第2話 始まる、高校生。−2
息を整えて曲がり角から姿を現すこの子は康二の友達、木上さやか。
「さやかかい?」
「久しぶり〜ね〜康二。」
「春木もいるよ。」
「お!春木〜久しぶり!何年ぶりかな!」
さすが康二の友達、生き生きしている…
木上さやかはご両親の仕事で都会の学校に通ったらしい、でもどうして高山高校に入ったか気になるな、都会の方がいいと思ったけど。
性格は昔のまま、明るくて顔もあんまり変わってない。
「小学卒業から初めてだな。」
「うんうん。そう、
木上は言う恵って、先俺とぶつかった女の子の名前らしい。
恵は静かに木上の話を聞いて自分のことを話した。
「私は
「加藤春木です。」
「私、木上さやか!よろしくお願いします。」
「僕は上原康二、よろしく!てかさ硬い敬語はやめとこう。」
雰囲気に巻き込まれて普通に名乗ってしまった。武藤恵…どこかで聞いたことがありそうな名前、でも思い出せないからやめた。
康二の話を聞いた木上が笑う。
「そうね、みんな同じ歳だからね。」
「さやかは何組?」
「私ね、1年A組!隣の恵ちゃんも同じA組だよ。」
「そうか!一緒だったか、僕も春木と同じクラスでね〜」
そして学校のチャイムが鳴いて俺たちは自分のクラスに戻る。
「じゃ後でね〜」
「ん〜」
「私も…」
武藤は俺を見てほほ笑んでから木上と自分のクラスに戻った。武藤の後ろ姿を見ていたらなにかが心に入ってくる気分がした。
…勘違いだ。勘違いに決まっている。
「行こうか、春木。」
「ん。」
クラスに戻って席に着いたらそのうち先生が入った。両手に本をいっぱい持って扉を開けた先生は壇上に本を置いて話した。
「よ!俺は
先生が自己紹介をしているうち、康二が手をあげた。
「そこの君、なんだ。」
「先生、恋人はいますか!」
「知らん!聞くな!」
「すんません!!」
なにを言ってるあいつ。
クラスの生徒は康二の冗談に笑っていた、康二はそのまま座って先生のことを見つめていた。
「もう授業が始まるから、しっかり準備してわかるか!」
「はい!」
. . . . .
午後の放課後、授業が終わったあと俺は一人で教室に残っていた。机の上に置いている入部届を見つめながらどうするか考えていた。
「部活か…」
椅子に座っていても何も浮かべない、静かにできる部活ならなんでもいいから壁に掲げている宣伝ポスターでも見て参考しよ。
それでカバンを持って教室を出た。
1階にある掲示板に向かう時、外から練習をしているサッカー部員が見られた。ふと浮かぶ昔の記憶、こんな性格になる前は俺も活動的な運動をやってきた、中学3年生の時にあった交通事故で俺の生き方が変わってしまったのだ。今の方がもっと楽だし、もう昔のことはいいかも…
運動場から目を逸らして階段を下りる。
「加藤さん!」
階段を下りる俺に誰か話をかけた。
…気のせいか。最近、変な声まで聞こえて大変だな俺。
「加藤さん!」
「ん?」
振り向いたら後ろにいる武藤が俺を呼んでいた。
走って来たのか、息を弾ませる武藤が膝に手をつけて俺の前に立ち止まった。
「大丈夫か?」
「はい!」
「ってなんの用?」
武藤はスカートのポケットから一つに紙を取り出して俺に見せた。
「これは?」
「入部届です。」
「入部届?」
俺が宣伝ポスターを見に行くのをバレたのか、そんなはずはないよな。でもどうして俺にこの紙を渡すのか気になる。
「はい、読書部の入部届です。」
「どうしてこれを俺に?」
「あの…嫌だったら受けなくてもいいんです…」
「別に嫌いとは言ってないけど、なぜ俺なのか気になって聞いたんだ。」
「それは…今日の放課後、読書部に入りましたけど部員がまだ私一人なので探していました。それで上原さんに言われまして…」
「康二…」
今日初めて見た人にも関わらず言うのか、康二のやつ。その時、ポケットに入っている携帯が鳴いた。
確認したら携帯に一つのメールが届いた。
発信者、
「さっそく読書部に入って、うちの恵ちゃんを手伝って上げなさい。」
武藤春日…
「どうしたんですか?」
「あの急にこんなことを聞いて悪いけど、もしかして武藤春日って人を知ってる?」
「はい。私のお姉さんなんです。」
さすが…
じゃどこからこの状況を見ているのか、思い返したら怖くなった。
「あの…」
「入るから、ちょっと待ってくれ。」
武藤からもらった入部届を壁に寄せて記入した。
「はい、これでいいだろう。」
「はい!では確かにいただきました。」
「うん。」
「では、私はこれを先生に提出しますからまた明日です!」
「おおー」
笑顔を見せる武藤はそう言ってからすぐ教務室に向かった。
再びポケットで鳴っている俺の携帯。
発信者、武藤春日。
「うん!お見事!じゃお疲れ〜。」
…この人は確かに、今3年だよな。受験勉強しない…か。
「受験勉強しないか?と思ってるんでしょう?」
うん?どこから聞こえる声だ。
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