルメウム城目掛けて前進する。
ゴメスは闇をいい事に、少々歯を食いしばった。
(、、アギの老害の下では我々は幸せになど到底なれぬ。大きな目標を掲げて動かなければ、我々は小さな世界も変えられぬのだ、、。)
戦闘開始まで、あと20分。
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