第50話 遊園地で遊ぶ。−10

 大きい蜘蛛の尻から武藤が両腕を伸ばして俺を驚かした。先まで隣にいたはずだったんじゃ…


「…」

「驚きました?」

「ふふふ。」


 武藤の後ろには蜘蛛の服より小さい体をしている女の子が一緒に立っていた。


「加藤さんが携帯を見ている時にこちらの方に頼みました!」

「よっ!さっきにさ!バイトの友達がすごく怖がりの男の子がいるって言ったからさ!見にきたらこの子に話を聞いて、やってみた〜」

「ふふふ…実はこの顔を写真で残しました!」

「このお化け屋敷のドッキリイベントだよ!」


 この人たちテンション高いよな、びびってたのは俺一人だけってこと…。てか遊園地でそんなことが頼めるのかよ、そんなことあってもいいのか…

 そのうち武藤がすごい目で俺を見ていた。


「何…ニヤついている…」

「へー震えていますね!なんか可愛い…」

「本当に驚いたから…」

「へへーすみません。」


 安心してついため息が出てしまった、けれどこういうのも思い出だと感じた。笑いながら武藤と話しているお化け屋敷の人は撮った写真を武藤に渡して元の場所に戻った。

 もらった写真をじっと見ている武藤に話をかけた。


「行こう…武藤。」

「はい!」


 いかにもなれ…

 前を見たらまた変なお化けが出るから下を向いて走った。武藤の手首を掴んで走ったあの道の先には光る景色が見えた。

 そう、出口だ。


「わあああああ!!!!!!」


 出口の前について奥から康二の叫び声が響いた。


「康二…俺の分までびっくりしてくれ…」


 変な笑顔で笑っている俺の肩を叩く武藤が屋敷の中から撮れた写真を見せてくれた。びっくりした俺の顔が真正面で撮れていた、蜘蛛の服で自分の姿を俺から隠した武藤がカメラに向いて「V」をしている…これ、まるで武藤の罠にはめられたようじゃないか。

 写真の中に写った俺の顔を見たらもっと恥ずかしくなった。それとすごく幸せそうな顔をしてる武藤のその姿が見られた。


「こんなものはいけない、俺にくれ!」

「へーだめですよ?」

「なんでだ。」

「大切な思い出になるはずですよ?」

「俺には死にたいくらいの黒歴史なんだけど…」


 手を伸ばして武藤が持っている写真を取ろうとしたけど、それを気づいた武藤が自分のスカートに写真を挟んで堂々と言った。


「はいー」

「武藤…卑怯だな。」

「へへー取ってもいいですよ?」

「…やめる。」


 出口でみんなを待ってる時、顔色が変わった康二が出て来た。隣の木上も少し体が固まった感じだな、こいつら慣れていたんじゃなかったのか。


「なんだ…あの、あの蜘蛛は!」

「そうそう…真後ろに来る前まで全然知らなかった…怖かった。」


 女郎蜘蛛のことか、二人の前に立った俺はニヤつきで見ていた。


「なんだよ…」

「怖がりだな。」

「うるさい…春木。」


 その後ろについてくる武藤が写真を出して振っていた。


「ここにも面白いものありま…」


 武藤が写真のことを口に出す前に話を切った。


「あ!急にアイスが食べたくなった!武藤!ついて来て。」

「はい。」


 その笑顔で俺をからかってる…全く先輩と同じだ。


「ふふふ…」


 あ…まぁーどうでもいい、お化け屋敷は二度とごめんだ。広場に出て食べたかったアイスのお店を見つかった時、先の綿飴が俺の目を奪った。


「武藤、綿飴好きか。」

「私?」

「うん。」

「好きですよ。」

「じゃ…買ってあげる。」

「え?いいですよ!」

「いや、なんとなくそんな気がして。」


 お店で俺のアイスとみんなの飲み物を買って、大きな綿飴を武藤の手に握らせた。武藤が綿飴を取って、その顔が見えないほどの大きさであった。


「大きいな…」

「はい、大きいです。」

「うん。戻ろうか?」


 お化け屋敷の前にはちょうどみんなが揃っていて、俺は買ってきた飲み物を渡してそこら辺の椅子で少し休憩をした。

 その中で一番目立つ武藤の綿飴を見て木上が言った。


「大きいね…恵ちゃん。」

「加藤さんに買ってもらいました。」

「へー?」


 確かに俺が買ってあげたけど、ちょっと大きいかもな。


「春木、飲み物ありがとう!」

「ありがとう〜」

「はいー」


 時間はもう午後の5時を超えていた、「そんなに遊んでたのか。」と思ったら「けっこ見回したな。」と納得してしまう。

 確かにお店で人形も買ってあげたり、池でボートに乗ったり、後で観覧車に乗ったり…多分時間がかかりそうなアトラクションばっかりだった。俺にとってこんな時間は悪くなかった、本当に好きだった。もうこの時間が終わったらまた家で引き籠る予定だから、みんなと一緒に過ごした時間だけは心の中に刻んでおこう。

 そして俺はコーヒーを飲みながら携帯をいじる。


 着信メール

『返事は早く!』

『いつまで遊ぶの?』

『ねー返事!』


 先輩からのメールがすごく届いてる、帰ったら叱られるだろ。その先輩の顔を思い出したらそれもそれなりにいいかなと思った。

 

「え…返事、返事。」


『今日はもう終わりです。先輩、今は何をしてますか?』


 さてと、先輩に返事もしたし…みんなのところに帰ろうか。


『ゴロゴロして10時間くらい春木を待っている。』


 返事早っ…てか10時間ってなんだよ、土曜日を無駄にするんじゃないよ先輩。


『はいはい…早めに帰りますー』


 少しは大人になれって打ちたかった。たまには大声を出して驚かせたいとなんとなく思ってしまう。


「今日も精一杯やらかしたぞ!」

「何がだよ〜」


 いよいよ、帰りの時間が来た。

 俺も体が疲れてただ空を見つめるだけ、みんなは今日あったことに対して話をしているらしい。

 隣に座る武藤が大きい綿飴を食い尽くしていた。


「夕、私帰るからー」

「送ってあげる!結奈ちゃん!」


 用事があって先に帰る二宮、俺たち5人は金山駅に向かっていた。並木が並んでいる街を歩きながら俺は遊園地に来る前に抱いていた一つの疑問を夕に聞こうとした。それは単なることだったかもしれないけど俺はそれに気づいてしまった。


「夕、なぜ今日集まる場所を変更した?」

「…気づいたか?」

「それは金山駅で一緒に来た方がもっと効率的だったから昨日そうも言ったじゃないか。」

「うん。でも…先ついた時に金山駅でなんか事件が起きた様子だったから。」

「やばかったのか。」

「あーそう、1年?2年前か…よく覚えてないけど…ある銀行で強盗事件を起こした犯人だったぞ。」


 話を聞いていた木上が自分の両腕を触りながら言った。

 

「それは…やばい…」

「うん、俺が一番早めに来たから遊園地の入り口で会えるようにしたんだ。」


 銀行強盗…それって…

 銀行強盗…どこかで…


「そうだったか、まぁー確かにそれは避けた方がいいかも。分かった。」


 その後、俺たちは別れてそれぞれの家に帰った。

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