第11話 勇者様の盗賊退治

2021/06/17 誤字を修正しました

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 勇者たちがサルデリア王国に召喚されてから一か月が経った。彼らは王国でも一流の指導者たちによって指導され、めきめきと頭角を現していた。


「さあ、今日は町の外での実戦となります。勇者の皆様、ご準備はよろしいですな」

「はい」

「おう。任せとけ。悪い盗賊をぶっ殺せばいいんだろ?」


 勇者である四宮玲央は神妙な面持ちで、武王である園山翔は自信満々な様子でそう答えた。


「が、がんばります」

「桃花さん。私たちの役目は後方支援ですから大丈夫ですよ」


 気負った様子の聖女横山桃花を賢者である夕霧紗耶香がそっと励ました。


「皆様、気合十分ですな。ですが、我々騎士団もおります。どうぞご安心ください」


 そうして異世界の勇者たちを擁する騎士の一団は町を出て森へと向かったのだった。


◆◇◆


「あそこが盗賊どものアジトでございます」


 小高い丘の上に陣取った一行は眼下に広がる森の中の小さな集落を見下ろしていた。


「あれが……」

「オレが暴れてきてやるよ。なあ、いいだろ?」

「お待ちください。まずは作戦をご説明します。あの奥にひと際大きな建物がございますね?」

「ちっ」


 翔は不愉快そうに舌打ちをするが、それを意に介した様子もなく隊長の男は説明を続ける。


「斥候の持ち帰った情報によりますと、あそこに近隣の村から誘拐された少女たちが監禁されております。ただ、脱走を防ぐためかあの建物から出ることを許されておりません」

「……では、今回はその少女たちを救出すれば良いんですね?」

「そうなりますな。まずは、賢者サヤカ様の魔法で門とその近くの建物を破壊していただきます。その混乱に乗じて突入部隊が奇襲を仕掛けます。突入部隊は勇者レオ様と勇者ショウ様のそれぞれに十名ずつ率いていただきます」

「はい」

「いいぜ。やってやるよ」

「私たちの役目はわかりました。桃花さんは何をすれば良いんですか?」

「えっ? あ、わ、私は……」

「聖女モモカ様には鎮圧後、怪我人の治療をお願いいたします」

「わ、わかりましたっ! 任せてください」


 そう早口で答える彼女を見て、部隊の雰囲気はふわりと和らいだのだった。


◆◇◆


 突然の爆発が盗賊のアジトを襲った。


 アジトへと入る門が突然炎に包まれ、それは瞬く間に延焼していく。


「おい! どうなってんだ!」

「わからん。だがこのままじゃやべぇ。早く火を消せ」

「わかってる! でも火の勢いが! ぐあっ!」


 混乱し、消火に追われる盗賊たちの一人が突然地面に倒れた。


「おい! どうした!」

「オラオラオラァ! やるぞ! ぶっ殺してやる!」


 翔が粗暴な口調でそう言い放つと巨大なハルバード軽々と振り回して盗賊たちを追いかけ始めた。


 翔がハルバードを一振りするたびに盗賊の死体が増えていく。


「どうした! 盗賊ってのはこんなに弱いのかよ? ああん?」


 そう叫びながら逃げまどう盗賊たちを追いかけるその姿を部隊の兵士たちは唖然とした表情で見守るのだった。


◆◇◆


 翔が大暴れていている混乱に乗じて玲央たちの部隊はひと際大きな建物の前へとやってきた。


「さあ、誘拐された子を助けよう!」


 玲央の言葉に頷いた騎士たちが扉を蹴破ると、一斉に中へと雪崩れ込んだ。


「お前たちの悪行もここまでだ!」


 勢いよく飛び込んでそう叫んだ玲央たちを見て、中にいた五人の盗賊は驚いた様子で立ち上がった。


「くそっ。まさかここがバレていたとは」

「落ち着けよ。王国の犬ごときに俺らが負けるわけねぇだろう?」

「ボス!」


 ボスと呼ばれたひと際大きな体格の男が剣を抜いた。


「そこの坊主がリーダーか? それならお前を斬れば俺たちは無罪放免ってわけだ」

「……剣を捨てて投降してください」

「あ? 投降してどうなるってんだ! どうせ俺らは捕まりゃ処刑だ。ならお前をぶっ殺すほうがいいに決まってるだろ?」

「悪いことをしたら罰を受けるべきです。自首すれば罪は軽くなります」

「ああん? 何言ってんだお前? ははーん。なるほど。わかったぜ」


 そう言われた瞬間、玲央はほっと胸をなでおろす。


「じゃあ、お前さんにはこれをくれてやるよっ!」


 だが、ボスの男は一気に間合いを詰めると玲央に向かって勢いよく剣を振り下ろした。盗賊たちは勝利を確信してニヤリと笑みを浮かべる。


 しかしうめき声を上げて倒れたのはボスの男のほうだった。


「が……な……」


 なんと、ボスの腹には見事な左の拳のカウンターが突き刺さっていたのだ。


「え? ボ、ボス?」

「僕はそのくらいの不意打ちではやられない。さあ、今すぐ投降するんだ」

「う、うわぁぁぁぁぁ」


 盗賊たちは半ばパニック状態となって襲い掛かってきたが、玲央はその全てをあっさりと倒してしまった。


「誘拐された子はこの奥かな?」

「そうだと思われます」


 玲央たちが奥へと進むと鉄格子が現れた。中には攫われてきたであろう少女たちの姿がある。


「大丈夫ですか? 助けに来ました!」

「え?」

「サルデリア王国第一騎士団の救出部隊です。勇者レオ様の指揮の下、皆さんの救出に来ました」

「え? え? 勇者様? 騎士団?」


 少女たちは信じられないといった表情で玲央たちを見つめていたのだった。


◆◇◆


 盗賊たちは蹂躙され、誘拐された少女たちは救出された。


 だが、盗賊のアジトだった場所にはおびただしい数の遺体が転がっていた。盗賊団の総勢はおよそ五十名で、その約八割が遺体となって転がっているのだ。


「何も、ここまでやらなくてもよかったんじゃないかな?」

「んだと? 玲央。お前、勇者とか言われてチョーシこいてんじゃねぇぞ?」

「そんなことは!」

「だいたい、こいつらは悪人なんだ。殺していいって王様が言ってんだから、殺していいんだよ!」

「でも! きちんと警察に!」

「あ? そのケーサツが俺らだろうが。俺らは正義。盗賊を殺すのも正義。お前、何回も教わっただろうが」

「……」


 翔に反論された玲央はうまく返えせずに押し黙ってしまう。


「さーて。帰ったらご褒美に奴隷市場で美人を買ってもらうかな」

「っ!」


 玲央は翔を睨むが、翔はどこ吹く風だ。


「ん? なんだ? 羨ましいのか? なら一緒に行くか? 奴隷市場。運がいいとエルフの奴隷とか買えるらしいぜ? なあ? 玲央も興味あるんだろ?」

「……いらない」

「はっ。無理しやがって。童貞かよ」


 翔はそう言って地面に唾を吐いた。


「あーあ。さっさと王都に帰ってちゃんとしたベッドでヤリてぇなぁ」


 翔の欲望丸だしな声が焼け落ちた盗賊のアジトの広い空の下で響くのだった。


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 お読みいただきありがとうございます。勇者様サイドのお話が挟まったので、本日はあと二回の更新を目指そうと思います。


 ですが、執筆しながらの投稿となりますので正確な時間はお約束できません。


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