第4話 高校の部活って。
今日も一日の終わりを告げるチャイムが鳴いた。放課後になった今、教室の空気が一気に変わる。
みんながイキイキしていた。
「部活行こう!」
「へ〜どこに入った?」
「私、園芸部〜」
クラスメイトたちの話を聞いて俺も部活ってことを思い出した。そして教室の扉を開けて部室に行こうとしたらその前に武藤先輩が現れた。
「ハロー!」
扉を閉じた。
「ひど〜い!」
扉の向こうから聞こえる武藤先輩の泣き声でクラスの生徒たちが一斉に俺を見つめる。
「今の生徒会長の声じゃないの?」
ある女の子が言った。
ちっと扉を開けた武藤先輩が教室の中を覗いている。
「先輩、見えてますよ。」
「バレた!」
3年が1年のクラスに来るのは珍しいことだ、どんな学校でも3年がわざわざ1年のクラスに来る理由はあまりいないから…面倒なことになった。
教室の人たちが俺と武藤先輩の関係に興味を持つ雰囲気になってしまう。
こんな雰囲気などは眼中にもない武藤先輩、後ろから人差し指で俺の背中を刺している。
「はい、なんのことですか?」
「今日、部活に行くの?」
「行きますけど…」
「じゃ私も一緒に行く!」
「勘弁してください。」
「ひど〜い!」
このまま話を続けたら変な誤解を受けるかもしれないから早めに教室から出て武藤先輩の背中を押し出した。
「こうやって女子の体にタッチするんだ…春木好き…」
「…」
誰かこの人を連れて行ってください。どこでも構わないのでなるべく遠いところまで飛ばせてください。
階段まで連れて行く道、揺れる武藤先輩の髪の毛からいい香りがした。そして先輩に気を取られた俺は重要なものを忘れてしまった。
「部室ってどこだったか…」
ニヤニヤする武藤先輩が体を回し両手で掴んでいたカバンを後ろにつけて、俺を見つめた。
「し〜らないよ〜?」
「なんですか、その言い方…」
「可愛いでしょ〜?し〜らないよ〜?」
この人は暇なのか、それとも本当に読書部に入ったか…聞いても変な答えが出そうだったから聞くのをやめた。
それはそうだとしても、まだ部室の位置を知らないから探すのも厄介だな…
「加藤さん!」
悩んでいるうちに上の階段から救世主が現れた、武藤恵。
「ごめん、変な人に時間に取られて…部室の場所、忘れた。」
「部室のことですね!部室は4階の相談室なんです!」
「ありがとう、武藤。」
武藤と話をしている間にすごい視線が後ろから感じられた。後ろで俺の袖を掴まっている武藤先輩が拗ねた顔で俺のことを見ていた。
「あの武藤先輩って暇なんですか?」
「暇ではないけど…好きな人を見に来ただけよ?」
隣の武藤が驚いて両手で口を隠した。
そんな目で見るな、姉妹だから分かるだろう。この人は人の感情を持って遊ぶのがうまいってことを…
「もういいです。部室に行くから先輩も自分の勉強をしてください。」
「つまん〜ない〜」
「また、会いましょう先輩。」
「そうしょか!うん!じゃねー」
「ん。」
話が終わって階段を上がる武藤先輩。
先輩の姿が消えた後、俺は武藤について行った。一緒に4階まで上がる時、武藤が気になるように後ろをジロジロと見ていた。
何か話がありそうな表情だけどそれを我慢している空気だ…
「あのさ、武藤。」
「はい?」
「何か話したいことがあるのか?」
動揺している武藤はぐずぐずしながら俺に聞いた。
「あの、加藤さん。お姉さんの方…好きですか?」
「え?」
予想外の質問で一瞬、思考回路が停止した。どんな部分でそう考えたのか逆にこっちから聞きたい。
あーでも入学してからずっと俺をよく見にくるから誤解するのも無理ではないな…姉妹なのに武藤はまだ先輩って人を知らない。
「すみません…」
「いや、謝らなくてもいいけど…そう言われたら何を言えばいいか正直分からないから…」
「そうですか?なんか前から仲良く見えたので…」
「それはそうかも、昔からの知り合いだから。」
「お姉さんのことを知っていたのですか?」
「うん。前、病院に入院した時から今まで連絡している人だ。」
「…」
それから武藤は何も言えなかった。
気に入らない答えをしたのか、武藤は部室に着く前まで静かにしていた。
「はい。こちらが読書部の部室です。」
「お、ありがとー」
扉を開けたら、中は案外に広くてよく片付けられていた。普通の教室から少し小さいけど二人で部活をするには十分な大きさだった。
部室の真ん中には大きな机が置いていてそこから本が読めそうだった。
「いい場所だな…」
「そうですよ。」
静かで何よりだ。
ここならば落ち着くことができる…
「ハロー!!」
わけないか…
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