Recollection-26 「賽を投げる者」
コーポリス国より北東の国境にあった4カ所の関所にいた見張り各2名ずつ計8名が夜中に何者かにより命を絶たれる。
刺創・切創により失血死、或いは急所を刃物で攻撃され絶命していた。
ある死亡者は戦斧であろうか、割創により頭蓋が割れて脳と脳漿が吹き出し双眸も飛び出しており、その有様は凄惨を極める。
しかし時間は真夜中の為、その鮮血は闇に飲まれ、無慈悲な攻撃をした者達の罪悪感を紛らわせる。
そしてその全ての殺害方法は一撃だった。
眼帯をした「彼等」は動く。
時は少し遡る。
10月17日。時間は現代で言う所の23時。
シニスタラム国の軍隊、およそ1,600名からなる兵隊達は、子夜を以てコーポリス国コルメウム城への侵攻開始の命令を受けていた。
作戦概要は4つの部隊による波状攻撃。1部隊約100名、計400名にて北東より進行。敵の数や戦力により2:2部隊や1:3部隊とし戦況を確認、先の部隊から情報を得た二次部隊が戦況状況から追撃。計4回の攻撃・進行を以て『エトナの秘宝』の略奪とコルメウム城陥落が最終目標となる。
シニスタラム国も総人口7,500人と多くはないが、軍事力、特に兵力の底上げに尽力した。
国独自の戦闘技術「クァラーテ」の動きを取り入れ、剣・槍・戦斧等による攻撃にて相手を戦闘不能、或いは殺傷する事を前提に訓練を行なった。
この作戦を立てた策士、金髪の長い髪を首元で結った、灰色の瞳の美しい男、ヤクト・シュナイド。
彼自身の諜報活動や「ある男」からの情報提供を基に策を練った。
(コルメウムの兵隊は凡そ500、、、。数では勝っている。しかし向こうの兵力が未知数だね。先ずは此方の兵、約400をぶつけ相手の力量を測ろうか。)
敵兵凡そ500に対し、自軍は凡そ1,600。
この数字から分かる通り、決して大規模な戦争ではない。その時代にはよくあった領土の奪い合い、小競り合いの延長の様なものである。
それでも約3倍の兵を投入するのには、確実に敵を殲滅し、目的の遂行と達成の為には手段を選ばない強い意志が感じ取れる。
この時代に国際協定などある筈もなく、まるでイナゴの様に攻め、殺し、奪い、植民地化し、己の私欲を満たす。
それが『戦争』という、愚かな行為なのだ。
クフフと嫌な笑い方をする男が、子夜が近付いた頃に最先行部隊『
闇踠は一部隊6人編成で全員が眼帯をしている。
「お前達、コルメウム北東の関所4箇所を同時に落とし沈黙させる。関所を占領したら各隊1名は報告をしに戻る様に。いいね?」
灰色の瞳の嫌な笑みをした男は続ける。
「その近隣の関所の兵は音や異変に気付き報告に向かう筈だよ。その際に更にその手薄な関所に展開して占領する。向こうが報告を済ませた頃には此方の兵が攻めている。あの木々に囲まれた場所ではお互いに広く展開して戦う事は難しい、、。ならば一点突破の物量攻撃でいくよ。」
「はっ!ヤクト様!」
彼等は普通よりもかなり小さいランタンを各隊1つずつ持っていく。今回の武器は各々得意な物を選んだ。
(後は四神、、。彼等は厄介極まりない相手の筈。『
その場でヤクトの事を見ていた白髪混じりの口髭で恰幅の良い中年男はふふっと笑いながら口を開く。
「流石だなヤクトよ。夜襲に局地戦では奴等にも隙ができよう。『エトナの秘宝』が我々の手に入るのも時間の問題だな。」
エリーナ・ゴメスは腕を組み壁にもたれ掛かりながら続ける。
「我々が世界の覇権を手にし、『この世界の神と成る』のだ。その時は近い、、。楽しみだな。」
「クフフ、ゴメス、この『
2人は黄金色の甲冑に身を包み、片目には眼帯をし、
美しい満点の星空に悪意に満ちた笑い声が響いた。
10月18日未明。
「エトナ祭」前日。
『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます