第32話 その2

「塚本さんが前に経理にいた事は話しましたよね。その時、塚本さんをなにかと面倒をみてくれた人に似てます。もっと明るい感じの人でしたが」


「じゃあ、塚本さんなら分かるかも知れないのね」


「明日確認してみましょう」


 栄駅に着いた2人は、挨拶をして別れた。くれぐれも気をつけてと、何度も言う一色がかわいいと千秋は思った。


  地下鉄を待つ間も柱を背にしたり、女性専用車に乗ったりして気をつけて、名古屋駅に着いた後も、なるだけ女性の集団にまぎれてJR駅まで行き、改札をくぐってホームに着いても、なるだけホーム際に立たないようにする。


快速電車に乗り込んで、やっと人心地つく。


 今日は慌ただしい日だったな、このあとケイにあって預けていた情報を聞かなくちゃ。情報といえば、ノブからのデータまだみてなかったわね。


 スマホを取り出し、ノブからのメールを開き、添付されたデータをみる。

 アドレスと履歴と画像とメールのデータが入っていた。今回はウイルスは付いてない、よしよしと千秋は頷いた。


 アドレスには、目につくような名前が無かった。   

 おかしい、ならばキジマ達とはどう連絡をとっているのだろう。

 千秋は少し考えたが、ああと気がつく。名前を代えて登録しているのだろう。ならばと、通信履歴をチェックして、ノブが電話してきた頃の時間を見る。


この番号と名前か。


 履歴を再度見ると、ここ1週間は頻繁に電話をしている。間違いないようだ。


「ん?」


 キジマらしい相手以外に、もうひとつ頻繁に連絡をとっている相手がいる。男の名前だが、さっきの事を考えると正体不明と考えておこう。


 画像データの方を見る。海や魚の画像が目につく、どうやら海釣りが趣味らしい。

 日付の古いのは趣味の画像ばかりだったが、新しいのは、色々な観光地の自撮り画像が目につく。

 趣味が変わったのかなと考えたが、画像の不自然さに気づく。


「これ誰かに撮ってもらっている、これデートの画像だ」


 相手は奥さんかなと更に見ると、どうやら相手らしい人とツーショットの画像を見つけた。2人で頬をよせあって、笑顔で写っている。


「ふ~ん、なるほどね。そういう事か」


 千秋が納得していると、車内アナウンスが、もうすぐ壱ノ宮駅に着く事を告げた。


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