第47話 雑談

翌日月曜日。

光は昼間から莉緒とskypoで通話をしている。

所謂女子トークというやつに莉緒から誘われてビデオ通話を行なっていた。


普段拓也や野村、唯志などが会話をする際は専ら文字でのチャットだ。

唯志曰く、オンライン飲みでも無いのに野郎の顔を見ながら会話する必要はないし、拘束時間に腹が立つ…らしい。

拓也たちはまた違った理由だが、いずれにしても光がきてからもチャットメインで使っていた。

だからビデオ通話が出来ることに光は驚いていた。


「え?なにそれ、霊能力者とか超楽しそうじゃん!」

光は先日の件を莉緒に説明していた様だ。

どうやら唯志からは聞いていなかったようで、食い気味に話を聞いている。

「唯志くんから聞いてないの?」

「うん。唯志の家に来たのもさっきだしね。昨日から唯志とはまだ会ってないんだよね。」

唯志の家から唯志のアカウントでskypoをしてきたので、光はてっきり話してるかと思っていた。


「それよりも昨日の話!ひかりんとタク君、間宮さんと行くんだよね?唯志は行かないの!?」

「うん、唯志君なんか用事あるからって。」

「なんだー、残念。唯志好きそうな話題なのになぁ。」

「え、そうなの?なんか唯志君全然信じてなさそうだったけど…」

「まぁ唯志だしね。話題としては好きだけど、信じてはいない…そんな感じだと思う。」

「そうなんだね。それでとりあえずその記憶喪失の人と、村の様子見に来週の日曜日に行くってことになったよ。」

「様子見かー、なるほどねー。それで唯志は断ったのか。」

「どういうこと?」

「多分今回は大した収穫もないだろうし、ぞろぞろ行っても無意味って思ったんでしょ。間宮さんもいるわけだし。それより自分は別で動いた方がいいとか、まぁそんな感じ。」


「まぁなんかありそうなら次からは唯志も動くだろうし、とりあえずそっちはひかりんに任せるよ、私も。」

莉緒のその言葉に光は少しだけ安心した。

それと同時に莉緒は唯志のことを理解してるんだなと感心した。


「それはそれとしてー、ひかりん。」

「え、何?」

「タク君とはどうなのー?うまくいってる?」

莉緒がニヤニヤしながら聞いてくる。

「うまく?普通だよ。いつもお世話になってて助かってます。」

「うーん、そういう意味じゃないんだけど…タク君も前途多難だな…」

莉緒はボソッと呟いた。


そしてしばらくは女子トークが続いていった。


ーー

「あー、そうそう。唯志と遊ぼうと思ってこんなゲーム買ってきたんだー。」

と、莉緒が画面にゲームのパッケージを映している。

「ゲーム?どんなゲーム?」

「うーん、すごろく的な?今人気のやつ。タク君も持ってないかな?持ってたらオンラインで対戦できるし4人で遊ぼうよ!」

そう言われて光は拓也のゲームソフトが並んでいる棚を見た。

「…あ!同じのあるね。」

「お、ラッキー!今度一緒にやろーよ」

「うん、タク君に聞いてみるね。…でも私遊んでばかりで良いのかな?」

「良いでしょ!うちらに出来ることなんて限られてるし。折角過去に来たんだから過去の遊び楽しまなきゃ!」

「…そうなのかな…?唯志君とかに悪くない?ただでさえお世話になってるのに。」

「その唯志が言ってたんだし良いって。ひかりんなるべく遊ばせてやれーって。」

「唯志君が?」

「急に過去に来て、知り合いもいないし不安だろって。」

「え・・・」


莉緒の言葉に光は驚いた。

唯志はただでさえ色々と動いてくれてるのに、その上そういう気遣いまでしてくれていたことに。

そしてその唯志の指示に嫌な顔一つせず対応してくれている莉緒にも。

二人の気遣いに驚き、同時に感謝して涙が出そうになった。


「お?何?感動しちゃった系?気にしなくていいよ~、私も唯志も楽しんでるから。」


その莉緒の言葉に光は救われた。


「本当に、二人にもタク君にもお世話になりっぱなしで・・・」

「良いって良いって。それに唯志もひかりんが可愛いくて素直だから協力してるんだと思うし。」

「可愛いって・・・そんなことないよ!」

「いやいや。唯志ああ見えてシビアだから。ひかりんのこと可愛いから気に入った節はあるね!」

「えっと・・・」

急に妙なカミングアウト(?)をされて、光は顔を真っ赤にして照れていた。


「・・・でも、私本当に運が良いよね。見ず知らずの場所・・・と言うか時代に来て。最初に会ったのがタク君で。」

「あー、確かにねー。」

「うん。運が悪かったらいまだに野宿とかかもしれないもんね・・・」

「いやー、運が悪かったら最悪今頃風俗嬢だよ、マジで。」

「え、それは・・・ヤダな・・・」

「でしょー?偶然とはいえ、タク君に拾われたのは運がいいよね。その上唯志ともすぐ会えたんだし。」

「・・・うん。唯志君いなかったらいまだに何していいかわからなかったと思う。」

「だろうねー。あいつ無駄に頭回るし、行動力あるから。」

「莉緒ちゃんと唯志君にすぐ会えたのは、私本当に運が良かったと思うよ。」

「まぁタイムスリップに巻き込まれるって超絶不運の後だしねー。少しくらいはね。」

そう言って莉緒と光は笑っていた。


「あ、そうだ。話は戻るけど、遊びといえばもうじき夏祭りとか花火大会シーズンになるねー。未来でもそういうのあるの?」

「えっと…多少は。でもあんまりないから行ったことはないよ。」

「えー、もったいない。折角この時代に来たんだし、今度一緒に行こうか!」

「うん!楽しみー。」

「もうちょい先だけどね。唯志に言って、計画立ててもらっとくー。」

また唯志に頼って申し訳ないなと思いつつも、光は純粋に楽しみだった。


そんな話をしていた時、光側の玄関が開く音がした。

「あ、タク君帰ってきたみたい。おかえりなさーい。」

「ただいまー。ってskypoしてるの?相手は・・・莉緒さん?」

「おー、タク君お疲れさまー。・・・じゃあタク君も戻ったことだし、ひかりんはそちらにお返ししまーす。」

そう言うとばいばーいと手を振って莉緒とのビデオ通話が終了した。


「何話してたの?」

「うーん、女の子同士の会話かな。気になる?」

そう言って光はイタズラっぽく微笑んだ。

拓哉はこの笑顔だけで帰ってきた良かったと満足していた。

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