Recollection-8 「共鳴」

「そっか、アトレイタス先生が教えてくれて、イェット君の家が分かったんですね!」


「そうなの!今頃父様に怒られてるよ、絶対!」


「シーヤちゃんヒドイですね!」


「この間、座学の時に居眠りしたらほっぺをぎゅうーってされたから、お返し!」


「ですね!」


「ですよぅ!」


あははと、2人の笑い声がしたところから、僕の目は覚め始めた。


外は雨、遊びに行くには雨脚は強い。



「ん、、んぅ、、、。」


「あ、イェット君、気がつきましたよ!」


「マリーのあの足技、凄かったね!あんなの見た事ないよ !アトレイタスも驚くと思うよ。」


「そ、そうでしょうか?どうか内緒にして下さい、、!」


「えー、格好いいのに! でもマリーが困るなら言わないよ絶対!」


「シーヤちゃんん、、!」


マリーはシーヤを抱きしめた。


「イタタタいたた痛い痛い痛いマリー!ヤダちから凄い!」


「キャアァ! シーヤちゃんすみませんんっ!」


マリーは力をほぼ抜いてシーヤを抱きしめた。


シーヤもマリーの胸に顔を埋め抱きしめ返した。



「、、母様と同じ香り。」


表情はわからないが、少し寂しげな声だ。


イェットは脳震盪から回復したてだった為、深く考えずに聞いてしまった。


「何も言わず出てきちゃったんだろ?お母さん心配してるんじゃないか?」


シーヤは顔を埋めたまま


「母様は私が4歳の時に死んじゃった。」


(⁉︎ しまった、、。)


思わずマリーの方を見ると、彼女は目を閉じて首を左右に振った。


、、、そうか!


だから6年前、僕の翡翠色の髪を見て母さんと同じ色って、、。


!!


て、ことは、、。



「私の母様は唯1人、唯一の女性のエトナの民だったんだ。」


そう、唯1人の女性エトナの民、「イリヤ・ワイトキング・エトナ」がその人だ。


(そうか、、そうだったのか。)


「あの時、僕だけがエトナの民と分かる見た目だったからね。」


言葉が上手く見つからず、つい自分の話をしてしまう。今はもっとシーヤに寄り添わなくては。



「、、、うん。でも、イェットだけじゃなかったよ?」


「えっ⁉︎ 僕の記憶では他に、、。」


「アイツら」





、、、!!!!




「コルメウムの四神?」


「正解〜っ!」


そうか、、。6年前も、1ヶ月前も、ずっと顔の見えない兜を装備してたから気づかなかった。


「アイツら、コルメウムの四神とか言って威張ってるけど、実はさ、、」


コンコンッ


ノックだ。


母さん間が悪いよ、、。



「シーヤちゃん、マリーちゃん、ごめんねぇー、羊のお乳とペイストリしかなくて、、。」


「私、おばさまの作るペイストリ大好きです!」


マリーは空五倍子うつぶし色の瞳をこれでもかと輝かせた。


「私もペイストリ大好き!ありがとうおばさん!」


シーヤもこういうの食べるんだ、、意外だ。


普段どんなものを食べてるのか聞こうとしたが、止めた。無粋だと感じたからだ。  


彼女達が食べているペイストリとは、海の向こうから来たお菓子だ。バター風味の甘い、サクサクとした食感。


実は僕は海を見た事ないんだよな。小さい頃から父さんと母さんにどれだけお願いしても連れて行ってくれなかった。


父さんには、「エトナの民は、コルメウム城から離れては駄目なんだよ。」と言われたが、未だに納得出来ない。


そんな、余計な事を考えていると、ペイストリに舌鼓を打つマリーに、母さんが1つお願いをした。



「マリーちゃん、久しぶりにあの歌を歌ってくれないかしらー?」


「えぇっ⁉︎今ですか?うぅーん、、。」


マリーは昔から歌が上手く、祭事でも盛り上げる為に音楽にのせて良く歌う事に従事している。僕も彼女の歌が大好きだ。



「マリー、僕もあの歌聴きたい。」


僕も素直に聴きたかった。この時代に、娯楽と言えば音楽や歌は外せない。



「私も聴いてみたい!マリーお願い!ね?」


シーヤまでお願いし始めた。こうなるとマリーも引くに引けない。



「、、分かりました!シーヤちゃんに会えた事に、おばさまのペイストリのお返しに、、、イェット君のお願いだから歌います!」


おぉっ!と、皆が笑顔で湧く。


マリーは立ち上がり、胸に右手を添えて、深呼吸の後、その美しい声を皆に届けた。





「 You left us behind.

You left all needs you had.


to be alone.


That wasn't hoped but

needed to do.


I tryed to remember your face in deep sleep in the completely darkness.


'cause It can only give me so brilliant mercy and calm me down.


If I could be with you,

I'd never let you go. then, take off this insane world we made.


but I really know my wish never comes true.


so, I want to be the moon with dimlight to be by you.


You're the sun gives them lights as their sighpost called love that I've never been given.


but I don't care if I could or not.


I just see you from far.

I'm just good.


Come what may. 」





、、凄いよマリー。  


トト家に伝わるこの歌。


どこの国の言葉かはわからない。なのにマリーのこの歌は、聴く者全てを笑顔にする。




しかし、この日は違った。




「ちょ、ちょっと、どうしたの2人とも⁉︎」


母さんが心配そうに彼女達に問い掛けた。



「、、、え?」


2人は母さんが問いかけるまで気付いていなかった。





2人は、涙を流していた。


マリーは歌いながら。


シーヤは歌を聴きながら。


僕もそれを見て戸惑った。


泣きながら歌うマリーなんて見た事はない。


シーヤも何故泣いているのか分からなかった。





この時、シーヤを迎えに来ていた長く美しい翡翠色の髪に山吹やまぶき色の瞳をした長身の男、アトレイタス・サイガ・エトナは外で雨に打たれながら歌が終わるまで壁にもたれ掛かり腕を組んで待ってくれていた。


雨の所為なのか、或いは、、、


その端正な顔立ちの彼の頬にも涙が流れている様に見えた。


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