第4話、竹ペン
昼の、患者さんがいる間は、外出するようになった。
最初のうちは、みんなが気味悪がった。
すれ違う子供は泣くし、悪ガキに石を投げられたこともあった。
自分の姿は、鏡を見せてもらって分かっている。
右半分は髪もなく、焦げ茶色に変色している。右目は瞼が腫れ上がり、耳と頬と口は引きつっている。
夜中に出会ったら、俺でも逃げ出す。
でも、母さんは顔を隠さず、すれ違う人に挨拶しろといった。
「お、おは・おうおあひまふ」
「ああ、タウ、おはようさん」
「おはよう」
みんな挨拶を返してくれるようになった。
今日は、細い竹をとりにきた。
小さめのノコギリでゆっくり、確実に切っていく。
意外と簡単に5本とれた。
家に帰り、節のところで一本づつ丁寧に切っていく。
ざっくりと形を整えてペン先1cmほどのところにキリで穴をあける。
節のところをペン先にすると、硬くて持ちがいいと言っていたな。
穴からペン先にかけて、慎重に切っていき、ペン先だけは少し厚く残して小刀でペン先を削っていく。
黒板に塗ったものを全体に薄く塗り『定着!』
定着の魔法は母さんに教えてもらった。
言葉にできなくても、魔法は発動できる。
ノリだけを塗ったものや、何も塗らなかったもの。いろいろと作って乾燥させる。
当然陰干しだ。
一本だけ、少し太めの竹を切ってきて墨用の容器も二つ作った。
ノリを定着させて、節の部分でフタもできるようになっている。
「かあはん」
「どうしたタウ」
「ふへのかはひ」
「ふへ……ふでかい?」
「う・ん」
「ほう、墨入れと、その竹が筆なのかい?」
「う・ん」
カリカリ
「ああ、私が書き損じた紙だね……えっ、その細い線は……
えっ、濃いめの墨で、にじまないように工夫した……
筆よりも、細いから、細かい字が書ける……
色々と変えて作ったから……、母さんも書きやすいの見つけて……
竹だから、力を入れすぎると折れる……
なるほどねえ。ああ、ここに墨が少したまって、この切れ目に沿って流れていくんだね」
カリカリ
「うん、この先っぽには強化をかけてみようか『強化!』」
カリカリ
「ああ、いいよ。強く書いても滲まない…」
カリカリ
「紙をもっと効果的に使うにはどうしたらいいか考えた……
ああ、そうだね字を小さくすればいいんだよ。
タウ、お前って天才じゃないかい」
カリカリ
「体が自由に動かないけど、頭は人と同じように使えるから……
ああ、そうだね。だけど、タウと同じように頭を使える奴なんかいやしないよ。
ああ、自慢の息子だよ」
どうも母さんは涙もろいらしい。
タウの黒板に続いて、タウの竹ペンも墨入れと共に大ヒットとなった。
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