068

「……芽生、……そこまでしなくても」


いつまでも頭を床につけたままの私に、日下さんは若干引き気味になった。

私は情けなさすぎて自己嫌悪だ。


「うう、面目ないです」


「二日酔いになってない?」


「なってます」


「そっか、残念。食事でも行きたいなと思ったんだけど」


「え?やだ、行きます!お腹すいたと思ってたんです」


日下さんの言葉に慌ててガバッと顔を上げると、苦笑いの日下さんとバチっと目が合う。


「じゃあ俺も一旦帰るから、後でまた落ち合おうか」


ふ、と笑みを落とした日下さんはゆっくりと立ち上がると、あっさりと帰っていった。


何だか夢を見ているみたいだ。


頭からシャワーを浴びてぼんやりとした頭を起こす。夢見心地な気持ちがじわじわと実感を帯びていくようだ。


日下さんと食事だなんてまるでデートだよね。考えたとたんニヨニヨと顔が緩んでしまう。


すっきりした頭になると、よみがえる昨日の記憶があった。


──悪いけど俺は誰とも付き合う気はないから


わかってる。

浮かれないようにしなくちゃ。


私は改めて身を引き締める。

いろんな想いが渦巻くように頭の中をぐちゃぐちゃにするけれど、今は日下さんの近くにいられるだけでも嬉しいと思った。

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