054

翌日、俺は衝撃を受けることになる。


「急性骨髄性白血病でね、余命半年だって宣告されちゃった」


そう言いつつも、いつもみたいにニッコリ笑う香苗。俺は耳を疑った。


「……え、冗談だろ?」


「冗談でこんなこと言わないよ」


俺達は大学四年生になったばかりで就職活動真っ只中だ。つい先週だって、金木犀でチビチビと飲みながら、次は最終面接だ頑張ろうねと話したばかりだ。きちんと就職してお金を貯めて、これからも二人でずっと一緒にいたいねと語り合った。


なのに。


「だからね暁くん、私と別れてください」


香苗は何でもないように平気な顔をしている。動揺しているのは俺だけみたいだ。


「……そんなの嫌だ。俺は香苗の力になりたい」


振り絞って訴えたのに、香苗は首を横に振る。


「暁くんはさ、まだまだ未来があるんだから。好きなことをしなよ。好きな子見つけて幸せになって」


「嫌だ。何でそんなこと言うんだよ」


「……だって、仕方ないじゃない?」


「嫌だよ……」


香苗だけが納得していて俺の気持ちは宙にさ迷う。


香苗と別れるなんて嫌だ。


香苗は泣かないのに、俺だけが泣いた。

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