落とし穴外伝:2024年明けスペシャル 大人のお年玉?

2024年明けスペシャル 大人のお年玉?



Side:ユキ



「気が付けば、もう5日か」

「正月も終わりですねー」

「いやはや、年末年始はあわただしく過ぎていくな」

「そうですね~」


そんなことを言いながら、日本人組は炬燵を囲んでお茶を啜る。

いやー、熱いお茶が美味い。この場合は逆に饅頭欲しいというべきか?

そんなくだらないことを考えていると……。


「結局、誰もSHINOBIクリアできなかったですね」

「最後のステージの一気に登るというのはどうしてもきつかったなー」

「あはは、アレ魔法、魔術の治療が無ければ今頃ベッドの中ですよねー」


そう、3人が言うように3日に行われたSHINOBIという狂気のアスレチック攻略ゲームは勝者なしとなってしまった。

とはいえ、それでは流石にルナとしては参加させて褒美なしというのもあれなので、そのアスレチックの一年提供と、攻略できた場所に応じてポイントを配布し、色々なアイテムと交換できる権利をプレゼントした。

まあ、所謂そこほれワンワンでのDP交換システムのようなものだ。

とはいえ、じゃあ最初でつまずいたジェシカとか、運動が苦手な子供たちはどうなったかというと、最低限のポイントを付与されて、十分に色々選べるようにしてくれたのは俺としてもありがたかった。

何もご褒美が無いっていうのは、頑張った子供たちには酷だしな。


「でも、意外とユキさんも俺も最終ステージまで行けましたよね」

「まあ、ルナが緩く作ってくれたしな。ステージも3つだけだったし、最終ステージ含めて。本場は三つあって、最後の3つ目は鬼だったしな」

「ああ、縁を指だけでつかんで移動する奴ですね。普通無理ですって」

「あれは見たが、攻略している人がいるのが、同じ人としてびっくりだな」

「ええ。人はどこまでも強くなれるんだなって思いますよ」


SHINOBIをやるにあたって、一応参加者は歴代の映像を見ていたが、流石に指だけで縁を掴んで移動しろとかは無理だと判断して第三ステージを無しにしようと抗議したわけだ。

ルナも流石にそれは無理だと思ったようで、第三ステージはなく、最終ステージとなったわけだ。


「おかげで、俺も第一ステージと第二ステージは突破できた。こっちに来てから鍛えられていたおかげだな」

「ですね。昔の学生だった頃だと絶対に無理でした。こっちに来てからそういう体はレベルというのがあっても鍛えられてたんだなーって思いました」

「それは私も感じたな。レベルによる基礎能力上昇は大きいが、魔力を排しても体の成長が無かったことにはならないようだな。つまり、基礎を鍛えるというのは無駄にならないわけだ」

「ええ。剣を振ったり、筋トレをしたりというのは、基礎の筋肉などが育っていれば育っているほどレベルが上がったときに基礎能力が上がる幅が大きいようですね」

「実地データが出来たというわけだ。まあ、完全に魔力を排してという環境はユキ君やルナ殿が用意しなければありえない環境なので、数はなかなか集まらないだろうが」


なんか、タイゾウさんはデータを取って魔力と身体能力の強化に関してのことを調べたいみたいになってるな。

とはいえ、魔力が無い環境と魔力がある環境下での差とか、本当に人を一から育てて観察しないといけないことだし、簡単にできることじゃない。


「ま、そこはいいとして、おかげで最終ステージに行けたわけですが、約20メートルの縄を35秒で登れとか、無理だったわけですよ」

「本場は40秒でしたっけ?」

「意外と距離が延びたり、タイムが縮んだりしているから正確なことはわからないけど、一応クリア者はいる。でも、俺とタイキ君はむりだった」

「ですねー。意外と地球人も常識をぶっ飛ばしているんだっていうのが分かります」


そんなことは言いつつも、制覇者たちは基本的にあのSHINOBIを攻略するためだけに鍛えているから納得はできるんだけど。


「それで、ユキさんはルナさんからのポイントは何に使うんですか?」

「ポイントなー。正直あまり見てない」


俺は先ほどの発言のとおり最終ステージまでたどり着いたということで、ポイントは多い。

つまり、選べるものも多いんだが……。


「ルナが上げると言われると警戒が先に立つんだよなー。タイゾウさんとソウタさんは何か選びましたか?」


そう、他の人たちはともかく、ルナが俺に無条件でというわけでもないが、ボーナスステージでくれるモノというのは正直信用がならない。


「あはは、ルナ殿も流石にそういうことはしない。と思いたいが童子切の件もあるからなー」

「話は聞きましたが、いやー、胃に悪い。妙なものは選ばないに限りますね。で、わたしが選んだのは此方の栄養ドリンクですね。ルナさんがもらったお神酒を分けたものだそうで、10本入り。私のようなアンデッドでも大丈夫らしいので、妻の分も合わせてともらいました」

「おっと、それなら私もだな。といっても面白みもないのだが、ソウタさんと同じだ。私もヒフィーさんがケガなどをした際に緊急に治せる秘薬、それも最上位のものがあるのであればありがたいからな。端数に関しては、お菓子とかだな」

「「なるほど」」


妥当すぎる選択だな。

とはいえ、内容もぶっ飛んではいる。

お神酒。

文字通り神にささげるお酒だが、こちらではただのお酒ではない。

此方の最高の秘薬エリクサーを超えるもので、病気などはもちろん、古傷はもちろん、欠損は当然で、生まれた時からの疾患も直してしまうものだ。

これを知った各国はマジで欲しいと躍起になった。

当然の話だ。

とはいえ、幸い一国に一升瓶を配るぐらいはあったので、そこまで騒ぎにならなかったが。

その超が付くほどのレアな秘薬を持っているのが、目の前に2人。

まあ、周りにばれるミスなどはしないとは思うが、世界にとってどれだけのモノが世に出現したのかというのがわかるだろう。

ばれれば国を滅ぼしてでも手に入れようとする人が出てくる可能性はある。


つまりは、厄災ネタというわけだ。

どれだけ人を救うモノだったとしても、争いの種になる可能性があるという話。


あと、お菓子に関しては、一般的な詰め合わせを山盛りなのでノーコメント。

子供たちはこのお菓子の詰め合わせが多い。

とはいえ、量が馬鹿にならないので嫁さんたちはどう制限するかと苦笑いしている。

あればあるだけ食べたくなるからな。


「さて、私たちの交換したモノは参考になったかな?」

「はい。ありがとうございます。まあ、下手なものはやめるべきですね。このMSとか」

「やっぱり、これ地雷ですよね~。整備セットとか書いてないですし、燃料のない機体とか渡されても動かせないし、整備もできないですからね」


タイキ君も同じ意見だったらしく、項目にあるモビル〇ーツは警戒していたようだ。

それにあれ核融合炉だしな。

手に入れてもどこに置くんだって話にもなる。

汚染間違いなしの爆弾なんだよなー。


「そうなると……まあ、これか?」


俺がそういってモニターの中の一覧を指さす。

それを覗いたタイキ君はというと。


「あ~、確かにこれが無難ですね。何がくるかはわかりませんけど、道具としての性能は皆無だし、価値については好きな人は好きでしょうけど、僕たちがほかの人に譲る意味もない。俺もこれですね」


俺の意見に同意して頷く。


「何がくるかはわからないが、必要ないと思うなら、分けてもいいだろうしな」

「ですね」


俺とタイキ君は頷く。

それを見たタイゾウさんとソウタさんは首をかしげて。


「何を頼むんだい?」

「そうですね。今の発言からは何を頼むか想像できません」


まあ、あれだけでは難しいだろう。

そして隠すつもりもないので。


「これですよ。プラモ福袋。これなら何が来ても俺たちにとってはいいモノでしょう。幸い、ポイントから20袋はいけますし、みんなで分けましょう」

「そして残りの時間はプラモづくりということで」

「なるほど。確かに、これなら妙な細工もない」

「そして、私たちも楽しめますね」


ということで、俺とタイキ君はさっそくプラモ福袋を注文する。

すると、いきなり部屋にそれなりに大きな福袋が山ほど現れる。

俺とタイキ君の分で46個。

いやー、思ったより多かった。

だが……。


「ワクワクしてきましたね」

「ああ、何が入っているか。俺も嫁さんたちのことを馬鹿にできないな」

「いいお年玉ですね」

「そう考えればいいお年玉だな。子供時代に戻ったみたいだ」


欲しかったプラモデルではないが、それが正月に手に入る。

昔は違うと腹も立ったが、今は違うことすら娯楽になる。

いや、妙なところで大人になったもんだ。


「パチモンとかあったらいいな」

「いいですね。レアですよ。レア」


そんなことを言いながら俺たちは福袋の開封に取り掛かるのであった。


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