023
おかしいと思いながらも妙にほっとする自分もいて、打ち払うように頭をブンブンと振った。
「芽生はここによく来るの?」
「あ、はい。就活のときからお世話になっていて。ママにはいろいろ話を聞いてもらったりしています」
「ママは話しやすいよね」
「そうなんですよね、ついいろいろ愚痴ってしまって」
「ほんとにそうよぉ。お世話してるわ」
ママがピーチフィズを目の前に差し出しながら、ふんと鼻で笑った。
「芽生ちゃんはね、手のかかる子なのよ」
「ちょっと、ママ!」
「ま、そこが可愛いところでもあるわよねぇ」
言いたい放題言うだけ言って、ママは別のお客さんの元へ去っていった。辱しめられた気がして恥ずかしさが込み上げてくる。
「ねえ、ママから俺のこと何か聞いてる?」
「いえ?何か、とは?」
「うん?」
もしかして結婚してるとか、そういう話のことを言っているのだろうか。それだったらまさに今聞きたいことなんだけど……。
日下さんは少し考える素振りをしてから、あっけらかんと言った。
「かっこいいよーとか」
予想外の答えに、私は目をぱちくりさせる。日下さんもそんな冗談めいたことを言うんだと思ったら一気に親近感がわいた。
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