第29話 初めて行く先輩の家。−7
「あー気持ちいい…!」
風呂から出た先輩が大声で騒いだ。
「先輩の頭の中覗いて見たいな…」
居間で髪と体を拭いている先輩のために俺たちの寝床を準備した。布団と枕はたんすに入っていると言われてベッドの隣にあるたんすを開けた。
「うん…?なんだこれ…」
先輩が寝る時に俺を抱きしめる理由はこれか…大きい熊人形がなんだか歪んでいる様子で人形の所々が折れていた。
「寝る時にどんだけ力入れてるのかよ…」
出した方がいいかな…先輩、寝る時に必要かも。
ベッドの隣に俺の寝床を作って先輩を待っていた。
「爽やかー!お!布団と熊さん出してくれた!ありがとー!」
「はい。それと映画のことも準備できたし、あとは…」
CDを入れて先輩の方を見たら白いものが目に入ってきた。
「うん?」
「うん??」
「先輩…?」
「うん。」
シャワータオル…だけ着ている。本当この人は恥ずかしいってことを知らないのか…
目をどこに置いたらいいかマジ分からない。
「服を着てくれませんか…」
「シャワータオル似合うでしょ?」
「先輩…エロいですよ。少しは恥ずかしいと自覚してください。」
「なんで?!」
目を逸らした。見てるだけで変な考えが浮かぶ。
「ね、春木。」
後ろでバックハグする先輩が両腕を伸ばして俺の肩に頭を乗せた。先輩のやばい弾力が背中から感じられる。
「はい。」
「これは何?」
人差し指で床に広げた布団を指した。
「自分の寝床なんですけど…?」
「…」
「先輩?」
ムカついた音がして先輩の人差し指が俺の頬を刺した。
「なんですか…」
「フンッ…クソ春木。」
「え…なんで…急に。」
ベッドに指して背中を平手でたたいた。
「あっち!」
「いやです。」
「あっち!!」
「だから、いやですって!」
「あっち!!!」
寝衣を引っ張る先輩は力尽きるまで俺にねだっていた。なんってしつこい人…あの小さいベッドで二人が寝られるわけないだろう。
後ろに体を回して先輩の顔を見た。
「先輩。」
「あ…うん…」
なにを照れてる…?
「わがままは禁止です。」
「え…」
先輩を膝に座らせて説教した。ムカついて俺を睨む先輩の顔が可愛い、年上の人なのに妹みたいに甘えてくる先輩…でもこれじゃ何もできないな。
「後、大人しくしてください!」
「え…」
「えーじゃなくて、はいですよ。」
「はい…」
「本当に?」
「って…私が春木の話を聞くわけないじゃない!この生意気な春木!」
片手で頭を殴る先輩のシャワータオルがやばい、隠された肌が見られそうだった。
「せ、先輩。タオル!タオル!」
「うるさい!このバカ春木!バカバカバカ!」
「タオル!外れますって!」
激しく動いたせいで先輩のタオルが目の前で外れてしまった。タオルの下に何も着てなかったのか…白い肌が姿を現した。
「み、見ないで…」
「だから…注意したのに。」
慌てる先輩がすぐ抱きしめて照れていた。小さくて綺麗先輩の背中…ってこんな考えしてる時じゃない。
落ちたタオルをかけて先輩に言った。
「本当に大人しくない人。寝衣を着てください。」
「チッ、うん。」
「よしよし〜」
「うるさい!」
「ベッドで寝ますから早く着替えてくださいよ。」
今日、一日何をしたのか分からないくらいに時間が早めにたっていた。
ヒキコモリの俺に優しくしてくれる人は先輩以外にいないから気まずいけど強まる先輩のスキンシップにはどんどん慣れる感じだった。
これが人たちが言うイチャイチャするってことかな、もうイチャイチャってレベルじゃないな…
「春木。」
「はい。」
「もう時間は遅いけど映画は行けそう!」
「じゃ映画を見ながら先輩が寝た時にモニターの電源を切ります。」
部屋の電灯を消してベッドを軽くたたく先輩の隣に座った。夜だし電灯も消したら目が悪くなるから居間にあったランプを部屋に持ってきた。
写真は取った方がよかったな…他人の思い出だから居間に写真だけ置いて部屋の扉を閉めた。
ランプをつけて部屋に広がる微かなオレンジ色が心地よい雰囲気を作ってくれた。
映画だけ除けば…
「ね、春木は後ろに来て。」
「俺が前にあったら見えないんですね。はい。」
今、知ったけど先輩はネックレスをしていた。金色のネックレスに大きさ5円くらいの指輪が1つあった。
「先輩は寝る時にネックレスしますか?」
「あ?これ?」
指輪を触りながら答えた。
「多分…昔…もらった気がする。」
「指に填めないですか?」
「子供のごろだから今は入らないよ。」
その時だった。
悪霊が急に現れてその効果音と役者の悲鳴で二人とも驚いてしまった。
「うわー夜になったらもっと怖くなった…」
「そうね…私、横にして見るから春木もそうやって後ろでバックハグしてね!」
「触ってもいいですか…」
「うん。」
先輩を後ろから抱きしめて腹を撫でてあげた。
「はぁ…」
「変な声は出さないでください。」
「だって…春木の手が感じられるもん…」
「はいはい。」
先輩の喘ぎ声に慌てて腹から手を離した俺は先輩の手に重ねて映画を見た。
…なんだ。
…足がなぜ痛くなる、薬はちゃんと飲んだはずだけど。
…口から話が出てこない、痛いと痺れると言わないと…先輩に言わないと…
「忘れたの?」
誰の声…?まさか俺の声なのか。
「忘れたの?」
「なにを!」
「忘れた記憶。」
「だからなんなんだ。君は…」
声だけが聞こえた。
先まではっきり見えた先輩の姿がどんどん霞んで見える。
「何か話してくれ…この声はなんだ。なぜ俺と同じ声なのか…誰だ君は…」
「…」
「だ…れ…だ…」
そして俺は答えない相手に話をかけた後、意識を失った。
「春木…?」
しばらく静かにしている後ろが気になった春日は体を回して春木の様子を見た。
春日を抱きしめたまま、夢を見ているようだった。そんな春木を見つめる春日は彼の体に乗りかかる。
「春木。ね、寝るの…?」
答えられない春木を見て彼が寝ていると確信した春日は一人で呟いた。
「春木…ごめん。毎日わがままで…」
春木の顔に近づく春日。
縮まる二人の距離、彼女は長い髪を後ろに流して唇を見せた。
「ごめん…」
二人の唇が重なる。
春木を抱きしめて唇をつけた彼女は舌で彼の唇をゆっくりなめる、そして少しずつ深いところに舌を入れ込んで彼女は抗えない彼に濃厚なキスをした。
舌と舌が絡み合ってねばねばする液が春木の口に落ちる。
彼の肌を触りながら欲を満す彼女はキスをやめられなかった。
「はぁ…好き…春木、ずっとこのままにいて…」
と言った彼女は再び口をつけた。
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