この春、君に出会ってよかった。

星野結斗

第1話 始まる、高校生。

 今日は高校生になる日。

 入学式に行っている俺の名前は加藤春木かとうはるき16歳のヒキコモリだ。無駄に時間を過ごしたり、寝たりするのが一番楽しい。

 学校に向かう道。

 いつもの人生、いつもの景色。にぎやかな場所とか人のことが嫌い人なんだ、だからあんまり友達もいない。

 高校はそんなに遠くない場所を選んだ、家にやすやす帰るためのベスト選択である。この高山こうやま高校は都会から少し離れていて後ろにすぐ山があった、俺は山がついていてリラックスできるけど、多分こんな坂道なんか普通の人なら歩きたくないな。


 携帯からベルが鳴いた。


 発信者、上原康二うえはらこうじ

「よっ、春木。入学式ちゃんと行ってるかい?人嫌いの君がいつも心配になってたまらないからさ、新しい高校生活の始まりだろう!一緒に楽しもう!」


「朝から元気いいな…」


 康二は小学と中学まで一緒に通った友達だ。俺よりかいがいしいで、自分の人生を誰よりも楽しんでるそうに生きているやつだ。そうだ、あんまり友達いないと言ったけどもちろんゼロではない。

 ある日の事故。

 そのせいで人にはもう近づかないと思った。それからにぎやかな場所を避けてきて人との出会いは一切なかった。


「よっ、春木。」


 学校の靴箱に立ち止まった時に康二が話をかけた。


「お、康二か。」

「高校っていいよな〜燃え上がるこの青春はとてもいい!今年は絶対恋愛をするぞぉー!」

 

 燃え上がる康二の熱気が感じられる。


「ほどほどにしておけよ、暑いぞ。」

「まぁー春木は青春がないな。」

「かもなー」


 俺たちは高校に来てもクラスは一緒だった、偶然なのか中学の時も3年間一緒だったから高校に来たら絶対離れると思った。康二とクラスまで歩いていると俺の足を見て話した。


「春木、もう足は大丈夫かい?」

「まぁーまぁーだな。普通に歩けるぐらいには治った。」

「そうかい?」

「俺、1年C組か。」

「なんだ、クラスも忘れたのか?」


 笑ってる康二。


「いや、お前と一緒ってことを否定したかった。」

「ひどいな〜」

「行こう。」


 席は先生からの決まりで黒板にクラスメイトの名前が書いていた。8時、授業が始まる10分前、俺は席について窓の外を眺めた。

 やはり外の景色が見える窓側の席はいいな、落ち着く。


「入学式がそろそろ始まるぞ、春木。」


 カバンを置いてから俺の前に来た。


「そうな。」

「時間けっこあるし、水でも飲みに行こう春木。」

「分かった。」


 教室から出て浄水器まで行く廊下で生徒たちの騒めきが聞こえた。やはりこの騒めきには慣れない、耳を閉じた俺は遠いところを見つめながら歩いた。


「春木、春木!」


 なに…

 ぼーっとして前を見なかった、気づいた時には俺とある女の子が廊下に倒れたていた。曲がり角から人が出ることを全然意識してなかった。


「あ、すみません。」


 倒れている女の子に手を出して起こした。


「こっちも、すみません。」

「大丈夫ですか…」


 康二が俺のところに来た。


「まぁーそんなに呼んだけどさ、聞こえなかった?もしかして足に気を取られたか。」

「すまん。」

「私、大丈夫ですから…」


 女の子は俺の顔を見て笑ってくれた。キラキラしている茶色の目と黒いロングヘアをしているこの子に可愛い印象を受けた。

 しばらく3人で話しているこの場にもう1人が階段を上がって来た。


「あ!上原!」


 壁に隠れて姿は見えなかったけど女子の声だった。

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