モルモット君の簿記の魔導書

もるっさん

モルモット君の簿記の魔導書

剣と魔法の国。ファンタジーオアシス国、ボクはこの国で個人で八百屋をして暮らしているモルモット君です。

この国の動物たちは みんな野菜が大好き。


ピョンタ「やぁ モルモット君。ここの野菜は新鮮だから今日も買いに来たよ」


モルモット君「いらっしゃい ピョンタさん。うちの野菜は新鮮が一番にしているからね。でもピョンタさんは野菜を干してから食べるのが好きだから、うちの野菜じゃなくてもいいんじゃないかなぁ?」


ピョンタ「まあまあ 干し野菜にもこだわりがあるんだよ。ところで 株式会社スパイダーの横領事件は聞いたかい?やっぱり 死刑が決まったらしいよ。今日の夕方に刑が執行されるらしい。見にいくのかい?」


モルモット君「夕方は お客さんが来て忙しいから無理だな。 はい!毎度アリ」


ピョンタさんは野菜を受け取ると ピョンピョン跳ねながら去っていった。

それにしても 会社のお金を横領するって何だろう?

ボクもお店に並べてある野菜なら「食べたいなぁ~」ってヨダレが垂れちゃうことはあるけど、

お金を使いこもうとは思わないモルよ!死刑なんて こわいモル ブルブル・・


テディ「やあ 元気か?モルモット君! お前の店の野菜は相変わらず美味しそうだな ジュルゥ~」


兄のモルモット、テディ兄さんが訪ねてきた。

定期的に集まる家族会議があって ボクを迎えに来たみたいだ。

そうだ 今日はもうお店を閉めてしまおう。

兄さんにはちょっとだけ 待ってもらってお店の野菜をフロシキいっぱいに背負って店を出た。


モルモット君「お待たせ 兄さん」

テディ「お前 それはお店の野菜じゃないのか?大丈夫か?死刑になったりしないか?」

モルモット君「大丈夫モルよ だって うちは新鮮さが売りのお店だから売れ残りの野菜は廃棄されるモル」


数分歩いて モルモット家族の家までもう一息というところで道端にお婆さんがうずくまっていた。


モルモット君「どうしたモルか?」


声をかけたけどお婆さんは ローブを深くかぶったままで顔をあげてくれなかった。

「ぐぅ~ ぐぅ~」


モルモット君「ふふふ。お婆さん お腹が空いていたんだね。モルの野菜を食べるといいモルよ」


フロシキをひょいと下ろして 野菜をお婆さんの前に置くと 再びひょいっとフロシキをかついて実家を目指そうとした。


おばあさん「お待ちなさい。この野菜、お店で売っていた野菜だねぇ? そうか、そうか。じゃぁ お礼にこの魔導書をあげましょう ひっひひ」


不思議な感じのするお婆さんだった。

魔導書はマクラにピッタリの大きさだったので 大切に使わせてもらうモルよ。


モルモット君「みんな~ 兄弟たち!元気だったかい?

一ついいことをすると気分がいい。 清々しい気持ちでモルモット家族の家に到着した。



モルモット家族「これは 素晴らしい野菜だぁ モルモット君が八百屋になってくれて家族みんなが誇りに思っているよ」


ボクが持ってきた野菜は 家族のみんなに大喜びされた。

でも 一人だけカブリつかないモルモットがいた。

姉さんモルモットのスキニー姉さんだ。

「どうしたモルか?」と姉さんに聞いてみると 姉さんはお腹をさすりながらニッコリと笑みを浮かべた。

姉さんは 結婚して妊娠していたんだぁ。

実は 今日の家族会議は 姉さんたち夫婦と生まれてくる子供のことについての話だった。


建築家の兄さんやぬいぐるみ屋をやっている 弟たちは姉さんのために色々な事をやってあげると約束をしていった。

そして ボクの番。廃棄する野菜を持って行ってあげることはできるけど、今回みたいにボクのお店の野菜が売れ残ることはほとんどない。どうしよう。。


モルモット君「姉さんたちには ボクの野菜を持って行ってあげるモル」


約束してしまった。そして 姉さんたちは 「こんなに美味しい野菜が食べられるなんて」と涙を流しながら感動してくれた。


数日後・・


お客の兵士「その 野菜を貰おうかな」

モルモット君「実は その野菜は鮮度がよくないんだ。今日はもう店じまいモル。ごめんな」


姉さんに野菜を届けるために、わざと売れ残りを出すようにした。

そして 早めに店を閉めて姉さんたちのところへ 毎日向かった。


モルモット君「姉さん 野菜だよ。あと少しだけど、このお金も使ってほしいモル」

スキニー姉「まあ ありがとう。モルモット君」


元気な子供が生まれてほしいから 野菜と少しだけどお店のお金も渡した。

野菜やお店のお金を渡しても 少しぐらいなら大丈夫だよね? 


そんなある日


ピョンタ「やあ モルモット君野菜を買いに来たよ。ところで 君におかしな噂が流れているんだ。君が横領をしているんじゃないか?って噂をしている動物たちがいるけど大丈夫なのか?」


お店の野菜を多めに売れ残させたり、お店のお金を姉さんに渡していたことが噂になっているらしい。

ちょっとだけだったのに。少しだけならバレないと思っていたのに。。、


勢いよくお店のドアが開いた。


兵士「モルモット君 お店のお金を横領した容疑が君にかけられてたよ。さあ お城まで来てもらおうか?」


ピョンタ「まってください。モルモット君はいいヤツなんです。横領なんてありません」


兵士「うるさいぃ! 」


ドッガ!! 


兵士は ピョンタを突き飛ばすとそのままボクを取り押さえて お城へ連れて行った。

お城ではいくつかの質問をされて、最後の最後で スキニー姉さんが出産を控えているという事実を突きつけられて 言い逃れが出来なくなってしまった。。。


裁判官「判決は。 モルモット君は死刑とする。しかし 姉さんへの想いからの犯行だ。そこで死刑が執行される夕方までは 家族と過ごすことを許してやろう。さあ 時間がないぞ、早く別れの挨拶を済ませてきなさい」


家族に別れの挨拶をすることは ゆるされた。

夕方まではもう時間もない。

ボクが考えた結論は・・ ・


兵士「まてぇ~! まてぇ~!」


兵士「逃げたぞ!! 追え!追え! そして 見つけ次第処刑だ!」


ボクは この国を離れることにした。

死ぬなんてごめんモル。生きてさえいれば、きっと何かはあるはずモル。死んだら終わりモルよ。

だけど 兵士たちは国の道を知り尽くしていたし、ボクの体は太っちょだから通れない通路もあったりして追いつかれてしまった。


兵士「もう 逃げられないぞ 覚悟しろ」


兵士が剣を振りかぶった。そのとき兵士の動きが止まった。

ピクピクとしていて 少しだけ兵士の体が光っているように見える。


おばあさん「おや。おや。お困りのようだねぇ ピョンタに頼まれてしまってねぇ。ほぉ~ら この前渡した魔導書を呼んでごらん。 ひっひっひひ」


時が止まったかのような時間だった。

おばあさんは ボクに1冊の魔導書を指さすと納得したかのように、何度かうなずいて去っていってしまった。


モルモット君「何だモル? 試験に出ない簿記の魔導書??」


兵士「ようやく動けるようになったぞ 覚悟しろ!!」


兵士たちは 確実にボクをしとめようと剣を構えた。

簿記ってなんだモル。でも もう時間がない。一か八かだ!


ボクは魔導書を開いて 呪文を唱えた。


モルモット君「個人と法人は違います。個人の財布は一つだけだから 「事業主勘定」があります」


魔導書が黒く光り始めた。そして真実が明らかになった。

個人が自分のお店のお金を使っても横領にはならないらしい。

裁判官はモルモット君に謝罪をし、モルモット君は 無罪釈放となりました


めでたしめでたし。


エピローグ


スキニー姉さんの子供たちは 可愛い三つ子だった。

そしてボクにもよくなついてくれて 可愛い兄弟たちだ。

あの魔導書。あのとき兵士の前で唱えた魔導書は 呪文を唱え終わるとそのまま消えてしまった。

ピョンタも 魔導書なんて知らないと言っていたし、結局あれば何だったんだろう?

それにしても お店のお金を私的に使うことが出来る「事業主勘定」がとっても便利だ。


三つ子たち「ねえ モルモットおじさん。野菜ちょうだい」


モルモット君「ああ いいとも。お店の野菜をいっぱい食べて 元気な子に育つんだよ」


三つ子にあげた野菜の金額は仕入れから 「事業主勘定」に書き直せばOKなんだ。


最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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