第15話
目が覚めたとき、知らない天井だった。
最近同じことがあったなと思い返してみれば、オークと戦闘したときだ。あのときは無我夢中で二人を助けようとして、リティから投げ渡された剣を投擲するという暴挙によってオークを倒した。
今回はゴブリンキング。どう足掻いても勝てない敵だった。聖霊が力を貸してくれなければ俺達は確実に死んでいた。
しかし、無事に生き残った。
そんな俺は知らない部屋にいるのだが、理由は覚えている。
疲労困憊で仮眠をしようにも広場は壊されており、ギルド員が建てた簡易建物も酷い有り様だった。
そこで、どうしようかと思っていたら、ティリアが提案してきたのだ。わたしの家はどうですかと。
俺は即決で甘えた。
貴族区画にあるティリアの屋敷までは少し遠かったが、周辺の宿は避難対象に含まれていたので選択肢がなかったのだ。
戦線離脱した俺についてきた二人と一緒に屋敷に入る。
ちなみに、警備隊の仕事だが、前線に出ていた高ランク冒険者が王都内に残り、広い範囲を行うことになったらしい。
失くなった冒険者達の穴埋めとしてだ。
前線は大丈夫なのかと思ったが、魔物の王が一体倒したことで最初に割り当てられていた冒険者側の負担は減ったとのこと。
そんなわけで、俺は屋敷に案内されると二人にまずは応接室に通される。当主や侍従は学園側に避難しているため、無人の屋敷だ。
侍従は居ないため、二人が俺用の寝床の準備をすると言って出ていったのだが、そこで俺は寝落ちしたのだ。
そうして今に至る。多分、丸一日は寝ていたんじゃないか。カーテンの隙間から陽が差し込んでて、外は昼間だと推測する。
腹の減り具合からも間違いないだろう。
まあ、そこら辺は後々聞こう。
さて、二度目の見覚えない天井をぼんやりと眺めながら、ゆっくりと顔を横に向けて俺自身の状況を整理していく。
天蓋付きベッドに寝かされた俺。
隣には規則正しくすうすうと寝息をたてる少女。
「ふむ」
数秒の間を使って考えてみる。
要約すると、高級そうなベッドで女の子と一緒に寝ていた。
なんでだ。
この時点で訳が分からなくなってきたが、俺は右手で瞼を押し解し、改めて少女を観察した。
さらさらとした髪を無造作に、睫毛が長く、端正な顔立ちをしている少女。俺が良く知っている少女で、ティリアで間違いはない。
黒に近い茶色の髪は艶があり、少女の寝顔はあどけなく、服装は寝間着を着用している。
ここの屋敷の娘であり、貴族の少女だ。
彼女は、喋ると後先を考えていないせいか子供らしい印象が強い。寝ている姿も年相応というより、年齢よりも少し幼く見える。
そんな少女は俺の腕を抱き枕にしていた。
起きたばかりで説明しようがないのだが、とにかく密着しすぎていて俺は固まるしかない。
ティリアは俺の左腕に抱きつき、両足で挟んでいる体勢だ。体全体の温もりを無償で提供し、やけに柔らかい部分も当たっている。
ティリアの胸だろうということは確認しなくても分かった。
いつもローブ姿をしているから隠されているが、ティリアは女性らしい体つきをしている。
薄着一枚のせいでそれが直に伝わり、邪な考えがいくつも浮かびそうだった。
俺はさすがにマズいと思い、絡まっているティリアの拘束を解こうとする。
「……むぎゅう、リティちゃーん。スライム、食べりゅ。ふへへ、やっぱりあげないですぅ」
そしたら、耳元から囁かれる寝言。
どんな夢を見ているのか。スライムなんて食べたら腹を壊すぞ。
夢現にさ迷っているティリアが、ふにゃふにゃと口許を弛めている。気のせいだと思いたいが、一連の動作で抱きつく力が増した。
雁字搦めにされた左腕は身動き一つ取れず、抜け出そうにも拘束力が強まっていく。
「まさか、無意識に身体強化を使ってるのか。……勘弁してくれよ」
ティリアを視れば青色に輝く魔力が腕を起点に広がっていた。
か弱い少女のはずなのに、俺の腕を絡めとる力は締め上げるほど。魔力ゼロの俺には抵抗ができない。
俺の左腕全体に密着し、顔を肩に乗せているティリア。
これほどまでの力で抱きつきながらも、痛くはない。ティリアの体が柔らかいおかげだろう。
ただ、重いし暑苦しいし、血の巡りが悪くなっている。
弛緩しきった顔も近くて、不可抗力なはずなのに罪悪感がすごい。
「ふへへー」
変な笑い声を上げる少女に凸ピンしたい。
貴族のお嬢様にそんなことはしないが、起こすための代替え案が浮かばない。
どうすればいいだろうかと考える。
目の保養に眺めるのも悪くない。しかし、このまま感触を堪能するのは良くないと思う。
俺の腕も痺れてきた。普通に起こしてみるか。
「ティリア、起きてくれ。おーい、ティリア。起きてくれるかー?」
起きる気配は全然ない。爆睡して夢の中だ。
どうにかならないものかと、辺りを見渡す俺。
寝ている場所はティリアの私室だ。
棚にはぬいぐるみが並べられ、机には魔法の書物が積み重なっている。かけられたローブは見慣れたもので、女生徒用の学生服もティリアのものだ。
しかし、侍従が部屋には居ない。学園に避難しているからな。完全に二人きりである。
何故、この屋敷のお嬢様と二人きりで、ベッドに寝かされているのか。
応接室で寝落ちした自覚はあるが、ティリアの部屋へ招かれた記憶はない。
「ん、んぅ」
左腕にまとわりつく感触。目と鼻の先に少女が寝ていて、強制的に女の子の匂いが鼻をくすぐっている。
甘い香りだ。
色々とやばい。
色香に誘われる虫のように俺は視線が固定されようとしたが、ハッと我に返った。
この部屋に向かってくる足音が聞こえたからだ。
抜け出そうと四苦八苦するも、そんなことをしている間に部屋の扉がノックされた。
「ティリアー、ハルトまだ起きてないー?」
コンコンという音が鳴り、部屋に入ってきたのはリティだった。
ラフな格好をしているが、腰には剣を差していて、いつも結っていた髪は下ろされている。
髪を下ろしている姿は新鮮だ。
この状態をどうにかしてくれる救世主でもある。俺には後光が差しているように見えた。
よくよく見れば、扉から入ってきた陽がリティの背に当たっているだけだが。
そんなリティは右手に籠を持っていて、中には果実がいくつも入っているのが見えた。逆の手にはフルーツを盛るための皿とナイフを器用に挟んでいる。
「……おはよう」
「あ、ハルト。起きてたのね。あれ、ティリアは?」
「……隣で寝てる。左腕を拘束されてるんだが、どうにかしてくれないか?」
「……まったく、看病するって張り切ってたのに。ティリアは揺すればすぐ起きるわ。頼んでいいかしら、その間にフルーツを用意しとくから」
そういって椅子に腰かけるリティ。手慣れた様子でナイフで果実の皮を剥いていくのを横に、俺は気持ちよく寝息をたてているティリアを起こしにかかった。
言われた通り、空いている右手でティリアの肩を揺する。
「……おーい、ティリア。起きてくれ」
「ん、んっ……?」
ぱちぱちと瞬きをしたティリア。本当に揺するだけですぐ起きた。
勢いよくむくりと上半身だけ身を起こすと、俺の顔とティリアの顔が至近距離で見合う。
唇が触れ合いそうな距離で二人の吐息が混ざり合い、お互いに固まった。
「……えーと、おはよう?」
「ハルト、さん……?」
「……その、起きてもらってもいいか?」
「はぅ!?」
ティリアが一瞬で顔が真っ赤に染まる芸当を披露する。声を掛けるや否や、凄い勢いでティリアは毛布を頭にくるみ、ベッドに突っ伏してしまったのだが。
毛布で頭を包んだ体勢は、雷に怖がる子供のようだった。
「……おーい」
「うぅ……」
「ほっといていいわよ。それで、ハルト。痛むところとかはない? 一応、ティリアが何回かヒーリングしてたけど」
リティの気遣いに軽く腕を回したりしたが、特に痛みは感じない。
「全然痛くないよ。なんか、手間かけさせたみたいだな。ありがとう」
「感謝はそっちによろしく。あと、これ食べながらでいいんだけど、話を聞いてもらってもいいかしら?」
手渡された皿には消化が良いとされる果実が乗っている。ご丁寧に一口サイズで盛られていた。
有り難く受け取り、腹が減っていたので咀嚼すると瑞々しい甘さが口内に染み渡る。
うまい。
味わって嚥下し、改まって聞いてくるリティと向かい合う。
「で、話って?」
「まず、ハルトが寝ている間に防衛戦は終わったわ」
「は? そんなすぐ終わるわけないだろ?」
一日そこらで防衛戦が終了するはずはない。
「ハルトが寝込んで二日も経ったのよ。警戒体勢は解かれてないけど、おじ様たちも帰ってきてるわ」
「……そんな寝てたのか」
「ええ。あと、今回の防衛戦ついての内容ね。死傷者がたくさん出たけど、結果的には大成功ということになったの。ゴブリンキングはハルトが倒し、他の王は撤退していった。剣聖は半身を潰される重症で、賢者と聖女は魔力枯渇に陥って療養中らしいけど」
「……そうか、終わったのか」
「街は半壊だったけど、復興作業が計画されて既に手の空いてる冒険者と兵士が進めてるわ。騎士や魔法師は残党狩りをしてる」
「……俺もなにか手伝わないといけないな」
俺でもやれることがあるならやっておきたい。
そう思っているとリティが首を横に振った。
「ハルトは手伝わないで。人手が足らないのは事実だけど、あなたが行くと作業にならなくなるわ」
「……え?」
「今回の戦いで一番活躍したのはハルトよ。ゴブリンキングを倒したのは冒険者たちが見ていたし、あなたの左手――英雄の証が大多数に周知されたことによって大騒ぎになってる」
「……これか」
王立学園に在籍中に現れた紋章。特別何もやっていないのに起きたら紋章が刻まれていた。
当時の俺は精霊に多少のお願いを出来るようになって、魔力を視る能力を手に入れた。しかし、弱すぎる力だったために秘匿したのだ。
だが、この紋章は、神と同等な存在とされる聖霊の力を借り受けることもできるらしい。
今まで隠していた紋章が見られ、俺は一躍有名人の仲間入りだ。
「新たな英雄の誕生で凄い騒ぎよ。記念にゴブリンキングを剥製にして飾るとかって話も出てるみたい」
「……それは趣味悪くないか。大勢がゴブリンキングに殺されたし」
「それ以上に英雄の誕生はすごいってことよ。こうやって七英雄の一人と話してるのも不思議な気分だけど。私もハルトのこと敬ったほうがいい?」
「……頼む、やめてくれ。今まで通りに接してもらえると助かる」
「ふふ、冗談よ。ハルトってそういうの苦手そうだしね」
控えめな笑い声を上げたリティ。
俺はため息を吐いて、内心を吐露した。
「……何で俺なんだろうな。俺よりも適任はたくさん居るだろうに」
選ばれたのが不思議だ。魔力もない俺よりも優秀なやつは沢山いる。
神様はどうして俺を選んだんだろうか。
「それはハルトさんだからですよ!」
ガバッと毛布から出てきたティリアが右手の人差し指を俺に向けた。
「……どういう意味だ?」
目が合うとティリアは何故か横を向いて、朱を差した頬を膨らませている。
「ハ、ハルトさんは英雄です! 英雄より英雄らしいですから! 英雄なんです!」
未だに目を合わせようとしないティリアから要領の得ない答えが返ってくる。卑下する俺を励ましてくれているのだろうか。
「英雄、らしいか」
ティリアの言ったことを反復する。
俺は、物語に出てくるような英雄らしい行いをしたことがない。高尚な気持ちを微塵も持ち合わせていないし、全ての人を救いたいだとか大層なことを思ってもいない。
世界を救う?
もう一人の俺が居るのなら、馬鹿言うなと笑い飛ばすだろう。
そんな壮大なことは手に余る。
俺が英雄として務まるのだろうかと、今から不安しかない。
「まあその、紋章に選ばれてるとか関係なく、私たちにとって……ハルトは英雄よ」
「それって……?」
「言葉通りよ。それより、おじ様に会ってもらってもいい? 話したいことがあるそうよ」
リティは話を無理に変え、この家の当主が俺に用があるとのこと。
「今から?」
どんな話だろう。防衛戦や英雄については間違いないだろうが、俺は二人を危険に晒した事実もあるんだよな……。
治療してもらった礼もあるから話しておきたいが、気が重い。
「ええ、出きれば直ぐ。体調が万全でないなら明日にでもいいけど……やめとく?」
リティが上目遣いで俺の顔色を窺っている。
その目はずるいと思うぐらい、俺は首を縦に振るしかなかった。
髪を下ろしている影響なのか、印象が様変わりしている。
「俺は大丈夫だよ。じゃ、行こうか」
そそくさと立ち上がった俺はリティを連れ、遅れてやってきたティリアの三人で部屋を後にした。
来たことのある書斎に通された俺は貴族の礼と共に侯爵様へ挨拶した。
ティリアの父親でもある侯爵様は同じ貴族の礼を向けて出迎えてくれる。
「新たな英雄とこうして会話ができるなんて光栄だよ。ハルト君、今回は良くやってくれた。娘を守ってくれてありがとう」
そういって、貴族の礼ではなく純粋に頭を下げられた。侯爵ともあろう方に感謝された俺は両手を出して止めようとする。
「……いえ、頭をお上げください。こちらこそ治療の手配など感謝してもしきれません。それに、ティリアとリティを危険な目に合わせてしまいました」
「戦況は騎士団の副団長から報告されたよ。あれは予想外だったね。だけど、三人の英雄が負傷するような相手に最良の結果を示してくれた。ゴブリンキングを倒した功績は計り知れず、後世に語り継がれるものだよ。何より、キミが打ち倒していなければ二体の王も撤退せず、全滅も有り得た。ティリアとリティの親として、貴族の一員として感謝する」
めちゃくちゃ褒められている。
俺は良かったと安堵した。二人を危険に晒した叱責ではないみたいだ。
まあ、あの有名なゴブリンキングを倒したしな。頑張ったと思う。聖霊のおかげだけど。
有頂天になりそうだったが、相手は侯爵様なので気を引き締める。
「ありがとうございます。侯爵様に評価して頂き、嬉しく思います」
「うん。それで、提案があるんだけど。ハルト君って許嫁とかは居るのかい?」
「え? 居ないですけど……」
話の流れが急激に変わったような気がする。
「ウチのティリアなんてどうだい? 可愛いだろう? 器用良し、魔法の才もある。ハルト君、婿に来ないかい?」
「ななな、何を言ってるんですか!? お父様っ!」
斜め後ろに居たティリアが大声を上げた。
慌てる姿は確かに可愛いけども。
「えっと、流れが読めません。どういうことでしょうか?」
「簡単な話だよ。英雄になったキミとお近づきになれればと思ってね。本人も好意があるそうだし」
「ちょ、お父様! いますぐ口を閉じなければ、丸焦げにしますよっ!」
「おっと、後が怖いからこの辺にしておこうか。だけど、ハルト君もこれから多数の縁談を受ける身になるだろうから、ティリアのことも考えてみてくれたまえ」
おどけて苦笑を浮かべる侯爵様に曖昧に頷く。
「えっと、はい」
ティリアが真っ赤になってむくれているのを横目で見る。
英雄となったからにはそういう話も来そうだが、まだ先の話だろう。
ぶつぶつと父親に文句を呟いているティリアも年齢が離れているし、俺のことを兄みたいに思ってそうだ。
好意があれば、添い寝なんてしないだろう。
「話を戻そう。大事な話をするから、できればハルト君と二人きりにしてもらってもいいかな?」
「わかりました。では、私とティリアは外に」
「ハルトさん! またあとで!」
二人が書斎から出ていき、侯爵様と俺の二人になった。
扉が閉じたのを確認した侯爵様が話を切り出す。
「……さて。まずは学園に避難していたときにローウェスト家当主と会う機会があってね。娘がお世話になっていると挨拶したら、ハルトという者はこの家に存在しないとキッパリと言われてしまってさ。どういうことだろうと、交流のある貴族達から情報を集めたんだ。率直に聞くけど、もしかして勘当でもされたのかい?」
侯爵様は俺のことを考慮して手を回してくれたのか。
二人をこの場から出ていかせたのも、俺に配慮してくれたのだろう。
学園で悪い意味で有名だった俺。家は用無しと判断し、切り捨てた。これは俺にも非があるので、仕方ないと割りきっている。
自分から話題にしたくないものだが。
「……はい。お恥ずかしい話になりますが、学園を卒業と同時にローウェストの名を捨てました。父から言い渡されたことは養子に迎えた者が次期当主となり、私は居ない者となったそうです」
「……それは、大変だったね。英雄に選ばれるのがもう少し早ければ何も失わなかったのに」
「……いえ、名を捨てたおかげで冒険者になり、大切な仲間と出会えましたので」
「そうか。ならば、安い同情はやめよう。だけど、ローウェスト家はキミが英雄に選ばれたという話を耳にしていない。きっぱりとそのような者は居ないと言われたからね。もし、ハルト君がローウェスト家に戻る気があるのなら口添えするよ?」
どうすると尋ねられ、俺は首を振る。
「戻る気はありません。当主としての領地経営などは養子になった者に任せようと思います」
「それはどうしてだい?」
「……養子に迎えられた子は王立学園に入学したばかりです。遠くから顔を見たぐらいの間柄ですが、今さら戻って次期当主になるなんて考えられません」
その子は俺よりも才能があり、必死に勉学に励んでいる。領地経営の仕事もやらされているはずだ。
色々と疎かにしていた俺が今さら戻っても遅いし、戻ったら養子の子はどうなるのか想像は容易い。
俺も当主となって悠々自適に暮らす計画はあった。しかし、既にそこまでして望んでいるものではない。
英雄の紋章によって、聖霊が見せてくれた力。あれほどのものがあれば、いくらでもやりようはある。
「しかし、キミは英雄の一人に選ばれた。貴族でなくとも、使命を果たさなければならなくなった。近日中に王家から使者が送られるだろう」
「……はい」
「大半の者は誇りに思うところだけど、キミは嫌そうだね」
「本音になりますが、戦場に出たくはないです。魔力がないので身体強化もできず、呆気なく死ぬかもしれません」
「かの有名なゴブリンキングを倒したのに?」
「聖霊の力を借りて倒すことが出来ましたが、二度同じことをしろと言われても不可能です」
「しかし、英雄となり、偉業を成し遂げたことは事実。我々は期待してしまうよ」
「……その期待に応えられるよう善処します」
「うん。まあ、少しは猶予があるから、ゆっくりと休むといい。王家からの使者が来るまでの間になるが、ハルト君はこの屋敷に滞在してもらえると有り難い。我が家だと思って寛いでくれたまえ」
やっぱり、そうなるのか。
英雄の使命なんて素知らぬ顔で逃げたい気持ちと、侯爵様に迷惑かけたらティリアとリティが……なんて気持ちがせめぎあっている。
「……わかりました」
俺は一先ず後者を選んだ。
そうして、ティリアとリティが住む屋敷に身を置くことになってしまった。
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