第118話 3賢者に会ってしまったよ

「失礼します」


 常務室の階上にある社長室に、護邸に続いて千秋も入る。

 広いフロアには、入り口横に秘書のデスクがあり、フロア中央窓際には社長の執務用の机がある。そしてその手前のスペースに応接用のソファセット、それに取り扱っている商品のディスプレイがその向こうに飾り付けられるように置かれてあった。


「護邸くん、こちらだ」


 ソファセットには、中島社長と早田専務それに郷常務が座っていた。

 護邸は会釈すると歩を進めて、そこへ向かう。千秋も後に着いていく。


「何かあったのかね」


「じつは困ったことになりそうです……」


 そう前置きすると、警察が介入するおそれとキジマ達、群春物産との関わりを説明しはじめた。

 それを聴いていた3人は、だんだん顔が曇っていく。


「……以上が事のあらましです」


ひととおり話を聴くと、3人は考え込んだ。


「それは間違い無いのかね」


「はい」


 郷常務がディスプレイ側にあるテレビに、リモコンでスイッチを入れザッピングしてニュースを探す。その隣の早田専務は自分のスマホで検索し始める。中島社長には秘書がさりげなく新聞を持ってくる、すでにその記事を表に出してあった。


「これか」


 たしかに群春物産の社員が女性警官を襲ったという記事が載っていた。

 テレビはワイドショーが映っており、司会が大げさに事件を紹介しており、検索の終えた早田専務も記事を読んでいる。


「こいつらがサトウを脅していたのは確かか」


「はい、こちらの佐野くんが言質をとりました」


 全員の視線が集まり、千秋はコクンと頷く。


「で、警察が来るのは間違いのかね」


「それに関しては断言出来ませんが、可能性は高いと思ってます」


「来なければそれでいいが、来たときの対策はしておくべきですな」


視線をテレビに向けたまま郷常務が答える。


「対策もなにも、サトウとスズキを即刻クビにして会社と無関係にすればいいじゃないか」


 スマホの記事を読み終わり、懐にしまいながら早田専務が吐き捨てるように言う。

 その言葉に千秋はやはりそうなるかと思った。


「それだけではすみません、群春の下っ端に当社の管理職が脅されていたという事がおおやけになると当社の面目がつぶれます」


「別にかまわないだろう、すぐに忘れられるよ」


「早田専務、たぶんそうなりません」


「どうしてだい、郷君」


「葉栗派が動くからです」


 郷常務の言葉に中島社長のこめかみが、ぴくっと動く。

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