069
待ち合わせの駅のエスカレーターの横で私はソワソワとしていた。
好きな人を待っている時間というのはきっと普通より時間の流れが違うんだと思う。待てば待つほど、どんどん高まる気持ちが抑えられなくなる。ついさっきまで会っていたのに、ああ早く会いたいなんてウズウズしてしまうのだ。
ふいにぽんと肩を叩かれて私は笑顔で振り向いた。
「やっぱり芽生だった」
「……えっ?!」
そこには日下さんではなく元彼の匠馬が立っていて、私は驚きのあまり言葉を失った。
「元気だった?」
「あ、……うん」
「何か前より綺麗になったんじゃない?」
「そうかな?」
「うん、絶対綺麗になったよ。一瞬わからなかった」
「あ、えっと、匠馬も元気そうでよかったよ」
「俺?元気じゃないよ。芽生と別れてからさ、ずっと寂しくて。芽生俺の電話出てくれないし」
「あー、ごめんね。忙しくて」
「仕事ばかりしてると彼氏できないよ。俺がまた彼氏になってあげようか?」
「え、いや?」
匠馬はニヤニヤとしながら馴れ馴れしく私の肩を抱いた。そして耳元に口を寄せる。
「大丈夫だって、俺がいろいろ教えてあげるから」
いやらしく笑う匠馬に恐怖を覚え体が強ばる。不快感をあらわに振りほどこうと体を思い切り捻ってみたが、掴まれた肩は簡単にほどけなかった。
「やだ、離して!……きゃっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます