第113話 その8

「そうなると思うけど……」


千秋は何かにひっかかっていた。なんだろう、なんかを聞いたような気が……


「ああっ!!」


「ど、どうしたんです急に」


「ポイセン!!」


千秋はスズキからその名を聞いたことを思い出した、ポイセンことポイポイ先輩、サクマアラシゲを。


「ポイセンってなんです」


事情を知らない一色に千秋は説明する。


「思い出しました、キジマ達が言ってたチーフを襲うのをやめた男ですね。それがスズキさんを酷い目にあわせた男だったんですか」


「そう、しまった、アイツがいた」


キジマ達は今ごろ、東京から来た刑事によって洗いざらい話しているだろう。となると、事情確認の為にポイセンのところに行く可能性がある。

ポイセンもニュースでキジマ達の事件で知っているだろうから、とりあえず逃げ隠れするだろうが、逃げ切れるとはかぎらない。なにより。


「……キジマが課長を脅していたことが知られるかもしれない」


「どういうことです」


エレベーターが着たが2人はそれを無視して話し始め、扉は閉じて下がっていった。


「……つまり、今回の事件はキジマ達が私を集団レイプする目的だったけど、間違えて婦警を襲い、全員現行犯で捕まったわけよね」


「ええ」


「で、東京から刑事が来て、今回の件と過去の件を調べると思うの」


「おそらくそうなるでしょうね」


「となると証拠物件は警察に押収されるわよね」


「犯行の裏付捜査でしたっけ? 警察はそれをやりますよね。でも証拠画像は消したんじゃ……」


「警察は復元できる。……と思うの。ドラマでの知識だけどさ」


「となると証拠画像をキジマ達に見せて自白させますね。キジマ達はたぶんシラをきるでしょう、となると証言が必要になる、それでスズキさんにたどり着きますかね」


「今すぐじゃないと思うけど、当時の交友関係や何かで、いずれたどり着くと思うわ」


「それなら、問題無いですね。そんな頃は彼女は退職しているでしょうから会社には問題無い」


「そうだけど……」


千秋は意外だった。一色ならスズキを庇うような発言をすると思ったからだ。


「チーフの言う通り、スズキさんは会社に損失を与えるという罪を犯しました。ペナルティを受けるべきです。たとえばキジマ達のカネの動きを警察が押収品から知り、確認の為にエクセリオンに来たとしますね」

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