第53話 西条御子
「き、君が当主!?」
流石の間宮も声が上ずっていた。
「そうじゃ。うちが西条家の現当主。名は御子という。以後よろしゅう。」
と目の前のエキセントリックな恰好をしたギャルが言っている。
「え、だって私とそんなに年が変わらない様に見えるよ?本当に?」
「そう言われてものう。事実を言うてるだけじゃが。」
言われてみれば、少年も「御子ちゃん」と呼んでいた。
若い女性の可能性もあったのだが、名家の当主と言うことで勝手に年配だと思い込んでいただけだ。
それにしても、この不思議な生物が当主?
到底信じられなかった。
そんな失礼なことを拓哉は考えていた。
「む?あんた何か失礼なことを考えていないか?」
ギャルが拓哉を指さしながら言った。
拓哉はドキッとしたが、指さすのも失礼だろとか考える余裕はあった。
「まぁよい。話したいんじゃろ?入ってかまわんぞ。」
そう言うとギャルは何かリモコンで大きな門を開いた。
少なくともこの家の人間なのは間違いない様だ。
そのギャルに案内され、一行はひたすら広く手入れの行き届いている庭を連れ立って歩いた。
屋敷に入ると使用人らしき人物が「おかえりなさいませ、御子様」と出迎えた。
どうやら本当にこの珍妙な人物が当主の『西条御子』らしい。
「客人じゃ。客間に通せ。」
と御子が言うと、三人は使用人に案内された。
客間も広く綺麗な和室だった。
通された直後、三人に冷たい飲み物と洋菓子が出てきた。
正真正銘の金持ちらしい。いや、家で十分にわかるけども。
拓哉も光もこの様な場所に入った機会が無く、そわそわしていた。
しばらくして着替えた御子が入ってきた。
先ほどまでの不思議な巫女服と違い、今度はどこからどう見てもギャルな恰好になっており、三人の対面にあぐらをかいて座った。
三人は一通りの自己紹介と、ここにたどり着いた経緯を説明した。
「間宮に吉田に光ね。覚えたで。」
全員呼び捨てとは、さすが当主様だ。
「で、『山田』の話やったっけ?ええで、なんでも答えたる。」
家の雰囲気とは違い、目の前の御子はフランクな感じで話しかけた。
(いや、逆に話しづらいわ!)とか拓哉は考えていた。
「その前に良いかな?」
と間宮が口を開く。
「なんや?」
「失礼ですが、西條さんは・・・お年はいくつなんですか?」
光も拓哉も思っていた疑問を間宮が真っ先に聞いてくれた。
「二十歳やで?なんでじゃ?」
「二十歳ー!私と一緒だー。」
光は何故か喜んでいた。
「おお、タメか!よろたん!」
拓哉は(しゃべり方の安定しないやつだな・・・しかもちょい古いし)とか考えてた。
「二十歳で当主・・・?失礼ですが、どういう経緯で?」
と間宮だけ真面目に質問を繰り返した。
アホなことを考えていた拓哉だったが、間宮の質問で少し察したようだ。
(そうか・・・この若さで当主ってことは御両親が・・・)
だが拓哉と間宮の懸念は一蹴された。
「ん?両親のことを案じておるのか?あいにく存命やで。」
取り越し苦労だったようだ。
というかなんでこっちの考えてることがわかるんだ?
まぁでもこの若さで当主だ。
似たような質問が多いんだろう。
「うちが当主なのは、単純にうちが一番霊能力に長けとったからじゃ。西条家は代々霊能力のある人間が二十歳で当主になるからのう」
「へぇ・・・霊能力で・・・」
と、拓哉は何気なく返事をした。
「ん?霊能力!!?」
拓哉は思わず大声で言い直した。
間宮と光はぽかんとしていたようだ。
「し、失礼・・・霊能力、と言いましたか?」
「言うたぞ。」
「じゃああなたは霊能力者?」
「せやで。」
間宮の問いに御子はあっさりと答えた。
----
「なんでも昔からの由緒正しき霊能力者がいるとかなんとか・・・」
----
確かに来る前の話し合いの際に間宮はそう言っていた。
真偽は不明と言っていたが、本当だったとは。
「霊能力者って、本当に霊能力者?」
拓哉は混乱のあまり意味不明のことを聞いていた。
「なんじゃそれは。そうだと言うとるじゃろ。それより山田のことちゃうんか?うちの事ばっかりやで。」
「あ、そうだよ!御子さんのことも気になるけど、まずはその山田さんのことを聞こうよ!」
光が思い出したかのように話を戻すように促した。
「え、ああ、すまない。個人的には霊能力者の方が興味があるが・・・まずはそっちを聞こうか。」
「で、何が聞きたいんじゃ?残念ながらあいつはもうおらんで。」
「ええ、そうらしいですね。その方記憶喪失と聞きましたが、どういう経緯でこちらに?」
「ふむ・・・謎じゃ。」
「え、謎なの?ここの家にいたんだよね?」
「せやな。でもいつの間にかいた。いや、『現れた』と言った方が正解じゃな。」
「!!」
三人は同時に驚いた。
「現れたってのはどういう状況で!?」
拓哉は必死になって一番に質問した。
少しでも光の役に立ちたいと思ったんだろう。
意味は無いけど。
「そのままじゃ。気ぃ付いたら屋敷の庭に倒れとった。じゃからとりあえず保護した。」
「その直前に眩しい光があったとかは?」
間宮が質問する。
「あー、なんかそんなことも誰かが言うてたような気が・・・うちが見つけたわけじゃないから覚えとらんが。」
これは『当たり』かもしれない。
一行はそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます