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日下さんが香苗さんのことで悩むように、私だっていろいろと思うところはある。

考えて考えて、納得して、それでも現実を突きつけられるとめげそうになることもある。


でもそれは、人間なんだから仕方ないでしょう?

私だって完璧な人間じゃない。


それでも私は日下さんが好きなんだから、もうこれはどうしようもない。乗り越えていくしかないんだから。


私は改めて姿勢を正す。

そして小さく深呼吸をしてから、震えそうになる声で囁いた。


「暁さん、大好きです」


勇気を出して名前を読んでみたら、日下さんは持っていたグラスを落としそうになった。そしてそれを静かにテーブルへ置く。


流し目でこちらを見たかと思うと、ふいにグッと引き寄せられて軽く唇を奪われた。


「芽生、好きだよ」


唇が離れる瞬間、囁く声は私だけに聞こえるくらいの大きさで。


初めて“好き”と言われた喜びは涙となってこぼれ落ち、一瞬にして幸せな気持ちで満たされた。


私たちはここから始まるんだ。


そんな風に思わせてくれる甘く優しいキスだった。




【END】

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愛することを忘れた彼の不器用な愛し方 あさの紅茶 @himemon

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