共依存のススメ

一番星。

共依存


 僕の残りの命は、

 『5年前後』と聞かされた。


 大切なあなたと出会ったばかりなのに……。





 愛しいあなたを包み込み、そして癒すこと。

 毎日「いい一日だったね」と終われる様にすること。

 それらが僕の使命であるから。



 だが現実は受け入れ難いものである。

 何よりも苦しい結論がそこにはあった。



 そうなら決められたことを受け入れて、


 僕があなたを

 一日一日繰り返し支え続けようじゃないか。



 こう思うのは自然なことだったんだ。




 いま僕らは

 生活を共にしている。



 “この関係は、ーー本当に終わるのか”


 その時は

 僕が死ぬときだ……。

 


 無理なのはわかっている。


 だけど、今現在の

 この関係がなくならないで欲しい……。




 

 ーーそんな彼に大事にされている彼女とは誰だ。


 それはこの私だ。



 彼との出会いは“ネット”だった。


 彼はとても包容力がある。体も大きい。

 女からしたら悔しいけれど、色白でお肌もすべすべだ。



 日差しがキツい日夏の日。灼熱の太陽に負けず彼はいつも元気だ。


 ーー不思議だ。



 このような日は決まって彼は機嫌が良い。




 しかし雨が降る日は案の定元気がない。

 体調がすぐれない様に見えるけれど、症状を話さない……。


 そんななかでも

 『彼は私を元気にしてくれる』。


 これだけは出会ってからずっと変わらずで、本当に愛しい。



 私は仕事に行っても、

 早く帰りたくてたまらない。



 私が相手に対して求めていたことは、

 こういうことだ。


 “束縛をせず、

 全てを受け入れてくれる。

 癒してくれる”そんな心強い相手。

 まさに、今の彼だ。



 ーー太陽がよく照る朝、

 


 彼を引っ叩いてしまった。


 良かれと思ったんだ。

 でも違った。


 間違えた行動をした時、彼は彼の背中をさするのが嬉しいらしい。


 まるでほうきで汚れを落とす様に、優しく撫でた。

 何度も何度も

 繰り返し。



 春先になると彼は花粉症だから、外に出られない。


 今までの経験上、日光を浴びないことは彼の体の性質上良くないと思った。


 だから、太陽には程遠いけれど、

 ドライヤーを当てたりして遊んだ。



 彼の寝そべる上に私は寝転んだ。


 なんて心地がいいんだ。

 暖かくていい匂いがする。



 彼は目を閉じ、

 私は目を見開く。




 ーーこれが最高の時間と言わないで何という。






 湿気の多い梅雨時期のこと。

 

 彼がうなだれている。



 彼の背中に黒い斑点のような痕がでてきた。


 ーー僕は体が蝕まれているのがわかった。



 目にしたら見えない不安が本当になる。

 不安なことを口にすると不安になる様に。




 ーー残り五年の命のはずが、

 一年になるとは思いもしなかった。




 それから彼女は真顔で僕を縛った。



 来月、大型ゴミの日が7日らしい。

 僕が死ぬのはその日だ。




 黒カビに侵された僕のことも気にせず、


 彼女は次の相手を、

 ネットで注文した。


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共依存のススメ 一番星。 @popazki

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