085
ほんの少しだけ、本当に本当にほんの少しだけ期待したけど、やっぱり日下さんは追いかけてこなかった。
私を好きだから抱いてくれたんじゃない。
私の中にある香苗さんに似た部分、それを求めて日下さんは私を求めていた。
それでも私を見てくれるなら、と思っていた。
残念ながらその期待は打ち砕かれた。
悔しい。
それでも好きだと思ってしまうのが悔しい。
「何で好きなんだろう?」
声に出すと余計に虚しさが溢れてまた胸に熱いものが込み上げてくる。
この気持ちをひとりで抱えるには大きすぎる。だからといって誰かに言うこともできない。
「ううっ……」
以前も夜の街でひとり泣いたことがあった。
どうしようもなく押し寄せる感情は、涙となって頬を伝う。
「うわーん!」
下で複数車線が行き交う歩道橋の真ん中で、街の喧騒に紛れるように私は叫んだ。通りすがりの人に何と思われようが知ったことではない。そんなことよりも、今の自分の感情をどうにかすることで精一杯だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます